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天界異世界課の天使?  作者: 切島直人
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少年と異世界

初めて作品を投稿します。切島直人と申します。

至らぬ点あるかと思いますが、よろしければ、感想、アドバイス等貰えれば幸いです。

よろしくお願い致します。


異世界__。それは、今存在している世界とは異なる世界の事。異世界の数は、無数にあり、その世界世界で文化も常識も全く違う。世界同士は、繋がれる事は無く、行き来する事も出来ない。だが、確実に存在はしている。そういう世界である。

しかし、異世界転生という単語もある。これは、通常繋がる事の無い世界同士が、第3者の介入により繋がり、その世界の生物の魂を違う世界に行き来させることである。


これは、異世界を管理する、とある天使の物語である。




天界異世界課


「課長!今回の異世界調査の報告ですが__」

「はい、こちら天界異世界課ですが。……はい。……はい__」

「だあー!仕事終わんねー!これじゃあ徹夜コースだよ!」

「異世界サリアからの、出動要請が掛かっています。……そうですね。2、3人程かと__」

「異世界マリンに現地調査行ってきます!」

「すいません!間違って異世界地球の人間の存在を消滅させてしまいました!」

「馬鹿野郎!さっさと魂拾って、転生させてこい!」

「分かりましたぁ!すいません!」


ここは、天界異世界課と呼ばれる場所である。その名の通り、異世界を管理している部署だ。その世界を管理する部署は各世界ごとにありはするが、どの世界へも介入する事の出来る権利があるのは、この異世界課だけであった。もちろん、そこで働く者達は、人ではない。今は隠してはいるが、その全員に大なり小なり白い羽が生えている。俗に言う、天使と呼ばれる存在である。




「おい、アルフレッド。お前にこの異世界の調査を頼みたいんだが」


黒い髪に赤い瞳__お世辞にも天使とは言えない少年アルフレッドに、1つの仕事が舞い込んできた。色とりどりの髪色と瞳の色を持つ天使だが、黒髪と赤目を持った天使はアルフレッドだけであった。まだ、この世に存在して167年。地球人でいう16、7歳程。まだまだ幼さが見えるその容姿と天使の制服の白いローブが、髪色等と相まって、より一層この天界で目立って見えた。悪い意味で。


「分かりました。調査に行かせて頂きます」


アルフレッドは、小さく答えながら仕事の書かれた用紙を貰う。そこには、異世界オーファンの異常気象の調査と書かれていた。


「異常気象?」

「そうだ。異世界オーファン管轄の神からの依頼だ。内容は、書かれている通り異常気象の調査だが、どうやら別の異世界が絡んでいるらしい。どの異世界かも分からないし、そもそも異世界絡みかも分からないがな。まぁ、お前も初めての異世界調査だ。簡単な依頼からこなした方がいいだろう」

「……分かりました。ありがとうございます」


疑問を察知したのか、丁寧な説明を受けたアルフレッドは、腑に落ちたような表情を浮かべる。


異世界オーファンの神は、そのまま、オーファンという名前である。というよりも、ほとんどの異世界は、神の名前が異世界の名前になっている事の方が多い。名前が違うのは、ごく稀である。

アルフレッドは、依頼書を片手に立ち上がり周りを見渡す。彼と目が合いそうな者は全員目を逸らし、わざとらしく周囲の者と話す素振りを見せる。黒い髪で赤目という容姿の者は彼1人の為、周囲の者達は、彼を嫌う、というよりも不気味な存在として見られていた。


「大丈夫かよ。あいつ」

「さあね、もしかしたら死んじゃうかもね」


アルフレッドは、後ろからコソコソと話す声を背中で聞きながら、バツが悪そうにそそくさと部屋を出ていく。

アルフレッドが、部屋を出ていった後、部屋の中は、急に騒がしくなった。


「課長も悪いことしますねぇ、彼、死んじゃいますよ?」

「私は彼なら出来ると思って頼んだまでだ」

「無理ですよ。だって__彼、神力使えないじゃないですか。それじゃなくても身体能力すら他の天使に劣るのに」



神力__シンリョクと読む。全ての神と天使、神聖なる存在に宿る力である。効力は、主に2つ。1つは、物体の顕現。その名の通り、武器や道具を作り出したり、羽を作り、空を飛んだりすることが出来る。逆に、神力が無いと、空を飛ぶ事も出来ないのだ。


そしてもう1つが、存在を消滅させる力。これも、天界に住む、全ての者が持っている力だ。

存在を消滅させる。一言でしまえば簡単だが、その力が及ぼす影響は、計り知れない。ただ、消してしまうのでは無い。

例えば、人1人消滅させたとなれば、その人がいた痕跡も周りの人の記憶も消えて無くなり、その人物が影響した全ての物も消えて無くなる。

また、消滅出来るのは何も人だけでは無い。物や、文化すら消滅させる事が出来る。言葉や、法律、火や電気もだ。この力は、1度使うと、何が起こるか分からない為、原則使用禁止となっている。


これが、神聖なる存在にのみ許された大いなる力である。


しかし、アルフレッドは、この力が使えない。更に、他の天使と比べて、身体能力が低い。身体能力も低く、神力も使えないアルフレッドは他の天使からも良く思われていなかった。


「神力も何も無いあいつに任せても死ぬだけです。しかも、今回、軽い依頼だからと言って1人で行く段取りを組んでますよね。なんで、初めての異世界調査を1人で行かせるんですか?」

