18.魔法習得
「き、今日だけで一生分驚いた気がします……」
女性は驚き疲れたのか、疲弊した表情で頭を押さえながらそう言った。
「なんというか……悪い」
「いえ、これも仕事ですので……お気になさらず」
「そ、そうか」
「はい。……それでは次に進みましょうか」
おっ、ちょっと元に戻ったか?
まだ少し顔色が悪いが、まあ大丈夫だろう。
「それで、次は何なんだ?」
「そうですね、MP量は計り終えましたので、次はさっそく【魔法陣】の説明に――――と言いたい所ですが、この場所で魔法を使うのは少し危険ですので、移動しましょうか」
そうして、連れてこられたのは魔法屋の裏にある広々とした場所。
その一番奥には、案山子のようなものが数体並べてあり、そのどれもに的のようなものが付いている。
例えると、弓道場を思い浮かべてもらえれば、それが一番近いだろう。
「ここは魔法を試し打ちするための場所です。ある程度の修復機能もあるので、多少失敗したとしても大丈夫なんですよ」
つまり、説明が終わったらすぐに試させてくれるということか。
ありがたいな。正直、家に帰るまでが待ち遠しいと思ってたんだ。
「それでは、改めて説明を始めますね」
女性がそう言うと、凛と蘭がパチパチパチと手を鳴らした。
ついでなので俺も鳴らしておく。
「【魔法陣】」
女性が手を開いた状態でそう言うと、掌の先に青色の幾何学的な模様の円が出現した。
大きさは大体直径15cmほど。おおよそ予想通りと言えば予想通りだが……これ意外とワクワクするな!
やっぱり俺も男だし、こういうの見たらテンション上がってしまうのですよ。
それが異世界モノの定番ともいえる魔法陣ならなおさらな。
と、そんなことを思っていると、女性が説明を始めた。
「これは水属性の【魔法陣】です。発動方法はどの属性も共通で、『使いたい属性の魔法陣を頭で意識する』と言いう単純明快なものです。ちなみに、魔法陣を出現させるだけならMPの消費はありません。
次に魔法の使い方ですが、まず、『スペル』と呼ばれる魔法発動のトリガーを決めます。例えば――『アクア・ボール』」
女性がそう口にすると同時、青色の魔法陣が光を発したかと思うと、そこから水が溢れ出し、ソフトボールほどの大きさの水の塊を形成した。
その水球は魔法陣の上でフヨフヨと浮かんでいる。
「これが『スペル』と魔法です」
「「「おお~」」」
初めて目の当たりにした魔法に、俺たちは感嘆の声を上げた。
『スペル』って言うのはつまり『魔法名』か。
で、魔法名を口にすると自動的に発動する、と。そう言うことだろう。
「『スペル』は原則として発動する魔法を言葉で表したものになります。逆に言えば、表してさえいれば『スペル』に制限はありません。極端な話、同じ意味の『水球』というスペルでも発動します」
そう言って、女性は出現させた二つ目の魔法陣の上に水の塊を作り出した。
「魔法陣っていうのは、誰でも複数同時に出せるものなのか?」
「【魔法陣】のレベルによりますね。レベル=同時発動数と思ってもらって構いません。また、魔法陣一つに付き一つの魔法なので、別の魔法を発動したい場合は一度発動中の魔法をキャンセルするか、別の魔法陣を使う必要があります」
つまり最大でも同時に10発分しか出せないってことか。
…………いや、別の属性の魔法陣ならいけるのか?
「なあ、二つの属性の【魔法陣】を同時に発動するっていうのは可能なのか? 火と水を同時に!みたいな感じで」
「可能ですよ。その代わり、MPの消費量は通常よりも増えてしまいますが」
「ほう」
つまり二つの属性を最大レベルまで上げれば、同時に20の魔法陣を使えるということか。
これってレベルが低いうちはいくつかの属性を獲得しておいた方がいいんじゃないか?
