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魔王が動画配信を始めました~魔王様は人族と仲良くなりたい~  作者: 暁烏雫月
第一部 魔王が動画配信を始めました
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【間話】エルナは見た!【ドラゴンを追いかけた先に】

 魔王様の魔法で洞窟が一気に崩れ始めたのです。エルナはケーちゃん(ケルベロス)が岩を砕いているのを横目に、洞窟から脱出しました。だってエルナには一つ使命がありましたから。


 崩壊したドラゴンの巣。魔王様が魔法で爆発を起こしたばかりの時、3体のドラゴンは何かを守ろうとしていました。だけど瓦礫が予想以上に多かったのか、何かを守るのを諦めて洞窟の外へと逃げ出したのです。


 魔王様の名を語って自分勝手な理由で人族に手を出す。そんな悪い人、ドラゴンであっても許されません。だからエルナは、そんなドラゴンを追いかけることにしたのです。けどエルナの歩幅が小さいせいか、洞窟から出る時には勇者の仲間を連れたフェンリルとケーちゃんが後ろから追いついてきました。


「あんた、相変わらず足遅いのな」

「あ、足の長さが違うのですよ」

「否定はしねー。で、どこに向かう気だ?」

「どこって、あの憎きドラゴンを追いかけるに決まってるじゃないですか!」

「悪いことは言わねー。ケルベロスに乗ってけ。おい、ケルベロス! バウバウ、ババウ……」


 フェンリルはエルナを馬鹿にしたかと思うとすぐにケーちゃんに指示を出したのです。フェンリルは言語が話せますが、一応は魔物です。魔物の言葉も話せるのです。フェンリルが指示を出すと、ケーちゃんがエルナに近付いてきて伏せの体勢をとりました。


 どうやらエルナに乗れと行っているようです。幸いにもまだ、空を飛ぶドラコンの姿が見えます。空を飛んでる鳥みたいに小さくなってるけど、まだ視界で捉えられる範囲です。追いかけるなら今しかないですし、エルナの足では追いつけません。


「ケーちゃん、行くのです!」

「バウ!」


 エルナはすぐにケーちゃんに乗りました。ハンマーが重かったのか、ケーちゃんが少し苦しそうな顔をしたけどそれも一瞬だけで。その後は、重たいエルナとエルナのハンマーを背負ったままものすごい速さでゴルベーザ山を駆け下りたのでした。





 どこをどう移動したのか覚えていません。空高くを飛ぶ3体のドラゴン。そのカラフルな体をただただ追いかけて走り続けました。草原を走って川を飛び越えて岩場を砂地を走って。ようやく辿り着いたのが1つの山でした。


 山の中腹には遠くから見てもわかるほどハッキリと白い霧があります。ドラゴン達はそんな山の頂上目掛けて飛んでいくのです。ドラゴン達を追いかけるにはこの山を登るしかありません。


 霧に包まれた山、ゴシェンロン山。昔からドラゴンが住んでいるという噂のある山です。エルナは地下や地上なら得意ですが、高い場所は苦手です。ゴルベーザ山はまだ標高が低いから我慢出来ました。けどこの山の高さはエルナには無理です。


 出来ることなら今すぐ逃げたい。けれど逃げ帰ればシルクスに怒られます。逃げるにしたって何らかの痕跡を掴みたいところです。四天王たるもの、ただで帰るわけにはいきません。


「ケーちゃん。少し怖いかもですが、頑張るですよ」


 エルナにはケーちゃんの言葉はわかりません。フェンリルみたいに魔物の言葉も話せません。だけどケーちゃんにはエルナの言葉がわかるみたいで、起きている2つの頭がエルナの方を向いて頷きました。


 ドラゴンは強いです。魔王様を前にしても平然としています。あれを敵に回せば、まともに戦えば、間違いなくエルナ達は死ぬでしょう。四天王としては、戦わずに情報を得るのが最善です。ここら辺の見極めが出来ないほどエルナは子供じゃないのです。


 少しでも山の中の様子を調べて、わかったことを魔王様に報告するのです。シルクスに馬鹿になんてされたくないのです。エルナだって、魔王様のことが大好きなんですから!


