転生トラックに轢き殺されて~転生した顛末(前半)
前話…一話目から特大のミスをしていた…(白目)
修正済みなのでご安心ください
トラック・ドンキー。頑丈な体を持ち、悪路でも力強く走る、魔物。テイマーの手にかかれば飼い慣らすなんてこともできるらしいが、そう簡単ではないと聞く。
まして、巨大化した変異種など、飼い慣らすことは不可能。
さて…俺、しがない光属性の魔法使いであるルーク―家名があるほど上等な家の出ではない―は、この巨大化変異種のトラック・ドンキーに轢き殺された。
なんということはない。よくある…というほどよくあるわけではない(しそうであっては困る)が、稀によくあることだ。つまり、ありふれたモンスターが偶然に変異してその地域ではありえないくらいの強力な個体に化け、その地域での仕事が適正な―逆に言えばそれほど戦闘力的な余裕はない―程度の冒険者がそいつに出くわし狩られる、という単なる事故だ。俺はロバの魔物との不意の遭遇からシームレスな突進攻撃を食らって昇天した。正直殺気を感じなかったし―それで発見が遅れてしまった―向こうにとってはただ移動していただけだったのかもしれない…知る由もないが。
さて、そうして死んだ俺だが…気がつくと、何やら異国風の宮殿のような場所の前にいた。その宮殿の前には…これまた異国人っぽい風貌の、なにやら落ち着いた気配の―不思議とこっちまで心が穏やかになっていくような感覚だった―後光を放つ男がいた。後光を受けて頭頂部が光り輝いている。眩しい。
「気がつかれたか」
「ここは…?あんたは…?俺は…死んだ…?」
「そうだ。そなたは俗世を離れた。ここは極楽じょ…ああ、そなたらの信仰でいうところの『天国』のようなものだと思ってもらって構わない、ここはその入り口だ。私は…そうだな、厳密にはかなり違うが、そなたらの概念でいうところの『神』に相当する者だということにしておこう」
「神を騙るのか…?それは重罪なんてものでは…」
「はっはっは。なに、気にすることはない。そもそなたらの信仰とわれらの体系は全くの別物だ。ここはいわば『神』の理の外、全く別の理が働く場所だ。理が違えば法も変わり、罪も自ずと変わる、故に心配せずとも私に『神罰』など及ばんよ。私は別の理を預かる『神』のようなものだということにしておくといい。そのほうが話が短く済むでな」
よくわからない…が、感じた。目の前の存在から悪意は全く感じられず、むしろ心が清められていくようであったから。単にそうしたほうが楽なのだろう、そう判断して目の前の存在が『神のようなもの』だという話を飲み込んだ。
「物分かりがよくて助かる。さて要件だが…そなたにはこれから『転生』してもらう」
「…『転生』?」
「簡単に言えば別の世界で新たな人生を送ってもらう、ということだ」
なんてこった。それはまるで…
「神の奇跡じゃないか…神の化身の預言者しか為したものはいないはず…」
「そなたらの信仰ではそうだな。だが我々の理においては極当たり前のことでな」
「なんだそれ…」
とんでもない信仰もあったものだ。それじゃ今巷で流行ってる「死んで魔法のない世界に生まれ変わり、魂が覚えている前世の光属性魔法の力で無双する」という夢想物語みたいなものが当たり前なのか、その信仰。なんだそれ素晴らしすぎる。
「そんなによいものではない。生まれ変わる先が人種とは限らん。犬猫やもしれんし、もっと想像の埒外のものやもしれん」
「あっ…」
前言撤回、なんだその地獄。これはひどい。
「だがまぁ心配するな。そなたは人として転生『させる』。我々の権能を余すところなく行使し、他の理の神々にも協力を仰ぎ、そなたを人として転生させてみせる」
なんと、それはありがたい。しかし…都合が良すぎはしまいか。
「…なぜそこまでして?」
何かとんでもない裏があるんじゃあるまいな。怖くなってきたぞ。
「結論だけ先に言うと、そなたにはな…」
そしてこの『神のようなもの』は、とんでもないことを口にした。
「転生した先の世界で、魔法を広めてもらわねばならない」
後半へ続きます。
『神のようなもの』との話がめっちゃ長くなってしまった…一体誰なんでしょうねー(棒)