『精神年齢推定70歳、独居老人 is good』
『精神年齢推定70歳、独居老人 is good』
⑴
立て続けに人生上の悲劇が起こって、自分は少し暗い場所に独居している。
まだ、35歳の、老人と呼ばれるには早すぎる風貌でもあるが、生活は歪んでいる。
まぎれもなく、自分は、人々から孤立し、或るアパートの一室で、今は寝込んでいる。
⑵
自身の経験から、恐らく自分はこの様な生活のまま、死んでいくだろうと推測している。
しかし、夢や希望を捨てた訳ではない、ただ、少し虚しいだけだ。
虚しいことは、悲劇ではない、寧ろ、喜劇の様に、自分は自分を捉えている。
⑶
自分には、発見できていない病気があるかも知れないし、下手をしたら孤独死するかもしれない。
でも、自分はそれでいいと思っている。なぜなら、病院に仮に入っても、苦痛があるだけだからだ。
そして、人は自然死が一番いいと思ったのは、何度も病院に入って、居心地の良いことがなかったからだ。
⑷
自分はまだ35歳だと述べたが、それでももう、精神年齢はとっくに70歳を超えていると思う。
まさに、精神年齢70歳の、独居老人の様なのだ。年金で生活をし、衣食住の為だけに、金を使う。
そんな生活は、悲劇なのだが、述べた様に、それはすごく心地の良い、喜劇である。
⑸
神に向かって、独居老人は最高だ、と伝えたくなることが多々ある。
別に人を羨むこともないし、自分は自分の人生を、ひたすら歩くだけだからだ。
誰にも、邪魔されない、この生活は、自分という老人の様な子供を、自身で子供扱いする天国だ。
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そうして、一冊の本を、暇な時間を使用して創りあげたのだが、これをどうしようか迷っている。
誰か、道行く人に、手に取ってもらえればと思うことがあるし、何なら、どこかの誰かに渡したい。
本の題名は、『精神年齢推定70歳、独居老人 is good』である。まだ35歳の自分が、誇りに思う一冊だ。
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この一冊を持って、街へ出かけた処、見覚えのある顔に出会った。10年程前に会った人だ。
有無を言わさず、手招きして、
「この本あげるよ、もう自分には必要ないから」
と言って渡した。君は嬉しそうに、
「有難う、読んだらすぐにゴミ箱に捨てるね」
と言うので、まだまだ死ねないな、と思ったことだけは、確かに確かだった。これは、君に救われたと言うことだろうか。