「………。お前ももう、仕事に戻れ。私も戻る」


居心地が悪くなったのか、課長は自分の席に戻っていった。質問した男は、その背中を見続けた。


「……悪い人だなぁ。まぁこれですませている自分もだが」


男は静かに呟いた。





「ここが、異世界オーファンの神室か」


天界を歩いて十数分。アルフレッドは、神オーファンがいる神室の前に立っていた。

深呼吸を1つして扉をノックした。


「開いてますよー」


のびのびとした柔らかい声がした。女の声だった。アルフレッドは、ドアノブに手を掛けゆっくりと扉を開ける。


中は真っ白な空間だった。上も下も右も左も全てが白い。空間の中心には、机と椅子が置かれている。他には何も無い空間だった。その椅子には、1人の女が座っている。


「……異世界課から参りました。アルフレッドという者です。オーファン様から依頼を頂いたのですが」

「ええ。私がオーファンです。今回、あなた方に調査のお願いを致しました」


オーファンは、静かに立ち上がりアルフレッドの方に歩いていく。薄い桃色の長い髪が揺れる。


「あら?あなたは」


オーファンがアルフレッドの目の前に来たことで互いに目が合う。オーファンは、アルフレッドの顔を見て首を傾げた。


「あなたは、髪が黒いのですね。珍しいです。……ああ、気にしているのでしたらごめんなさい。でも私は黒髪も素敵だと思いますよ。あと、赤目というのも珍しいです。何故かはわかりませんが、神や天使には黒髪や赤い目をしていらっしゃる方は少ないのですよ。私も貴方以外に見たことがありませんね。それにとてもお若く見えますね。まだ100代なのではありませんか?その歳で1人で異世界調査ができるというのも素晴らしいですね。まあ私も235歳ですから同期みたいなものですね。なのでオーファン様とかではなく、オーファンさんと呼んで下さい。これは命令です。ああ、よろしければオーファンちゃんでも結構ですよ」


アルフレッドは、すごい喋る人だなと感じた。


「それでは、オーファンさん。仕事の内容を確認したいのですが」

「ええ、そうですね。分かりました」


オーファンはそう言うと指を鳴らした。すると、白い空間にテーブルと、それを挟むようにソファーが2つ出てきた。神室というのは、初めは白い空間なのだが、そこにいる神の手によって多種多様にその姿を変える。ちなみに実際は指を鳴らす必要は無い。彼女の好みなのだろう。


「私としては、もう少しあなたとお話をしていたいのですが、仕方がありませんね」


オーファンがソファーに座る。「どうぞ」とアルフレッドも着席を促され、反対のソファーに座る。


「内容は書いてある通り、異常気象の原因解明及び解決です。神力の使用は、あなたの判断に任せます。……て、あら?」


オーファンは、何かを感じ取ったのか、アルフレッドの体をまじまじと見つめる。


「あなた……神力が通ってないのですか?」


オーファンは何度も確認するが、やはり神力は感知されなかった。アルフレッドは申し訳無さそうな表情をして肯定する。


「でしたら、今までの依頼はどうなされてたのですか?」


アルフレッドはうつむき、「初めてです」とだけ答えた。

オーファンは「そうですか」と短く言い、顎に手を当てた。


「初めてとなると、私も色々考えないといけませんね」


オーファンが言う。アルフレッドは、申し訳なく感じた。


「すいません」

アルフレッドは頭を下げて謝罪する。オーファンは「大丈夫です」と言って、手を振り、気にしていないというような素振りを見せた。


「……まあ、1度依頼を受けて頂いたのでどうにかしてあげたいですし……ただ、簡単な依頼にしても初めての調査に1人で向かわせる訳には…。そうですね……」


オーファンは考える。アルフレッドが少しでも安全に確実に調査を完了出来るように。十数秒考えた後、彼女はポンと手を叩いた。


「それでしたら、私も一緒に調査に向かってしまえば良いのではないでしょうか!」


アルフレッドは驚愕した。まさか神が一緒に来ると言うとは思っていなかったからだ。

「僕は1人でも大丈夫です。それに神から、下界への介入は禁止されているはずでは⁉︎」


神は、下界への介入は禁じられている。これは、昔からずっと続いている規則だ。介入しすぎて世界を壊してしまった神がいた為だ。その事件以来、神々は、基本的に世界に介入しないように決めた。しかし、どうしても介入が必要な際は、自分の代理人にとして、異世界課に依頼するのだ。例えるならば資格のようなものだ。たとえ、それが出来る者だったとしても、資格が無ければ出来ない事もある。その資格というのが、天界異世界課に所属していることであった。もし、異世界課に所属していない者が直接介入をしてしまうとその内容にもよるが、最悪存在を消滅させられてしまう。



「あら、心配してくれるんですか?大丈夫ですよ。私は意識だけを飛ばしてあなたがどうしても上手くいかない時にアドバイスするだけで直接手を出したりはしませんから。まあそれでもかなりグレーゾーンですが介入しないなら何とでもいいのがれ出来ます」


オーファンは胸を張って説明する。彼女の豊満な胸が強調され、思わずアルフレッドは、下を向いた。


「……ご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが、よろしくお願い致します」


アルフレッドは、丁寧に頭を下げる。


「そんなかしこまらなくても良いですよ。私は自分がしたい事をやっているだけですから。……さて、時間も押してきていますし。早速行っちゃいましょう!」


オーファンが指を鳴らす。すると座っている2人の横に扉が現れた。


「詳しい説明は、向こうで致しますが大丈夫ですか?」


オーファンが問いかける。アルフレッドは頷き、扉をゆっくりと開け、中に入って行った。

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