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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
86/133

第16話:青春協奏曲~月と太陽~02

誠心誠意で謝る。

そう決意をしたものの、いったいなんと言えばいいのだろうか?

まずは、メッセージを無視してしまったことを謝罪する。これは当然。

その後、理由を説明する。

…としたいところだが、栄樹さんと真面目な話をしていたとは言えない。話の内容なんて他人に言えないし、なんとなく他の女子を優先したという事実は言わない方がいい気がする。

では、何か適当な理由を作るか?


そんな事を一人で考えたくて、僕は校庭でぼっち飯をしている。

クラスメイトとお昼ご飯を食べるのがいつの間にか当たり前になり、今こうしていることが懐かしいと言うかなんと言うか…、不思議な気分である。

こっちの世界に来てから、割とすぐ一人で食べることがなくなったな。

本当にこの世界はゲームへの関心が高い。おかげで僕は良い意味で注目の人物になり、色々な人に声をかけてもらった。


そういう点でいうと、同級生で一番初めにちゃんと声をかけてくれたのは関泉さんだったかな。

僕は、部活初日の出来事を思い出す。

関泉さんが積極的に僕にからんできてくれたから、僕は彼女達と遊べるようになった。

ありがたいなー。

関泉さんは、箕内さんとはまた違ったタイプで面倒見がよくてやさしい女子だ。

ちょっと何を考えているのかわかりにくい所があるけれど、慣れてしまえばそんな所がむしろかわいく思えてくる。


「………」


僕は、そんな人の大事なメッセージを無視してしまった。

罪悪感が積もる。

僕も男だ。ここが本気の出しどころ。

僕はお弁当を口へ運びながら、天を仰いだ。




お昼休憩終了のチャイムが鳴り、僕はその音が消えるか消えないかくらいのタイミングで教室に滑り込んだ。

ゆっくり考えていたら、すっかり時間を忘れてしまっていた。

実習のために校庭へ移動してきた集団を見かけなければ、完全に遅刻していただろう。


幸いまだ先生は来ておらず、僕は息を整えながら席に着いた。

それと同時に、目の端に廊下を歩く先生の姿が映る。

あぶなかったー。と心の中で思っていると、ふと花尾間さんが目に入る。


いつもなら机の上に教科書やノートがあるはずなのに、今は何ものっていない。

きちんと座っているように見えるが、視線が下を向いていて、体を縮こめているように見える。

今朝と異なる様子に、体調不良か何かでつらいのではないかと心配になった。

しかし、声をかけるには少し距離があり、先生も来てしまったので、僕はなんとなく様子を伺うことしかできなかった。




午後の授業が終わった。

先生は教室を出ており、クラスメイト達も部活や帰路へと向かっていく。

それなのに、花尾間さんは席についたまま動かなかった。


さすがにじっとしていらず、僕は花尾間さんに声をかけた。


「なんか、体調悪そうだけど大丈夫?」


僕の声が花尾間さんへ届くのに時間がかかったのか、顔を上げてくれるまで少し待った。


「…うん、なんでもないよ」


申し訳ないが、まったくそんな風には見えなかった。


「本当に?今日の部活は休んだ方がいいんじゃないか?顔色も悪いし」


「…そうかな?」


「うん。あっそうだ、歩ける?ちょっと待って、関泉さん呼んでくるから」


本当はまず謝りたかったが、背に腹は代えられない。

男子の僕にできるのは、応援を呼ぶ事だけだ。


「だめっ!」


声は抑えられていたが、花尾間さんが強く僕を引き留めた。


「えっ?」


僕は選択を間違えたのかと思い、焦りを感じる。


「りょ…涼奈は…」


花尾間さんは、力無く俯いた。


「今日、部活には行かずに帰るってさ」


「そんな」


それって、まさか僕に会いたくないから?

僕は、そんなに関泉さんを傷つけてしまったのか?


僕がショックを受けていると、花尾間さんがこう続けた。


「…私のせいで」


しばらく意味がわからなかった。

なんで、関泉さんが部活へ行かないのが、親友である花尾間さんのせいなのか?


そういえば、僕がお昼休みを終えて教室に戻ってきた時から、花尾間さんの様子がおかしかった。

ということは…。


「もしかして、お昼休みに関泉さんと何かあったの?」


恐る恐る聞いた僕に、花尾間さんは目を細め、悲しそうな顔をした。


「喧嘩でも…したの?」


と言ったものの、あの二人が喧嘩する理由なんて微塵も思い当たらない。

あるとすれば、朝の時点から不安の種であった僕自身。


花尾間さんは、否定も肯定もしなかった。

たぶん、花尾間さんは自分に落ち度があって、関泉さんを怒らせてしまったと思っている。


花尾間さんはこれ以上自分から話してくれる感じではない。

理由を知りたければ、花尾間さんに問わなければならない。

だけど、僕なんかが踏み入っていいものなのだろうか?

聞いたところで、力になってあげられるのだろうか?


僕は立ち尽くしたまま、時間が刻々と経っていく。

このままじゃ、本当に何もできずに終わってしまう。

そう思った僕は、教室を出ることにした。


「ちょっと行ってくる」


そう言うと、花尾間さんが僕を引き留めようとした気がしたが、それよりも早く僕は廊下へ出た。

小走りで関泉さんの教室へ向かい、関泉さんを探す。

教室にいた生徒を一人一人しっかり見て、関泉さんがもういないことを確認した。

僕はすぐに階段を下りて、下駄箱へ向かう。

正確な場所は把握していないが、関泉さんが靴を履き替えている場所一帯を確認する。

そこはすべて上履きが置かれていて、関泉さんはもう校舎にいないことがわかる。

僕は上履きを履き替えずに外へ出て、関泉さんの後を追って走った。


すると、校門の手前で関泉さんの後ろ姿が見える。


「関泉さん、待って!」


僕の呼び声に、彼女は足を止めた。

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