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17.《近親相姦》のパッシブ効果がチート過ぎる

「次はついに魔法屋だな」


 俺がそう言うと、凛と蘭は嬉しそうに頷いた。


「魔法か~」

「楽しみだね~」


 どうやら凛と蘭も俺が武器屋の親父と話している間に【魔法陣】を獲得したらしいのだ。

 まだどの属性を選んだのかは知らないが、それは後のお楽しみとしてとっておこうと思う。


 ただ、な~……


「もう金は手に入ったから化物退治に無理して参加する必要はないんだよな~。今なら冒険者にだってなれるし」


 別に冒険者じゃなくてもいい。

 【錬金術Ⅲ】があるから錬金ギルドに入って錬金術師になるって手もあるし、”拷問器具作製”や”拘束器具作製”、”愛の巣”の無限食糧庫を使えば鍛冶ギルドや商業ギルドにだって入れるだろう。

 夢が広がるな。


「確かに。わざわざ危険を冒す必要はないかも」

「だよね。安全第一でスローライフを送るって生き方もアリだと思うよ」

「私はお兄ちゃんと蘭ちゃんさえ居てくれたらそれでいいし!」

「私もー! ずっと一緒に居たいよね!」

「そうだな~」


 確かに、俺にとっては凛と蘭の安全が一番だ。

 わざわざ危険を冒してまで金を手に入れる必要はない。

 必要最低限の額ならギルドに所属して稼げるだろうし、”愛の巣”と無限食糧庫が有る限り『食』と『住』には困らない。

 だったら、確かに蘭が言った生き方も有りだな。


 にしても、さっきから滅茶苦茶見られるんだが……。

 黒髪黒目が珍しいのか? 

 他は別に変わったことはないと思うんだが。

 ……いや、まだ気のせいと言う可能性もあるし、考えすぎは良くないな。

 それに、考えなくちゃいけないのはこっちでの生活の方だし。


「ま、それは帰ってから考えよう。とりあえず今は魔法だ。……ほら、見えてきたぞ。多分あれが魔法屋だ」


 そう言って、俺は杖とローブのようなものが描かれた看板を指差した。

 

 なんて書いてあるのかは分からないが、恐らくAさんBさんが言ってた店であっているだろう。


「とりあえず入ってみようか」

「「さんせー!」」


 凛と蘭の元気のいい返事を聞きつつ、俺は店の扉を開いた。


 中は結構綺麗だった。

 杖や本、水晶玉と言った魔法関連の道具が壁や棚に並べられていた。

 少し薄暗いが、それも気にならないレベルだ。何も問題ない。


 そんなことを考えていると、奥のカウンターに本を読んでいる女性が座っていることに気が付いた。

 同じく向こうもこちらに気が付いたようで、顔を上げてこちらを向いた。


「いらっしゃいませ。何かお探しです、か!?」

「「「?」」」


 女性がいきなり驚くような反応をしたので、俺たちは意味が分からず首を傾げる。


「どうかしたのか?」

「えっ? い、いえ、その~、お客様の服が大変、個性的だったもので」

「服?」


 俺は自分の着ている服に視線を落とす。

 制服だ。俺の世界では特に珍しくもなんともない制服だ。

 だが、確かにこの世界の人々にとっては珍しいものかもしれないな。

 あとで服も買っておくか。


「「あ」」

「? どうした――――」


 俺は凛と蘭の声に振り向き、そして唖然とした。


「なんでお前ら〈拘束衣〉着てんだよ……?」

「「わかんない。着替え忘れちゃった?」」

「なんで疑問形なんだよ……」


 なるほど、明らかに()()()()()()()に使うような服を着た女の子を二人も連れてたからこんな反応だったのか。

 そりゃあ視線も集めるわ!

 そしてここまで気が付かなかった自分が恥ずかしい……っ! 家を出る前に気付けよ俺……っ!


「あ、あの~、着替えるスペースをお借りしても……?」

「ど、どうぞ? 奥の個室をお使いください……」

「ありがとう。ほら! 早く着替えてきなさい!」

「はーい!」

「りょーかい!」


 そう言って、凛と蘭は小走りに奥へ消えていった。

 恐らく着替えはイベントリに入っているだろう。

 入ってなかったらいろいろと終るな。

 ……いや、もう手遅れか。


「なんか、すみません……」

「い、いえ。お気になさらずに……」

「さっき武器屋に行ったときは何も言われなかったもので……」

「あ~、あそこの店主はそういうのに疎いですからね……」

「そ、そうでしたか」

「はい」


 そして沈黙が訪れる。

 き、気まず過ぎる! 早く帰ってきてくれ、凛! 蘭!