MP消費が増えるって言っても、固有能力のパッシブ効果がある限りほぼ無くなることはないだろうし。
でもそうなると『スペル』を決めるのが大変だな。
使う魔法が増えればそれだけ必要な『スペル』数も増えるからな。
とは言え、同じ意味で発動するというのなら、その場で考えてもよさそうだけどな。
「――それで、『スペル』を決めたら俺でも魔法が使えるようになるのか?」
「一応はそうなりますね。ただ、この時に気を付けなければならないのは『起こしたい現象のイメージ』と『【魔法陣】のレベル』です。どれだけ細かくイメージしたとしても、そのイメージに【魔法陣】のレベルが合っていなければ魔法として成立せず、MPが逆流し自分にダメージが入ります。逆に、どんなにレベルが高くてもイメージが十分でなければ魔法として成立せず、魔法陣が暴走、最悪辺り一帯が吹き飛ぶことになります」
「マジかよ……」
ホントに”愛の巣”で試さなくて良かった~っ!
失敗して死ぬのが俺だけならまだいいが、凜と蘭を巻き込んでしまったら目も当てられないからな。
そうなる前に知ることができてホント良かったよ。いやマジで。
俺が心の中で安堵していると、女性が口を開く。
「ここまでで何か質問はありますか?」
「そうだな、もともと知りたかったことは知れたし…………あ、そう言えばMP消費はどうなるんだ?」
「と言いますと?」
「ちょっと気になったんだが、魔法陣を出すだけじゃMPは消費しないんだろ? だったら魔法を発動するためのMPはいつ消費するんだ?と思ってな」
「ああ、そのことですね。MPは『スペル』を口にして魔法を発動するのと同時に自動的に消費されます」
「自動的ってことは自分で込めたりは出来ないのか?」
「ある程度は可能ですが、やはり【魔法陣】のレベルによりますね。レベルが高ければそれだけ込めることができるMP量も増えますから」
「そうか、大体わかったよ。ありがとな」
「いえいえ、お気になさらずに。質問は以上ですか?」
「今のところは、な。凛と蘭は何かあるか?」
俺が凛と蘭にそう聞くと、
「う~ん、特には無いかな?」
「え~と、私も無いと思う」
二人は少し考えた後、首を横に振りながらそう言った。
「そうですか。では早速試してみましょう! 何かわからないことがあれば、その都度聞いてください」
「わかった」
「「は~い」」
ついに魔法が使えるのか!
なんだろう、すごくドキドキするぞ!
ヤバイな。早く試したい!
「えっと、まずは意識するんだったな」
そう呟きながら、俺は頭の中で雷属性の【魔法陣】を意識する。
すると、目の前に青緑色の魔法陣が出現した。
もっと苦戦するかと思ったが、思いのほかスムーズに出たな。
と言うか、これってスキル名唱えなくても発動するんだな。
派生能力は唱えないと発動しなかったし、スキルだけなのか?
一応、今度試してみるか。
そう思いながら、凛と蘭の方を見ると、二人とも成功していた。
それぞれ薄水色と白色だ。一体何の属性なんだ?
「皆さん成功したようですね。それにしても……それは一体何の属性なのですか?」
女性も俺と同じことを思ったようだ。
別に隠してるわけでもないし、言ってもいいか。
今から試すんだからどうせバレるしな。
「俺は雷属性だ」
「私は氷属性!」
「私は光属性!」
「…………」
「? どうしたんだ?」
「いえ、もう驚きません。驚きませんとも……」
「だからどうしたんだよ?」
「……あのですね、【魔法陣】の属性は基本的に火・水・土・風の四属性なんです。確かに他の属性も存在しますが、使える者は滅多に居ません。それこそ数百万人に一人と言う確率なんですよ? それを同時に三人もなんて……しかもそれぞれ別の属性なんて普通ありえませんよ!?」
「そうなのか? ……ま、俺たちはちょっと普通じゃないからな」
もともとこの世界の住人じゃないし、普通とは程遠いだろう。
と言うか、多分だがレインが何かしたんじゃないか? もしくは職業か称号の効果とか。
まあ、悪い事じゃないし気にする必要もないか。
ラッキーくらいに思っておこう。
「どういうことですか?」
俺の言葉を聞いて疑問に思ったのか、女性が首を傾げながら聞いてくる。
「何でもない。――それよりも、さっそく魔法を使ってみていいか?」
「そうですね。どうぞ使ってみてください。ただイメージとレベルをしっかりと考慮したうえで使ってくださいね?」
「おう、分かってる」
「「私たちもやってみるー!」」
元気よく返事をする凛と蘭から視線を外し、自分のことに集中する。
確か、気を付けることはイメージとレベルだったよな。
俺の【魔法陣/雷】のレベルはⅡ。
感覚からして、大したイメージはできない。
となると、イメージする内容も自ずと限られてくるな。
いや、そもそも今回は初めての魔法だ。むしろ小規模低威力の方が都合がいいだろう。
そうだな……分かりやすく単純に、小さな雷を起こそう。
俺は魔法陣を正面に移動させて奥の的に向けた。
そして、それに向かって手を伸ばし『スペル』を呟く。
「『レッサー・ライトニング』」
刹那、バチッという音を響かせ電気が弾け、魔法陣の中から小さな雷が放たれた。
その小さな雷は一直線に的へと飛来し衝突する。
が、破壊するには至らず、表面を黒焦げにする程度に留まった。
お、お~~~っ!! マジでできた!!
