表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
77/133

第14話:青春協奏曲~女帝の塔~01

「よかったー…、無事に和解できたんだね」


翌日金曜日、朝の教室。

僕は花尾間さんと関泉さんに昨日の結果を伝えた。


関係性が元に戻ったというより、むしろ良くなったと思っているのが表面的に出ていたのか、花尾間さんにほほえましく聞かれているのに気が付いた。


「うん、どうも心配をおかけしました」


僕は少しだけかしこまってお辞儀をする。


「渡辺さんがすぐ我に返ってくれる人でよかったわね。あのまま冷戦にでも入られたら部活に行きにくくなっていたわ」


関泉さんも少し憎まれ口を叩きながら、肩をなでおろしている。


「それと、渡辺さんが二人にもすまなかったと伝えておいてくれってさ」


「たしかに受け取りました」


「…と渡辺さんに伝えておいてください」


「なんでだよ。渡辺さんのことだから、きっと直接謝りにも行くと思うぞ?」


無事事態が収束したことに安心した僕らは、関泉さんのひとボケに笑った。


その後、花尾間さんが教室の時計を確認して、関泉さんをつつく。


「涼奈、時間大丈夫?」


「えっ?まだ大丈夫だとおも…」


始業時刻を気にした花尾間さんに、関泉さんは余裕があることを伝えようとしたように見えたが、一瞬動きが止まり、スマホを取り出して何かを確認し出した。


「そうね。私はもう行くわ」


関泉さんはふらっと教室の出口へ向かった。

それを僕と花尾間さんは見送る。


関泉さんが教室を一歩出ると、そこで一旦立ち止まり、僕らをちらりと見つめる。

それに対して、花尾間さんは「また後で」と手を振った。

関泉さんは特に何も反応せず、すっと廊下へ消えていった。


「関泉さん、何か用事があったの?まだちょっと早い気がするけど?」


「うん、実はそれなんだけどー…」


肯定しつつ語尾を伸ばして続きがあることをアピールする花尾間さん。スマホを取り出してささっと操作すると、僕に画面を見せてきた。


そこには、長たらしい説明文らしき文字列と、ちょっと大きめに「当選」という文字が並んでいた。


「えっ!まさか」


僕はすぐに花尾間さんへ視線を戻す。


「うん!ついにやったよ」


花尾間さんは、慎ましながらも体全体で喜びを表現する。

その無邪気な姿に一瞬心を奪われた。

こんないい娘が僕のために体を張ってくれた。それがどれだけすごいことだったか…。

心臓が少し締め付けられるような感じがした。


「現内くんがいなかったら、途中で諦めていたかもしれない」


そう言いながら、花尾間さんは改めてスマホの画面を確認する。


「いやいや、ようやくだね。おめでとう」


「えへへ、やりました」


花尾間さんは小さくブイサインをした。


「それで、これはなんのゲームでいつにやるの?」


「これはなんと、来月に開催されるエルフストーンウォーリアーズのロケテストです!」


僕はびっくりした。そんなビッグタイトルが当選するとは。


エルフストーンウォーリアーズとは、エルフストーンという世界的に有名な漫画を題材にした新作格闘ゲーム。アニメさながらのビジュアルを実現した最新の映像技術で、開発が発表された時から話題騒然だった。


「涼奈は漫画もアニメも観たことないって言っていたけど、面白そうって前々から興味を持っていたから、これが当たって本当によかった」


「すごいなー…関泉さんを驚かせることができて、しかも僕らもちゃっかり行ける。なんていい誕生日企画なんだ」


夏の思い出が一つ確定したことに、僕は喜んだ。


「うんうん、ちょっと早いけど、涼奈が予定を入れちゃう前に教えてあげないと」


「それなら日付だけおさえて、当日に発表した方が面白いんじゃない?」


「あー…それも考えたんだけど、私には長期間涼奈に探られ続けるのは耐えられないから、素直に言うことにしたよ」


「なるほど」


「じゃあ、来週の月曜日に言おうか」


「えっ?なんでわざわざ?」


「だって、今日は現内くん部活に来ないでしょ。せっかく二人で取ったんだから、一緒に渡そうよ」


その言い分に僕は感動した。

ただの手伝いじゃなくて、一緒にって思ってくれていたんだ。おまけじゃなかったんだ。


「わかった。じゃあ来週に」


花尾間さんは自席へと戻っていった。


楽しみすぎる。

大好きな漫画の、大好きな格闘ゲームのロケテストに、花尾間さん関泉さんとかわいい女子二人と行ける。

そんな日が僕なんかに来ていいのだろうか?

僕は思わずにやけてしまう顔を、両手で必死に押さえつけた。




そして放課後。

僕は花尾間さんと教室で別れて、下駄箱へ向かった。

今日は部活を休んでチームへ参加する日。

一か月経ったが、まだちょっと慣れない。気まずいので、つい部員に会わないよう願ってします。

なので基本的に早足で階段を下りて、なるべく周りを見ないように学校を出る。


靴を履き替え、校舎を出る。

すると、目の前に一人の女子生徒が現れた。


「よっ」


「あれ?箕内さん?」


後ろで組んだ手で鞄を持ちながら、箕内さんは僕を引き留めた。


「これからまっすぐゲーセンに行くの?」


「そうです」


「…たしか、チーム活動が始まるまで時間あるよね?」


「まぁそうなんですけど」


箕内さんの様子がちょっと違う?

いつものように、構ってくれている感じではない。


「ならさ、駅まで一緒に歩いてくれないかな…」


「えっ?」


「ちょっと、聞いてほしい話があるんだよね…お願い」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