  ◆◆◆


「ゴホン。それでは改めて、いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


 凛と蘭が返ってくると、魔法屋の女性は仕切り直すようにそう言った。

 

 もう気にしていない、と言うか気にしないことにしたようだ。

 ありがたいな。そう言うことなら、俺も切り替えていくとしよう。


「いや、悪いけど今回は買い物じゃないんだ」

「と、言いますと?」

「魔法のことについて教えてほしいんだ。使い方とかそれに伴うリスクとか。その辺りのことが分からなくてな……頼めないか?」

「全然大丈夫ですよ! 魔法の授業と言うことですね。料金が掛かりますがよろしいでしょうか?」

「一人当たりどのくらいなんだ?」

「一からの説明ですと一人銀貨三枚となります」


 大体3万円か。

 少し高い気がするが、まあ、これからのことを考えると仕方ないか。

 それに、俺も魔法は使ってみたいからな。


「わかった。それじゃあ三人分で銀貨九枚……っと八枚しかないな。わるい、金貨一枚で頼む」


 そう言いながら俺は武器屋の親父から受け取った袋の中から金貨を一枚取り出し、女性に手渡した。


「はい、金貨一枚ですね。お釣りの銀貨一枚です」

「ありがとう」


 受け取った銀貨を袋にしまい、その袋を腰に下げる振りをしてイベントリに収納した。

 お金って意外と重いし嵩張るから持ち歩くのって大変なんだよな。あとジャラジャラうるさいし。

 その点イベントリに収納しておけば何も問題はない。便利すぎるな。


「それでは、さっそく授業を開始します。よろしいですか?」

「ああ、よろしく頼む」

「「よろしくお願いします、お姉さん!」」

「はい! 最初に確認なんですけど、すでに【魔法陣】はお持ちですか?」

「一応は」

「了解です。じゃあまずはMP量を計らせていただけますか? MPが少ないとあまり大きな魔法は使えないので」

「いいけど、自己申告じゃダメなのか?」

「以前MP量を偽って授業を受けに来た人が居たんですけど、大きな魔法を使った影響で意識不明の重体で教会に運ばれるという事件がありまして……。MPの使いすぎは最悪命に関わることなのです。そういう事件を避けるために、注意喚起ができるようMPを計るという決まりなのです」

「なるほど、命に関わるのか……」


 俺はそう呟き、静かに目を閉じた。


「ふぅ……」


 あっぶねぇぇぇぇえッッ!! マジであぶねぇなおいッ!

 何か!? ってことはつまりあの時に調子に乗って使ってたら最悪死んでたってこと!? 嘘だろ!?

 よかった――――!! 魔法屋に来てホント良かった! ナイス俺! 欲に負けなかった俺凄い!


「? どうかしました?」

「……いや、続けてくれ」

「わかりました。それではこっちに来てもらえますか?」


 頷き、女性に連れられ店のカウンターの奥に移動する。


「店の番はいいのか?」

「はい。誰かが入店したら音で知らせてくれるという便利機能がありますから」

「つまり呼び鈴みたいなものか」

「そんな感じですかね。――で、こちらの道具を使って計らせていただきます」


 そう言って女性が取り出したのは赤黒い水晶玉だ。大きさは大体バスケットボールか、それよりも少し大きいくらいだ。

 

 と言うか、ものすごい見覚えがある。

 これってもしかして――


「魔晶石?」

「はい、その通りです。こちらはグラトニースライムと呼ばれる魔物の魔晶石で、膨大な量のMPを内包することのできる【悪食】の特性を持っているのです。そして、込められたMP量によって光を発します。小さいほうから、緑、黄、青、赤、銅、銀、金、白、黒という順番ですね。その特性を使い大まかなMP量を知る、と言う訳です」

「へぇ~魔晶石にそんな使い方があったのか。――ちょっと聞きたいんだが、他の魔晶石にもそれぞれ特性があったりするのか?」

「ありますよ。スライム系統は大体『MP貯蔵』系の特性ですね。他にもいろいろとありますよ。もしかして何か魔晶石をお持ちなのですか?」

「ああ、ヘルベアっていう魔物の魔晶石なんだが」

「ヘルベアですか~。ご自身で討伐を?」

「ああ、一応はそうなるな」

「お客さんお強いんですね。確かあの魔物って結構強くなかったですか?」

「そ、そうですね~」


 やっぱりあの魔物って強かったのか!

 まともに戦わなかったからその辺りはわからないんだよな~。


「どんな特性かわかるのか?」

「確かヘルベアは……そう、【魔炎装】です」

「【魔炎装】? どんな特性なんだ?」

「確か黒炎を鎧の様に身体や武器に纏う、という特性だったと思います。魔晶石にMPを注ぎ【魔炎装】と唱えると発動するはずです。近接戦が得意な戦闘職の人が好んで使う特性ですね。といっても、ヘルベア自体がとても強力な魔物なので、所持しているのは相当な実力者だけですけど」

「ほう」


 この魔晶石なかなか高価なものらしい。

 ごめんねそんな魔物をあっさり殺しちゃって。

 自分でもそんなに強いとは思ってなかったんだよ。

 でも強い魔物をあんなにあっさりと殺せたんだ。

 これは結構な自信になるぞ。

 

「少し話がズレてしまいましたね。気を取り直してMP量を計りましょうか。この魔晶石に触れてMPを込めてください」

「わかった。――参考までに聞きたいんだが、一番MP量が多い奴でどの程度まで行くんだ?」

「一番、ですか? そうですね、確か帝国最強の魔導師が白まで行ったらしいですね。ちなみに白まで行くには20万MP、黒まで行くには40万MPが必要です」

「20万に40万か……」


 うん、超えてるな。それも黒を。

 固有能力のパッシブ効果ありなら余裕で越えている。

 これ問題にならないか?

