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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
91/133

第17話:青春協奏曲~運命の世界~01

プツン…。


音声はそこで終わった。

僕は、関泉さんにかける言葉を失い、振り返ることができずにいる。


できれば、関泉さんに何か言ってほしかった。

でも、背中越しに向こうも僕の言葉を待っているように感じる。


何か言わなければ。

でないと、これを聞かせてくれた関泉に申し訳ない。


「あ…、その…」


しかし、こんな特殊な状況は漫画でも映画でも見たことがない。

告白…と受け取っていいのだろうか?

だとしても、僕はそれになんて答えればいいのだろうか?


箕内さんにはあんなエラそうな事を言っておいて、いざ自分が同じような立場になったら何もできない。


「…この後もね」


僕が返答を吟味していると、関泉さんから話し始めてくれた。


「蓮子とけっこう話をしたんだ」


関泉さんは僕の背中から離れ、僕の耳からイヤホンを抜いた。

それに合わせて、僕も関泉さんの方へ向き直る。


「なんていったらいいのかな?…真剣な話?

お互い何を考えていたのかを正直にしゃべったのって、実は初めてだったかも」


関泉さんがニコッと笑った。

今まで見た中で一番の笑顔だった。

なんとなく精神年齢を年上のように思っていたけれど、今の関泉さんは年相応、もしかしたらもっと無垢に見えていたかもしれない。


それだけで十分伝わってきた。

二人は仲直りできただけじゃなくて、より友情を深めたに違いない。

たまに、ネットで女子の友情の儚さを説くモノを目にすることがある。

あんなものは嘘っぱちだった。

今ここにある関泉さんと花尾間さんの友情を、あんな少ない文章で語れるわけがない。


ちょっとすれ違ったってなんてことはない、僕は素直にこの二人を美しいと思った。


「そっか、よかった」


僕は心の底からそう思った。


「うん」


それに対して関泉さんは短く頷く。


さて、いつまでも後回しにはできないな。

ここからは、僕の思いを伝える番だ。


「…あの」


関泉さんはかわいい女子だ。

その女子が、僕の事を好きだと言ってくれて、目の前にいる。

ドキドキと心臓が強く打つ。


箕内さんも栄樹さんも僕のことを良く思っていてくれているようだったが、こう面と向かってストレートに伝えられると全然違う。

伝えられた僕がこんなに緊張しているんだ。伝えた側の関泉さんはその比ではないだろう。

だから、可能な限り真剣に応えなければならない。


「…いいのよ」


僕の真面目な心境とは裏腹に、関泉さんは軽やかにそう言った。


「今回は、何があったって事と、蓮子と仲直りできたって事を早く教えたかっただけだから」


すると、関泉さんは一旦目を閉じると、今度は真剣な目をする。

真っ直ぐ僕の目を見ているのかと思えば、関泉さんの顔がみるみる赤くなっていく。


「だから、最後に言った事は保留にして、いつか絶対ちゃんと言うから…」


いわゆる宣戦布告というやつを、僕は真正面から受けた。


「これで終わり、呼んでおいてなんだけど、先に教室に行っていてくれない?

私はちょっとここで自分を落ち着かせてから行く」


自分の言っていることに耐えられなくなってきたのか、関泉さんは自分の髪をいじり始めた。

そのあどけない様子がとても魅力的で、思わず抱きしめたくなってしまったがギリギリ留まる。

ここは素直に立ち去るのが一番だ。僕のその場の感情で関泉さんの覚悟を無駄にはできない。


僕は「わかった」と言って、一人教室へと向かった。


途中で一回だけ振り返ってみると、関泉さんは僕のことを見ていた。

あれがなんの眼差しだったのかわからないけれど、僕はなんとなく照れてしまった。




時間が経ったとはいえ、まだ普段学校にきている時間より30分以上早い。

まだ生徒の姿は見えず、学校は静かなものだった。

自分の足音だけが響き、感傷に浸ってしまう。


ぼーとした頭で教室に入ると、なんと花尾間さんがいた。


「あっ、おはよう…」


花尾間さんが僕に気が付くと、なんとなく遠慮がちな挨拶をしてくれた。


「お…おはよう」


僕はちょっと驚きながら、自分の席へと歩いていく。


その間、花尾間さんのそわそわとした様子が目に入る。

あぁ、花尾間さんも僕らの事が気になって早く起きてしまった身か。


「あはは」


僕はつい声を出して笑ってしまった。


「な、なに?」


花尾間さんがそれに驚いた。


「花尾間さんと関泉さんって、本当に仲がいいよね」


なんか、考えるよりも先にそんな言葉が僕から飛び出した。

花尾間さんは目を一瞬丸くしたが、小さく笑ってこう言った。


「まぁね!」


結局、花尾間さんは僕と関泉さんの事を聞いてはこなかった。

僕の様子でだいたいわかってしまっただけかもしれないけど、余計なお世話はせずに見守る、それが二人で話し合った結果かもしれない。


なんだかすごくもったいない事をしたかもしれない。

という邪念を拭いきれないのが素直なところだけれど、

今は、あの二人の関係と、僕を含めた三人の関係を守っていきたいなと思った。

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