20.【錬金術】
”愛の巣”に帰ってきた俺は、新しく得た魔法の力やまだ試していなかったスキルなんかをいろいろと試すことにした。
「さてと、まずは【錬金術】から始めるかな」
【錬金術】とは、物体の『合成』『分解』『再構築』を主とするスキルだ。
これ一つに三つのスキルが詰まっていると考えると、なかなかお得感がある。
そして何より、俺が密かに楽しみにしていたスキルでもある。
もしかしたら【魔法陣】以上かもしれない。
理由はいろいろとあるが、まぁあえて一つを上げるとすればそれは、『ロマン』があるからだ!
金の錬成、賢者の石、ホムンクルス、まさにロマンの塊!
これに憧れないなどそれはもう男ではない!
と言うことで、さっそく実験だ。
勿論人道を踏み外す様なことはしない。
人造人間。自分好みのキャラを造れるかもしれないという点においてはかなり魅力的だが、流石にそれは人道的にアウトだろう。
金は……ちょっとだけなら、と言う気がしないでもないが、今はまだいい。
賢者の石はそもそもレシピが分からない。
いや、それ以前に実在するのかどうかも不明だ。技術も足りないだろうし……。
つまり、今のところ俺のもとめるロマンは一つも実現できそうにない。
レベル的にも難しいだろう。
だが焦りは禁物だ。
俺の目先の目的はあくまでも化物退治であって賢者レベルの実験をすることじゃない。
それまで時間もあまりないことだし、今回は武器の作成だけに力を注ごう。
「ねぇねぇお兄ちゃん」
「ねぇねぇ兄さん」
さっそく取り掛かろうとすると、ちょうどそのタイミングで凛と蘭が両サイドから声を掛けてきた。
「ん? どうした?」
そう返すと、二人は至って真剣な顔で口を開いた。
「お兄ちゃんってさ」
「兄さんってさ」
「うん?」
「「――猫耳、好きなの?」」
「…………うん? いきなりどうしたのかな……?」
「だって街で見かけた女の子褒めてたもん!」
「すっごく可愛い!って言ってたもん!」
「いやいや、流石にそこまでは言ってない……よな? あれ、言ってたっけ……?」
あらら? だんだん怪しくなってきたぞ?
正直、あの時はどこからどこまでが心の声か覚えてないんだよな~。
でもそれに近い事なら言った気がする……。
「だから猫耳好きなのかなって」
「だから私たちが付けたら喜んでくれるかなって」
「まぁ、好きか嫌いかで言ったら当然好きだが…………ん? 今なんて言った?」
今、自分たちが付けるって聞こえた気がしたんだが、これは俺の気のせいだろうか?
だが、凛と蘭は俺の問いには答えずに、
「お兄ちゃんは猫耳が好き!」
「言質取ったからね!」
と言って走って行ってしまった。
「なんだったんだ? 今の質問……」
我が妹ながら、たまによく分からない行動をする時があるよな~。
そして、そう言う時は大抵変な方向に話が進むんだよな~、はははっ。
…………いや笑えないな。
今更だがここは異世界。
あいつらも言っていた気がするが、ここは日本ではないのだ。
法律も違うし、もしもあいつらが襲ってきたとしても止める人がいない。
正直、本気で迫られたら抵抗できる自信なんてないよ?