 念のため言っておくか。


「先に言っておくが、今から見ることは他言無用な」

「? はい、お客様のMP量を誰かに喋るなことはしませんよ」

「オーケー。それじゃあ、やるか」


 そう言って、魔晶石に掌を当てる。


「頑張ってね!」

「応援してるから!」

「おう」


 凛と蘭に返事をし、俺は勢いよくMPを流し込んだ。

 

 瞬間、魔晶石から漆黒の光が溢れた。


「嘘でしょ!?」


 女性が驚きの声を上げる。


「さっすがお兄ちゃん!」

「兄さんカッコイイ!」

「おう、ありがとな」


 俺はMPを注ぐのを止め、女性の方を見る。

 いまだに黒い光が溢れる魔晶石をまじまじと見つめながら、「嘘? ありえない。でも、いや、でも、実際に目の前で起きたわけだし……え? 嘘?」と無限ループに突入している。

 少しやり過ぎたか? ……ま、別にいいか。


 それよりも、身体が怠いな。

 一気にMPを半分以上消費したせいか?

 でも半分でこれだけ怠いということは全部使ったら…………考えたくないな。それこそ死ぬんじゃないか? 実際に死んだやつもいるだろう。

 だが、この辺りは慣れな気がするな。

 ある程度は、だが。


 さて、そろそろ戻ってきてもらおう。


「おい? 大丈夫か?」

「ハッ! すみません! 黒なんて前例がないもので……少し、いやもの凄く驚いてしまって。でもこれだけのMPがあるのでしたらヘルベアなんて敵になりませんね」

「そうだな。まあ、そんなことは置いておいてだな。凛と蘭の分を頼めるか?」

「はい! 分かりました! もしかして妹さんたちもこんな異常なMPなんですか?」

「いや、俺が異常なだけだ」

「そ、そうなんですか。少し安心したような、残念なような」


 と言っても、それでも1万くらいはあるし、俺が拘束具を渡すだけで相当上がるだろうが。


「それじゃあ私から行くね!」


 魔晶石の光が収まった頃、凛がそう言って手を挙げた。


「おう、頑張れよ」

「頑張ってね、凜ちゃん!」

「うん!――」


 元気よく返事をした凜は、何故か魔晶石の方には行かず俺の方に小走りに近づいてきた。


 そして――――――ヒシッと俺に抱き着いた。


「――頑張るね!」

「お、おう」


 それからたっぷりと数十秒間抱き着いたあと、凜はいきなりのことに驚く俺を余所に、魔晶石のところまで走っていき、手を付いた。


「えいっ」


 そんな可愛らしい掛け声とともに、()()()()が魔晶石から溢れ出した。


「「嘘だろ(でしょ)!?」」


 今回は俺も驚いた。


「十分異常じゃないですか!」

「いや俺も知らなかったんだよ!」


 だって凜の今のMPじゃ20万を超えるなんてできないはずだ。

 それなのに色は白? どういうことだ?

 あり得るとしたら固有能力のパッシブ効果か。

 だが今は拘束具の類は付けていないし。と言うことは他の固有能力か?

 だが何が…………まさか――――


「《近親相姦インセスト》かっ!?」

「あったり~! 大正解!」


 そう言って凜は両手を広げた。


「でもちょっと待て。《近親相姦》一つでそんな何百倍もステータスが増加するなんてあり得るのか!?」

「うん! 《近親相姦》は接触時間によって倍率が変わるの。さっきたくさん抱き着いたおかげだね!」

「あれってそういう意味だったのか!?」

「もちろん私がただ抱き着きたかったっていうのもあるよ?」

「いや、そう言うことを聞いてるんじゃなくて……」


 なんだそのチートは!?

 接触時間で変わるって……つまり触れ合えば触れ合うだけ強くなるってことか!?

 [禁忌を犯せし者]が帳消しになるくらいチートじゃねえか!

 なんで俺の《近親愛》にはその効果がないんだよ!


 って、俺がヤったと認識してないからか。

 だが、認識したらしたで[禁忌を犯せし者]の称号が付くよな。

 う~む、チートは欲しいがその称号はいらない。

 大を得るために小を捨てるか?

 ……いや、俺の貞操は小じゃないな。もう少し覚悟を決めるための時間が必要だな。


 それから、凛と同じ方法で蘭のMP量も図り終えた。もちろん白色だ。

 店員が驚き疲れて倒れかけていたが、まあ多分大丈夫なはずだ。



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