表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
87/133

第16話:青春協奏曲~月と太陽~03

関泉さんは校門を通らずに僕を待ってくれているようであったが、振り向いてはくれなかった。


僕が関泉さんに手が届く位置までやって来て、話をするために息を整えていると、ようやく僕の方を向いてくれた。

無言のまま、いつもと変わらない表情で僕の事を見ている。


「あ…あの、関泉さん…」


言いたい事、聞きたい事がいくつも重なっていて、何から話していいか決められない。


「なに?」


関泉さんは、まるで何事もなく、部活を休んでいる素振りさえ見せない。

一見普段通りのクールな関泉さんであるが、その普段通りを演じている関泉さんに、僕は恐ささえ感じた。

ただ事では無い何かが起こっている。そう思った。


「えっと…、花尾間さんと何があったの?なんか、すごく落ち込んでいて…」


僕はその何かを探ることにした。


「………そう」


関泉さんは僕から視線をはずし、つぶやくようにそう言った。

ただの直観だが、無理をして感情を押し殺しているように僕は見えた。


「もし、僕が発端だったなら謝らせてほしい。電話に出れなくて本当にごめん、決してわざとではないんだけど、忘れてしまっていたのは言い訳ができない」


僕は深く頭を下げて謝罪した。


「別にいいわよ。現内くんは私がそんなことで根に持つ女だと思っていたの?」


「ううん、そんなことはないんだけど…」


でも、朝会った時いつもと違かったから。

そう言おうとして、僕は寸前で取り消した。

いつもと違っていたのは僕も同じだ。電話の事を思い出して、慌てふためいていた。

だから、それだけで様子が違っていたからとは言えない。


「けど、二人が喧嘩をするなんて、なにか事情があったとしか思えなくて」


「ちょっとした言い争いくらい、私達でもするわよ」


「そうかもしれないけど…」


なら、なんで部活を休んでまで顔を合わせないようにしているの?


僕はそう聞けなかった。

関泉さんのあくまでも冷静を装う態度が、僕が踏み込もうとするのを阻害する。


頭を掻き、あからさまに困り顔をしている自分を認識する。

こんなんじゃ何も解決しない。そうは思っても、なんと言っていいのか思い当たらない。


「…はぁ」


小さなため息と共に、関泉さんは目を閉じた。


「蓮子のため?」


そう聞いてきた関泉さんの声は、さっきまでと少し違った。


「蓮子を助けたくて私を追いかけて、理由を聞いたり、電話の事を謝ったりしているの?」


「それは…」


「私は…」


「………」


「私のことはどうなの?」


その問いに、僕の心は何かに突き刺された。

僕が今こうしているのは、僕が関泉さんと仲直りしたくて、花尾間さんとも仲直りしてほしくて、それで、三人でロケテに行く話がしたかったから。

そう、僕がこうしている理由に、関泉さんが入っていなかった。


何も言えない僕に、関泉さんは背を向けた。


「いや、そんなこと…」


「大丈夫。わかっている。現内くんを責めたいわけじゃない」


「だけど…」と最後にそう言って、関泉さんは歩き始めてしまった。


どうしようもないけど、このまま帰してしまってはだめだ。

そう思った僕は、思いがけず関泉さんの手を握ってしまった。


「なっ!」


僕の手に驚いた関泉さんは、反射的に僕の手を払いのける。

そうなって、僕はやり過ぎてしまったと後悔した。


関泉さんは、僕に握られた手をもう一方の手で包み込み、胸のところで押さえている。

顔は逸らされてしまい、視線は両手に落ちていた。


下校中の生徒達の好奇心を、つき刺さるように感じる。

僕の迂闊な行動が、関泉さんに恥をかかせてしまった。


「ご、ごめん」


あわてて僕は謝ったが、その焦り具合が余計に目立ってしまっている気がした。


「……もう、ふざけないでよ」


関泉さんは僕を軽くたしなめるにそう言った。

一瞬驚いたが、僕の失敗を単なる悪ふざけにしようとしてくれていると理解した。


「じゃあ、私はもう行くから」


「う、うん…」


ただ迷惑をかけるだけになってしまった僕は、もう関泉さんを止めることができなかった。


あんな状況になっても、機転を利かせてやり過ごすことができる関泉さん。

落ち着いていて、本当に気が利く。

それなのに、なぜ彼女は親友と気まずい状況になってしまったのか。


校門を通り過ぎた関泉さんを確認してから、僕は教室へと戻り始めた。


このままじゃいけない。

なんとかしなくては。

僕にできることは、何かないのだろうか?


………。


この状況を打破する事を考えたいのに。

考えなくちゃいけないのに。


僕の脳裏にある光景が何度も蘇る。


僕が触れた手を握り、少しだけ目を潤ませてながら顔を赤らめている関泉さんの姿が、僕の頭から離れない。


今、関泉さんは僕のことをどう思っているのだろう…。

そう考える度、胸の鼓動が強くなるのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