バチッて! バチッていったぞ! すげぇカッコイイな!
にしても、結構簡単にできたな。
まだレベルが低いからかもしれないが、今のところイメージは大丈夫なようだ。
「とは言え、思ったよりも威力が低かったな。イメージ的にはもう少し高威力なはずなんだが……」
「いや十分だと思いますけど? アレ【魔法防御Ⅵ】が付与されているんですよ? それに傷をつけるなんて……あなた本当に魔法使うの初めてなんですか?」
「初めてだぞ? ただそれに近いモノを結構見てきたからな。イメージは楽にできた」
「皆さんそこを苦戦するんですけどね……」
女性は呆れたような表情をした。
まあ、アニメとか漫画とか、ゲームもそうだが、元の世界には魔法が登場する作品が数え切れないほど存在するからな。
ちょっとばかし参考にさせてもらった。
何はともあれ、これで『スペル』と魔法は完成したんだ。
ステータスに何か変化はあったかな?
そう思いながら俺はステータスを表示する。
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キョーヤ・クロツバキ
性別:男 種族:人間 職業:転生者
LV:24
HP:325500(1085)/325500(1085)
MP:220800(2145)/643500(2145)
攻撃力:126900(423) 防御力:141300(471)
魔力 :536700(1789) 対魔力:179100(597)
敏捷 :219300(731) 器用 :284400(948)
知力 :153000(510) 幸運 :30000(100)
SP:0
AP:5
魔法:
『レッサー・ライトニング』
スキル:
【魔法陣/雷Ⅱ】【錬金術Ⅲ】【剣術Ⅲ】【鎌術Ⅱ】【体術Ⅲ】
固有能力:
《加虐性欲》
・恐怖
・精神攻撃
・精神ダメージ具象化
・トラウマ確認
・拷問器具作製
《拘束愛好》
・万物拘束
・拘束条件指定
・拘束範囲指定
・拘束器具指定
・拘束器具作製
・リンク
《血液嗜好》
・血液操作
・血液硬質化
《少女性愛》●
《身長差性愛》●
《近親愛》●
・空間歪曲
天恵:
≪性癖能力化≫
称号:
[転生者]
装備:
〈制服〉〈処刑人の剣〉
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おっ、魔法の欄に『レッサー・ライトニング』が追加されてるな。
『スペル』名がそのまま表示されるのか。
ってことは『スペル』決めは慎重にしないとだな。
変な名前つけたらそれがそのまま表示されるってことだからな。
しっかし、慣れねぇな。自分の性癖を見るのって。
これってホントに俺の性癖なのかね~。
やっぱ納得いかねぇわ。
まあ、いいや。
この際だ、もう一つだけ試しておこう。
「『小雷』」
俺は『レッサー・ライトニング』と同じ意味を持つ『スペル』を唱えた。
すると、バチッと音を響かせながら電気が弾け、魔法陣の中から小さな雷が放たれた。
「見た目も威力も全く同じか。ステータスはどうだ?」
そう思いながらステータスを表示すると、
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魔法:
『小雷』
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魔法欄にそう表示されていた。
同じ意味の『スペル』も合わせて表示されるんだな。
3つ目以降はどうなるのかとか、他にもいろいろと気になることはあるが、とりあえずここまでにしておくとしよう。