俺も兄である前に男だからな。
それに相手が凛と蘭なら俺も――――。
…………うん、やめよう。この思考は危険だ。
これ以上は明らかに越えてははいけない一線を越えてしまう。
理性理性、自制心自制心。
倫理観をしっかりと持っていれば大丈夫!…………なはず……。
「…………………………よし! 何事もないことを願うとしますか!」
俺は投げやり気味にそう言いながら気持ちを切り替えると、すぐに【錬金術】の作業に入った。
今回するのは武器の作成。
材料は昨日倒したヘルベアの素材でいいだろう。
確か使えそうな骨が大量にあったはずだ。
イベントリを開き、適当な長さの骨を数本取り出す。
そして一本の骨を手に取り、【錬金術】を発動した。
まずは物体の『再構築』から始めよう。
基本は魔法と同じで作りたい物のイメージ、完成形を思い描く必要がある。
俺がこの骨を使って作りたい物のイメージは『千枚通し』だ。
ちなみに深い意味はない。ただ何となくだ。
さて、それじゃあ早速イメージしてみようか。
持ち手の部分は太く出来るだけ俺の手にフィットするように、針の部分は先端になるほど細く細くなるように――。
次の瞬間、骨が一瞬にして光の粒と成り霧散したかと思うと、光の粒が再び集まり俺のイメージ通りの形を形成していく。
それから十数秒ほど経った頃、光が消え去りもとの骨と同じ色をした千枚通しが姿を現した。
「――――よし、一先ずは成功、かな」
出来上がった千枚通しを見てそう呟く。
初めにしては良い出来だと思う。
けど、
「戦闘中に使うには時間が掛かり過ぎだな。レベルⅢじゃこんなもんなのかもしれないけど」
まあ、戦闘は基本的に”万物拘束”主体で行く予定だし、【錬金術】で作った武器はサブとして使うとしよう。
次にSPが入った時に【投擲】か何かを獲得すれば使えるはずだ。
千枚通しを眺めながら、ふと思う。
――コレにも特殊効果が付いているのだろうか? と。
「〈鑑定の実〉、取ってくるか」
無限食料庫に入ってることを祈ろう。
◆◆◆
無事に〈鑑定の実〉を入手できた俺は再び庭に戻ってきていた。
しかもこれはただの〈鑑定の実〉ではない。
なんとレア度10(Max)なのだ!
それをイベントリの中にこれでもかと詰め込んできた。
それなりに”愛の巣”のMPを消費したが、俺のMP量も十分異常だからな。
しっかりと補充できた。
ま、余計な話はこのくらいにして、さっそく〈鑑定の実〉使うとするか。
俺は〈鑑定の実〉を一粒イベントリから取り出し、口の中に放り込んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
スキル【鑑定Ⅹ】が付与されました。残り時間10:00
―――――――――――――――――――――――――――――
「よし、では早速」
俺は千枚通しを【鑑定】した。
―――――――――――――――――――――――――――――
〈ヘルベアの千枚通し+15〉:ヘルベアの骨から作製された千枚通し。
持ち主にスキル【耐火Ⅵ】を付与する。
キョーヤ・クロツバキ作。
攻撃力 :200
耐久度 :100
特殊効果:攻撃力上昇+8%、刺突強化+10%、貫通強化+10%、【耐火Ⅵ】
―――――――――――――――――――――――――――――
おお、何かいろいろと増えてるな。
あとちょっと表示形式が変わってる気がする。
【鑑定】のレベルが上がったからか?
ま、それは良いとして、これはなかなかの性能なのではなかろうか?
完全刺突特化なのは少し気になるが、スキルまで付与されるらしいし、他の武器をまだ【鑑定】していないから下手なことは言えないが、悪くは無いと思う。
つーか、このアイテム名の横にある数字って何なんだ?
これも【鑑定】出来るのか? 少し試してみるか。
―――――――――――――――――――――――――――――
+15:武器のランクを示す数字。数字が大きくなればなるほどレアで強力な武器となる。数字の最小値は1、最大値は存在しない。
―――――――――――――――――――――――――――――
やっぱ基準が分かんねぇー。
でも数字の大きさ的に大したことないのでは?とも思える……。
まあいいや。
とりあえずランクが高くなればなるほど強い武器ってことなんだよな?
だったら手っ取り早くランクを上げるとしよう。
ゲームなんかだと強化素材なんかと合成するか、同じ武器の合成で強くなったりするよな。
物は試し、やってみるとするか。
俺は骨の一本を手に取り【錬金術】を発動させ、同じく千枚通しを作り出し、二本の千枚通しに『合成』を掛けた。
二本の千枚通しが光へと変化し、混ざり合った。
「目に見えた変化はない、な。【鑑定】はどうだ?」
―――――――――――――――――――――――――――――
〈ヘルベアの千枚通し+30〉:ヘルベアの骨から作製された千枚通し。
持ち主にスキル【耐火Ⅶ】を付与する。
キョーヤ・クロツバキ作。
攻撃力 :400
耐久度 :200
特殊効果:攻撃力上昇+16%、刺突強化+20%、貫通強化+20%、【耐火Ⅶ】
―――――――――――――――――――――――――――――
ま、まさかの二倍!
これって合成しまくったら最強の千枚通しが出来上がるんじゃないか!?
おお! なんかテンション上がってきた!
【錬金術】にばっか時間をとられるってのもどうかと思うが、これは仕方ないな。うん。
こうなったら全力でやってやる!




