11.魔物との邂逅
少し早いですが書き終わったので投稿します!
俺と凛のMPが全快した。
時間にして1時間ほどだろうか。
どうやら、この”愛の巣”には魔力の回復を促す効果があるらしい。
とはいえ、本来どの程度のペースで魔力が回復するかはわからないので、今のところ何とも言えない。
だが、おそらく普通よりも速いペースで回復している。
じゃないとこんな短時間でほとんど失くなっていたMPが全快するなんてことはありえないだろう。
それも、今のところ断言できるほどの情報はないが……。
ともあれ、これでレベル上げに行ける。
だが、一つ気になることがある。
確かに俺は無限食料庫一択だといった。
寝床があっても食料がなければ死んでしまうからな。当然だ。
でも考えてみたらこれって凛の能力なんだよな。
それを俺が勝手に決めていいのだろうか?
俺は、森へと向かいながら凛に聞いた。
「なあ、自分で言っておいてなんだが……本当に無限食料庫でいいのか? これはお前の能力なんだから、自分で決めてもいいんだぞ?」
「別にいんじゃない? どのみち食べ物はどうにかしなきゃなんだし」
「それはそうなんだが……」
「それに、これは私たちの”愛の巣”なんだよ? 誰の能力かなんて関係ないよ。三人の共有財産なんだから」
「それには納得しかねるな」
「え~」
凛が不服そうな顔をする。
大体、名前が”愛の巣”だからって別に結婚するわけじゃないんだから。本当にここが三人の愛の巣になるわけじゃないだろ。
「とりあえず、レベル上げるか。話はそれからだ」
「だねー」
「私たち勝てるかなー?」
「それを確かめるっていうのも含めて行くんだろ? でも多分大丈夫だと思うぞ。こっちには蘭の”千里眼”だってあるんだし。それに俺の能力を組み合わせれば安全な場所からの攻撃だってできるはずだ」
「大体、普通の魔物も倒せないんじゃ化物退治なんてできないもんね」
「そうだね。ダメそうなら逃げるだけだし、やるだけやてみよ。――――と、魔物みっけ!」
ちょうど森の手前まで着いたタイミングで、蘭がそう言った。
どうやら、”千里眼”で魔物を発見したらしい。
「おっ、幸先いいな。どんな魔物なんだ?」
「ん~なんだろこれ。……おっきい熊?」
「くま? それ普通の野生動物じゃないのか?」
「それは無いと思うよ。魔物探ししてる途中に鹿なんかも見つけたけど、この熊とは明らかに違ったし」
鹿ってお前。それ食べられるんじゃないか?
捌けるかどうかは謎だけど。あと食べれるかも謎だけど。
まあ、それはいいや。
それよりも、
「実際のところ、どう違うんだ?」
「え~とね。こう、キラキラ?したものが体の中心に見えるの」
「キラキラ……」
「そうキラキラ」
「……実際に見たほうが早いな。それで数は?」
「それもそうだね。……一匹だよ! あと、その周囲700メートル以内には他の魔物もいないよ!」
「よし。それじゃ……っと、その前に”拷問器具作製”」
俺は《加虐性欲》から派生した能力、”拷問器具作製”を発動した。
瞬間、俺の目の前に光が収束し、三本の剣を形成した。
その内の一本を自分で持ち、残りの二本を凛と蘭にそれぞれ手渡す。
凛と欄もステータスが上昇してるからちゃんと扱えるはずだ。
すると、凛と蘭は頭上に”?”を浮かべつつ首をかしげた。
「なにこれ? 剣?」
「ああ、これは〈処刑人の剣〉っていう剣だ」
「なんだか物騒な名前だね……」
「そりゃあ拷問器具として作った剣だからな」
「あ、そっか」
「これで戦うの?」
「いや、これはあくまでも護身用。念には念をってやつだな。備えあれば憂いなしとも言うし、用心しておくに越したことはないだろ」
そう言いながら、俺は自分の〈処刑人の剣〉を鞘から抜いた。
長さはおよそ1メートルほど。
特徴としては、切っ先がないところか。
これは確か、文字通り処刑人が使っていた処刑専用の剣なので、突く機能が必要ないから……だったと思う。
これが拷問器具かどうかは微妙なところだが、こうして作れてしまったのだから一応は拷問器具ということなのだろう。
もしくは、俺が『これは拷問に使える』、と思ったからか?
おそらくはこれが正解だな。そんな気がする。
つまり、ちゃんとした拷問器具以外も作れるってことか。
だとすると色々とできることが増えるな。
”愛の巣”に帰ったら実験してみるか。
「ともあれ、今はレベル上げに集中だ。道案内頼むな、蘭」
「よろしくね蘭ちゃん」
「了解でーす!」
そう言って、俺たちは森の中へと足を踏み入れた。
◆◆◆
「熊だな。キラキラはしてないけど」
俺たちは、魔物を目視できるギリギリのところまで近づいた。
そして、相手となる魔物を見てそう呟いた。
見た目は完全に熊。
体長は大体三メートルくらい。
ただ、全然キラキラしてない。
むしろ真っ黒だ。
「キラキラ、してないね」
「あれ? ”千里眼”では確かにキラキラしてるのに……」
「”千里眼”で見たときだけってことは、それって”千里眼”の効果なんじゃないのか?」
「あ、そうかも。という事は、私しか魔物かどうか判断できないってこと?」
「さぁな。もしかしたら他になにか見分ける方法があるのかもしれないが……。まあ、今のところはそれしか方法はなさそうだな」
ホント”千里眼”って便利だな。
と言うか、それがなかったらレベル上げの時点で躓いてたんじゃないか?
