21.千枚通し完成
小一時間ほど【錬金術】で千枚通しを量産し続けていると、ふと思った。
どうして俺は、千枚通しなんて作っているのだろうか……?
かなり今更だが、すごくもっともだと思う。
だってさ、千枚通しって厳密に言えば武器じゃないじゃん。
確かに武器として成立しないこともないし、針というのは暗器として実際に存在する。
だが、それなら初めから暗器として針を作れば良かったのでは?
何故にわざわざ千枚通し……?
…………。
……………………ま、多分その時の気分だろうな。うん。
気にしなくていいだろう。
どうしてもって時は形を作り変えれば良いだけだし、何も問題は無いな。
で、だ。さっそく本題に入るとしよう。
結論から言うと。
――一応、完成した。
つっても、最強かと言われると「う~ん?」って感じだ。
弱くはない、弱くはないんだが……レベルの限界と言うか比較対象のレベルが桁違いと言うか…………。
……いや、実際に見てもらった方が早いか。
と言う訳で、現物がこちら。
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〈ヘルベアの千枚通し+390〉:ヘルベアの骨から作製された千枚通し。
持ち主にスキル【耐火炎Ⅰ】、【火集Ⅰ】、【火
推進Ⅰ】を付与する。
キョーヤ・クロツバキ作。
攻撃力 :5200
耐久度 :2600
特殊効果:攻撃力上昇+208%、刺突強化+260%、貫通強化+273%、
【耐火炎Ⅰ】、【火集Ⅰ】、【火推進Ⅰ】
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見てわかる通り弱くない。
むしろ強い部類にすら入るだろう。
全てにおいて20倍以上上昇してるんだからな。
プラスして持ち手の部分を細くすることで貫通力を上げると同時に新しいスキルが付いたし、【耐火】がⅩになることで上位スキルへの変化とそれに伴う派生スキルも手に入れた。
ついでに言うと【錬金術】でいろいろといじくったおかげでスキル【細工Ⅰ】も手に入った。
SP以外でスキルを入手することができるというのが分かったのはかなりの収穫だろう。
だが、現状これが限界だ。
この千枚通しを作る過程でわかったことだが、【錬金術】で作ることのできるモノのランクはレベルに大きく依存する。
今の俺の【錬金術】のレベルはⅢ。
つまり、俺はランク300台のモノしか作れないのだ。
400台を作るには【錬金術】のレベルをⅣにする必要がある。
とはいえ、これが今の俺に作れる限界であり最高傑作であることには変わらない。
問題はここからだ。
これを作った時、俺は思った。
『性能的にはかなり強いけど、正直比較対象がないと判断しずらいな』、と。
これだけならまだいい。
自分の作ったものがどの程度のモノなのか確かめたくのも当然だ。
ただ、次がいけなかった。
比較対象を選ぶ際、大人しく〈鉄剣〉と比べていれば良かったんだ。
〈処刑人の剣〉と比べたせいで、かなり劣っていると思ってしまった。
……いや、止めよう。
気持ちを切り替えるんだ。
この際詳細は割愛するが、アレは〈処刑人の剣〉がぶっ壊れなだけだ!
この千枚通しは弱くない。弱くないんだ!
「ふぅ……」
息を吐き気持ちを落ち着ける。
「……気分転換に凛と蘭のところにでも行くか」
◆◆◆
改めて”愛の巣”の周りを探索しつつ凛と蘭を探していると、大きな湖がある方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「次は凜ちゃんの番だよ!」
「まかせて! 私すごいの考えたから!」
凜はそう言いながら湖の方を向き、左手を正面にかざした。
凄いのとは何だろうか。
気になった俺は、邪魔しないように少し離れたところから見ていることにした。
「がんばって! ファイトー!」
「うん! 行くよ~! 『氷結弓』!」
凜が『スペル』を口にすると、左手の前に薄水色の魔法陣が出現し、その中から手のひらサイズの氷の塊が出てきた。
それを凜が手に取ると、ただの氷の塊だったモノは一瞬にして姿を変え、まるで芸術作品のように美しい氷の弓へと変化した。
そして、凜がその氷の弓を引き絞ると同時に、一本の氷の矢が形成された。
なるほど、『氷結弓』は矢の自動生成もセットになった魔法だったのか。
確かに魔法で作った弓矢なら矢が無くなる心配はないし、わざわざ別の魔法陣を使う必要もないからいろいろと応用も利きそうだな。
しっかし、驚いたな。
アレって一体、
「からの~『フリージング・アロー』!」
何レベルの魔法なんだ?
一瞬にして氷漬けになった湖を見て、俺はそんな疑問を抱いた。
結構な規模の湖をたったの一撃で氷の大地にしてしまう魔法。
いくら何でも低レベルな【魔法陣】で扱える代物じゃない。
でも凛と蘭のSP量はそれほど多くなかったはず。
一体どうやって……?
「?」
そんなことを考えていると、突然蘭が首を傾げた。
それに気が付いた凜が不思議そうに問いかける。
「どうしたの? 次は蘭ちゃんの番だよ」
「ん~、ちょっと気になることがあって」
そう言いながら、蘭は徐に俺の方を向いた。
あれ、今目が合わなかった?
いやいや、流石にこの距離じゃそれは無いか。
って別に隠れてるわけじゃないんだけどね?
アレだよアレ。
『別に隠れてるわけじゃないけどバレてないならどこまでバレないかやってみよう』的なノリのアレだよ。
アレ、なのだが…………はて、どうして蘭さんはこっちに歩いて来ているのでしょうか?
「…………」
「何してるの? 兄さん」
「………………なぜバレた。見つかるような距離じゃなかっただろ」
「え、だって私に距離なんて関係ないもん。兄さん私の能力が何か忘れたの?」
少し怒ったように頬を膨らませながら俺の顔をのぞく蘭。
そこでようやく蘭の目が真っ赤に染まっていることに気が付いた。
「……”千里眼”か」
「正解! 私の目に見えない場所などないのです!」
お前かくれんぼ最強かよ。
そんなことを思っていると、蘭が「それで」と口を開く。
「兄さんはこんなとこで何してるの? 覗き?」
「…………違うよ?」
「ほんとに?」
「ホントホント。ウソナンテツイテナイヨ?」
「どうして棒読みなの?」
蘭は不思議そうに首を傾げる。
だが、「まぁ、兄さんになら覗かれるのも大歓迎だけどね!」と言うと、すぐにいつもの可愛らしい笑みを浮かべて俺の手を引いた。
「ほら! 兄さんも一緒にやろ? 一人よりみんなでやった方が絶対楽しいよ!」
「あ、おいっ、分かったから引っ張るな!」
魔物や化物、その他妹たちの障害になるような奴らには負ける気がしないが、一生掛かっても凜や蘭には勝てる気がしない。
俺の手を引きながら無邪気に笑う蘭を見て、どうしようもなくそう思った。
そして願わくば、今のこの暮らしが一生続いたらいいな、とも。




