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魔王が動画配信を始めました~魔王様は人族と仲良くなりたい~  作者: 暁烏雫月
第一部 魔王が動画配信を始めました
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【第1章】 みんな大好きスライムから始めよう!【自己紹介】

 動画投稿サイト「i(アイ)tube(チューブ)」に突如作られた新チャンネル「まおうチャンネル」。魔王エウレカが運営するチャンネルらしいのだが……。



「我こそは、130代目魔王、エウレカだ。我が偽物だと思う者は魔王城まで来るがいい。本物かどうか確かめられるぞ」


 肌や体つきは人族そのもの。たが彼は人族ではなかった。


 頭部から生えている2本の黒い角。上に向かって長く尖った耳。明らかに人族とは違う容姿が目立つ。そんな彼こそが魔王エウレカである。


 赤い瞳がカメラ越しに視聴者を捉えて離さない。羽織っていた黒いマントがエウレカの動きに合わせて揺れる。照れくさいのか赤茶色の短髪を何度も掻き上げた。


「これだけは言わせてもらおう。魔物は我ら魔族にとって、家畜やペットと同義である。野生化した魔物については、我は何の関与もしていない」


 魔族とはエウレカのような角や獣耳、翼など人族とは違う何かしらの特徴を持つ人型の生物のことである。魔物とは人型ではなく色も形も多種多様な動植物。魔族と魔物は例えるなら、人とその他動植物と同じ関係性なのである。


 実は、勇者がよく戦っているのは魔物であり、魔族ではない。しかし多くの人と勇者が、魔物は魔王が操っているのだと誤解している。それを踏まえた上で、ここからが本題だった。


「さて、ここに皆様お馴染みの魔物、スライムがいる。スライムの正しい用途を、我がこの身を持って皆に知らしめようではないか!」


 魔王城の一画、王の間。その中央に存在する玉座を背景にして映像が撮影されていた。エウレカは最後のセリフを告げると一度カメラを止める。


 王の間は入口から玉座にかけて赤い絨毯が敷かれていた。王の間特有の重々しい雰囲気は、魔王であることをアピールするのにはうってつけである。


 玉座は石で造られたもので、横幅も背もたれの高さもエウレカには大きすぎた。硬く冷たいため、長時間座るのにはとてもじゃないが向いていない。今、玉座の上には魔王エウレカではなく1匹の魔物が乗っかっていた。


 タマネギ型の体は大きさにして人の頭1つ分。愛くるしい大きな目。何を考えているのかわからない、ポカンと開いた口。指でつっつけば、プルンとその水色の体を揺らす。


「うむ、何から試すとしようか。スライムと言えば風呂にするか、ゼリーにして食べるか、ペットとして可愛がるか……あと何匹か必要だな」


 エウレカは何度かスライムの体をつっついてその感触を試すと、スライムを両手で抱えあげた。ひんやりとした、弾力のある独特の感触に思わず顔を歪める。かと思えばすぐさまスライムを玉座の上に落とした。


「ひ、ひとまずペットとしての紹介から始めるとしよう。が、我はスライム特有の感触が苦手なのだ。だ、誰か……誰かこのスライムを運んでくれぬかー!」


 その日、王の間からはエウレカの悲痛な叫び声が響いたのだった。




 エウレカは魔王城の一室へと移動していた。その体にはもう、スライムを抱えていない。エウレカの代わりにスライムを抱きかかえているのは、先程の悲鳴に反応して駆けつけた部下の1人である。


 頭には遠目からも目立つ白い猫耳。赤い瞳は、責めるような眼差しをエウレカに向けている。豊満な胸とスライムが密着している様子は、男性にとって目に毒である。


 メイド服に身を包んだその魔族は魔王に仕える使用人の1人。そんな彼女の腰まである銀髪は、その毛先がスライムにかじられようとしていた。


「魔王様。私はいつまでスライムを抱えていればいいのでしょうか?」

「わ、我にそれを近付けるでない! す、スライムの動画を作ろうとしたのだが……どうにもスライムの感触が苦手で困っておるのだ。シルクス、我はどうすればよいのだろう?」


 エウレカの言葉を最後に一瞬、部屋が沈黙が包み込まれた。エウレカはもちろんのこと、シルクスと呼ばれた銀髪の魔族も言葉に詰まっている。


 スライムが無邪気にシルクスの銀髪を引き抜く音がやけにはっきりと聞こえた。続けて銀色の髪の毛をムシャムシャと食べる音が聞こえる。どうやら近くにあるものをテキトーに口にしているらしい。


「……魔王様。触れないと自覚していらっしゃるのなら、なぜスライムを選んでしまったのでしょうか?」

「スライムは人族にも魔族にも人気ではないか! 我も見るだけなら好きだぞ。肌触りだけはどうにも好きになれんが」

「……私が撮影しましょう。魔王様は是非、その苦手なところも含めて、全てのリアクションをさらけ出せばいいと思います」


 シルクスがスライムを床に落とした。かと思えば、エウレカが手に持っていた撮影用カメラを取り上げ、構える。床に落ちたスライムがゆっくりとエウレカに向かって進んでいく。


 スライムの動きにエウレカが1歩下がろうとする。だが後ろに移動させようとした足は壁にぶつかった。スライムが一定の速度を保ったままエウレカに近付いてくる。


「し、しし、シルクス、たた、助けてくれ」

「嫌です」

「わ、我はスライムのひんやり感とぷにぷにした気味悪い感触が苦手なのだ」

「苦手なスライムを題材にした魔王様が悪いかと思います」

「シルクス……そんな事言わずに――うぎゃー! 来るな! 近寄るな! 擦り寄るなー! ベタベタするでない!」


 エウレカは足元にまとわりつくスライムから逃げようと必死に声を上げる。だがどんなに逃げようとしてもスライムの方がエウレカの足に擦り寄っていく。


 最弱として名が知られている魔物スライムと、魔族の王としてその強さが知らているエウレカ。そんな1匹と1人の戯れは本人の許可なくカメラに収められていく。


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