そんなことを考えていると、凛が首をかしげながら聞いてきた。
「お兄ちゃん。アレ、どうやって倒すの? すっごく強そうだよ?」
「見た感じ、行けそうな気はするんだよな」
やってみないことには何とも言えないが、十中八九いけるだろ。
「頑張って!」
「応援してるから!」
「そうだな。俺だけ役に立ってないし、ここら辺で兄としての威厳を保たないとな」
俺はそう言いながら、深呼吸をした。
深く息を吐き、気持ちを整える。
そして、熊の魔物を目視しながら、静かにゆっくりと呟いた。
「――”万物、拘束”」
刹那、熊の魔物の周囲の空間に無数の穴が開く。
その無数の穴全てから、まるで吐き出されるように鎖が超高速で飛び出すと、瞬時に熊の魔物へと飛来した。
「グォッ!?」
熊の魔物が驚いたような声を上げるが、もう遅い。
穴から飛び出した鎖は一瞬のうちに熊の魔物を縛り上げ拘束。空中に磔にした。
熊の魔物はどうにか抜け出そうと体を動かしている。
が、俺が拘束を強くすると、身動き一つ取れなくなったのかピクリとも動かなくなってしまった。
別に死んだわけではないだろうが、もうどうすることもできないだろう。
あの熊の魔物の生殺与奪の権利は完全に俺の手の中だ。
「死んだの?」
「いや、死んではいない。けどまあ、同じようなもんか。どうせ動けないんだし」
「どうやって止めを刺すの?」
「殺さないと経験値入んないよ?」
「わかってる。大丈夫だよ。この距離でも十分殺れる」
俺はそう言いながら、熊の魔物に巻き付いている鎖のうち、首に巻き付いている鎖を操作した。
《拘束愛好》から派生した能力、”万物拘束”はただ拘束するだけの能力じゃない。
今みたいに単純に拘束だけを命じて実行することもできるが、それはこの能力の力のほんの一部でしかない。
他にも、拘束に使えるものならばすべてを俺の思いのままに操ることができる、というものもある。
今回はそれを使う。
俺は首に巻き付いている鎖を操作して、全力で締め上げた。
グキッという嫌な音が辺に響き渡る。
それから数秒後、死体が光り輝くエフェクトとなり消え去った。
同時に、なにやらアイテムのようなものが地面に落下する。
なんというか、ゲームチックだな。
だが、それでも俺は紛れもなく一つの命を奪ったのだ。
俺が殺した。
自分の力で、殺した。
だが、不思議と俺の心には罪悪感なんてものは無かった。
心の中にあるのはただ一つ。
『ああ、もう終わりか』という、ある種の喪失感だけだった。
日本にいた時には考えられないような思考。
これも《加虐性欲》のせいだろうか。
それとも、元から俺はこんな感じだったのだろうか。
それもこれも、今となってはどうでもいい。
――俺はちゃんと魔物を殺せる。それさえ分かれば十分だ。
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レベルが上がりました。LV:1→LV:24
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お? レベルが上がった?
……って、当然か。
魔物倒したんだもんな。
むしろ、レベルが上がってくれないと困る。
と言うか、思いのほか結構上がったな。
あの熊ってそんなに強かったのか?
俺は凛と蘭の方を向き、口を開いた。
「そっちはどうだった?」
「レベル上がったよ! お兄ちゃん!」
「私も凛ちゃんも12まで上がったよ! 兄さん!」
「……12?」
レベルの上がり方が違う?
直接戦わなくてもレベルは上がるが、取得できる経験値は半減するってことか?
どういう基準で経験値が分配されてるんだ? 別にパーティーを組んでるわけでもないのに。
……いや、勝手にそう判断されてるのか?
曖昧だ。その辺はこれから検証していく必要があるな。
まあいい。
とりあえず、これでレベルの目標値には到達したんだ。
お腹もすいたし、ドロップアイテムを回収したら今日はもう帰ろう。
そう言えばこの〈処刑人の剣〉使わなかったな。
別にそれならそれでいいけど。
少し切れ味なんかを試してみたかった気もする。
それもまた今度でいいか。
「それじゃあ、あそこに落ちてるドロップアイテム回収しに行くか。蘭、辺に魔物は?」
「大丈夫! 居ないみたいだよ!」
「そんじゃ行くか」
「「おおー!」」
そうして、俺たちは熊の魔物を倒した場所へと向かった。




