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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
98/133

第18話:いざ表舞台へ06

ベテラン勢の北森さんに勝てたのが、相当大きかったようだった。

あれから5戦もレギュラー入りを賭けて勝負して、すべて勝利できた。


次の対戦を待っている間に、なぜこんなに調子がいいのかを考察した。

一戦一戦の大まかな展開を思い返す。

すると、思い当たることが一つあった。


今日はまだ一度も、ワンチャンスで一本を落としていない。


時間制だろうがターン制だろうが、勝負の分岐点というものはかならずある。

それが序盤にやってくると、どんなに実力が拮抗していても一方的な展開になる。

タイムアップが90秒と短く、攻撃力の低いキャラでも5チャンスもあれば勝利できるランブルギアは、その流れをひっくり返すのが難しい。


ディフェンス面が弱い僕は、シハラのキャラ性能もあって、完勝か完敗であることが割と多かった。


このチームに来て指摘されて初めて知ったのだが、僕は強引に流れを掴もうとする傾向にあるらしい。

それがシハラのデザインだと思っていたし、僕の性格とは正反対だったので言われた時は驚いた。


けれど、よくよく考えてみると、僕は幾度となく"相手の強い攻めにつき合ってはいけない"と反省している。

それでも強引だと指摘されたのは、おそらく対戦中は"相手の強い攻め"にチャンスを感じていて、反省をまったく活かせていないから。

いくら強いと言っても、手数に限りがあるので読み切るのは不可能ではないし、カウンターというメリットもある。なにより成功すると気分がいい。


それがクセになっていて、わざわざ相手の土俵で戦う傾向を生み、勝負の流れを持っていかれ、ディフェンスに難ありという弱点になっていた。


しかし今日は違う。

強引という表現はそのままかもしれないが、リスクを取るタイミングが異なっている。

今までは、相手のやりたい事の後にあった。でも今日は、相手のやりたい事の前にある。

相手が必勝パターンに近付けなければ、刺し合いで負けることはあっても、一方的に負けることはない。


そうか。

僕は結局、相手を読んでいるつもりで、自分がやりたい事をやっているだけだったのかもしれない。

"攻撃は最大の防御"なんていうかっこいい言葉で盲目的になっていたのかもしれない。

防御はもっと地味で繊細で、目には見えにくいものだったんだ。

目先のチャンスやピンチだけに囚われていては、大勝負では通用しないに違いない。


あー、やばい。楽しくなってきた。

なんでこんなこと、この状況で気が付くんだ?

練習したくてしかたない。


っていうか、なんで気が付けた?なんでこの状況で変化があった?

昨日までの日常生活が、昨晩の夢の宣言が、僕のプレイに影響を与えた?


今の僕は、晴れやかな気分で格闘ゲームをプレイできている。

それはそんなに大きな要因なのだろうか?


そんな気がするだけで、わからない。

でも強くなるって、それだけやっていてもダメなのかもしれないと、なんとなく思った。


「はーい、次で最後の対戦になりまーす」


チーム全員が筺体を囲んで立っている状態で、鈴木さんが真ん中に立ってそう言った。


「それで対戦するのは、なんと現内くんと西蔵(にしくら)さんのみです!」


えっ!?

それってちょうど僕の対戦だけが余ったってこと?

全員に見られていると思うと、またちょっと緊張してくる。


「理由は簡単、もうこの二人の対戦結果しか、もうレギュラーに影響がないから!」


「えっ、それって…」と僕やまわりが感づき始める。


「勝った方が最後のレギュラーだ」


お兄さんが大きな声で場を支配する。


「本当は最後まで黙ってやるつもりだったが、残ったこの二人がどうもムラっ気がある奴らでな、だったらもう可能な限りプレッシャーをかけて、"今調子がいい奴"を勝負で決めてもらおうと思った」


急な提案に、まわりはすぐにリアクションを取れずにいる。

けれど、「まぁいいんじゃない」と納得していき、「やっぱりダメだったかー」と各々の勝負が終わったことを労いだした。


このさっぱりした雰囲気に、部活とはまた違った連帯感を感じる。

大人の器量とお兄さんの人徳が生む信頼関係。

僕は、この瞬間に立ち会えたことを少し幸運に感じた。


「それで、少しでも本番っぽくするために対戦するのは5分後と少し時間をとる。しっかりプレッシャーを感じるように」


そう締めくくられると、近くにいた人達から応援の言葉をもらった。

ありがたく受け取っていくが、勝たないといけないという気持ちが大きくなっていく。

お兄さんの狙い通り、僕は徐々に追い詰められているような気分になってきた。


気になって、対戦相手の西蔵さんを探す。


西蔵さんは仲間と楽しそうに話をしていた。

僕の視線に気が付くと、何も言わず拳を胸の位置にかざす。


最後のベテラン勢である西蔵さん。内外共に陽気なオタクで、とても親しみやすい人。

僕がレギュラーになるということは、西蔵さんからレギュラーを奪うことを意味する。

それで僕と西蔵さんの関係がどうなるかはわからないが、これは譲れないし譲っちゃいけない。


総当たり戦最後の戦いが、僕を待つ。


第18話 -完-

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