「行くですよ」


 ケーちゃんはエルナを乗せたまま、霧に包まれた山の中へと向かっていきました。




 中に入るとやはり、山道の殆どが霧に包まれていました。霧が晴れているのは山のふもとのみです。ケーちゃんに乗って山を登ってしばらく経ちますが、なかなか進みません。嫌な予感がします。


「ここ、どこですかね」


 白い霧で先がほとんど見えない山道。大抵の山はケルベロスの足なら一時間もあれば登れるはずなのです。なのに今、エルナもケーちゃんも、何時間も山を登っているのに頂上に辿り着けません。


 ドラゴンは不思議な魔法を使うと聞いたことがあります。空間を操ったり、魔力を使わない魔法を使ったりすると。そんなドラゴンならエルナ達を閉じ込めることも可能なんじゃないですかね。そう思ったのです。


 そこでエルナは考えました。霧に包まれてるとはいえ、木に触れることは出来ます。木に傷をつければ、傷の有無を感触で確かめることが出来るのです。木に傷をつけながら進んで、今いる場所がループしているか確かめるのがいいと思いました。


「ケーちゃん、もう少し頑張るですよ」


 ハンマーの柄で木の幹を少し削ります。それを、ケーちゃんが進む度に繰り返しました。少しすると、木の幹に触れた手が不自然な凹凸を感じました。エルナがつけたキズです。この山の木は、エルナが傷つけるまでツルツルでしたから間違いありません。


 どうやらエルナもケーちゃんも、同じ山道をずっとずーっと登っているみたいなのです。出口なんて見つかりません。来た道を戻っても、このまま進んでも、同じ山道が続くのです。こうなると……。


「ケーちゃん、止まるです」

「バウ!」

「今からエルナ、穴を掘るです。歩いてだめなら地下から脱出して魔王様に報告するです。いいですか?」

「バウ!」


 歩いてダメなら、穴を掘って地下から逃げるまでです。もしかしたら地下には魔法がないかもしれないですから。地下はエルナの得意分野ですから。エルナはドワーフ族です。掘るのも鍛冶も得意です。


 そうと決まれば話は早いです。エルナはケーちゃんの背中から降りてハンマーを振り上げました。そして勢いよくハンマーを振り下ろして地面の形を変えます。少しすれば、ケーちゃんも通れそうな穴が作れました。


「ケーちゃん、潜るです」


 ケーちゃんに穴の中に入ってもらうと、エルナはその後に続きます。そして掘ったばかりの穴を魔法で広げていき、魔王城のある方角へと道を伸ばします。もちろん、飛び込んだばかりの穴は塞ぎました。





 あのまま何時間もループするのは無駄です。だからエルナは魔王城に帰ってきました。地下にまで魔法がなくてよかったですよ。地中に掘った穴は無事に山の外へと繋がりましたからね。


 だから逃げたわけじゃないです。戦略的撤退なのです。それにしても妙ですよね。エルナ達を閉じ込めてどうしたかったのですかね。エルナにはわからないことばかりです。


 え、ゴシェンロン山はドラゴンしか通れない、ですか?


 なんでシルクスがそんなこと知ってるんですか。ゴシェンロン山はドラゴンの住処で謎が多い山なのですよ。それを、獣人族のシルクスが詳しく知っているだなんて変ですよ。


 とにかく、これがエルナの見た事です。事実です。少しはシルクスの役に立てたですか?


 それじゃエルナ、破損申請を書かなきゃなので帰るです。提出物は毎月最終日の一週間前までに終わらせなきゃなのです。魔王様のお仕事を邪魔しないためにも、エルナ、頑張るのですよ。

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