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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
75/133

第13話:青春協奏曲~皇帝の愚行~03

「もう少しうまくやっていけていたと思っていたけど、俺は自分という人間を少し勘違いしていたのかもしれない。現内くんにも俺の独断で迷惑をかけてしまった。だからこれは俺の責任だ。本当にごめん」


屋良さんは真剣な顔で最後にそう言うと、僕に向きなおり、深々と頭を下げた。


「そんなことないです!迷惑だなんて、思ったこと一度もないですよ」


僕は屋良さんの言葉を強く否定した。

こうやって後輩に謝罪できる人間だからこそ、一人で背負い込んでもらいたくない。


「僕は屋良さんに感謝しているんです。一人で格ゲーするしかなかった僕に色んな事をさせてくれて、あの時屋良さんと出会っていなかったらと思うと、ゾッとするくらいなんです」


僕の訴えに、屋良さんは顔を上げた。


「屋良さんに責任があるなら、屋良さんの言う事にただ従っていただけの僕にも責任があります。渡辺さんが言っていたように、部員によって温度差があるのは僕も少し感じていました。でも、屋良さんが言い出したことだから問題無いだろうと考えるのをやめてしまっていました。格ゲー部の部員を名乗るなら、もっと部の事も考えているべきだったんです」


僕は言われたことを精いっぱいやった。

それ以上で応えようとした。

でも、やりたい事しかやっていなかった。

それではダメだったんだ。


「だから、屋良さんだけの責任だなんて思わないでください」


こんなことを言っておいて、僕に何かができるわけではない。

けれど、自分のことよりも屋良さんのことの方が心配になった。

自分にこういう熱い一面もあったんだと初めて知った。

これもきっと、屋良さんのおかげだ。


「…そうだよ」


僕に続いて、渡辺さんがぽつりとそう言った。


「俺がうっかり暴走しちまったって話をしたのに、なんでそんな話になるんだよ」


渡辺さんは少し怒っていた。


「いや、でもそれだって、部のためを思って…」


渡辺さんの言いたいことは伝わっていたようだが、屋良さんは自分の責任だと譲ろうとしなかった。


「それはちが…」


屋良さんの態度に渡辺さんは声を少し荒げたが、すぐそれに気が付いて一旦口をつむぐ。


「いや、部員のためでもあったんだけど…」


何かを言おうとするが、どうもうまく言葉にできない様子だった。


それを僕と屋良さんは黙って聞いた。

しばらくすると、渡辺さんは両手で頭を掻きむしると、まっすぐを僕を見据えた。

そして、音を立てて机に両手を立てると、額も机に当て、土下座のような姿になった。


「現内、俺が悪かった」


僕は渡辺さんのその姿に驚いてしまった。

こんなに堂々と謝られるとは思っていなかった。


「お前に色々言ったが、花尾間にああやって言われて、結局全部自分のためだったことに気が付いた」


屋良さんも驚きを隠せていなかった。

ちらっと僕の方を見て、「花尾間さんもいたの?」と目で問いかけてくる。


「だからお前に謝罪したかったんだが、俺だけだと警戒されると思って、屋良に全部話してこういう場を作ってもらった。

花尾間の言う通り、お前が部に来てから自分が強くなったことを実感していた。だからお前がちゃんとやっているのもわかっていたはずなのに、本当にすまない」


渡辺さんはまだ顔を上げない。


「そ、そんな…顔を上げてください」


気が付いたら僕はそう言っていた。

それを聞いてもなお、渡辺さんは微動だにしない。


「事情はどうあれ、僕は渡辺さんに言われた事に納得しています」


「いや!だからそれは…」


渡辺さんは顔を上げた。


「わかっています。別にいじけたとか諦めたとかじゃないです。ただ、何が格ゲー部にとって一番いいのかというのを少し考えたんです」


自分のやった事が結果的に部のためになる。そうではなくて、純粋に部のためになること。


「渡辺さんの言う通り、あわよくば大会に出たいと思っていました。

でもその理由って、僕が出ればいいところまで行けるとか、みんなに褒めてもらえるとか、自分のことばかりでした。

部で僕に勝てる人がいなくて、調子に乗っていたんだと思います」


今度は屋良さんと渡辺さんが、僕の話に耳を傾けてくれている。


「大会で成績を残せれば、部のためになると考えていたのが思い上がりだったんです。

でも、それで本当にみんなが喜んでいくれるのか?って、そういう疑問が出てきました。

それでその答えはNOだったんです。だって、格ゲーは自分の実力と戦略で勝つのが一番面白いから」


「お前…」


渡辺さんは、僕が最後に何を言おうとしているのか察してくれたようだった。


「格ゲー部は格ゲーを楽しむことが第一だと聞いています。だからぜひ、大会は三年生で出場して勝ってください。そのためのお手伝いはなんだってします」


僕は格ゲー部が大好きだ。

でも、僕の格ゲーへの意識はもう部活動には収まっていなかった。

もう、格ゲーができればなんでもいいなんて考えていない。


格ゲーで勝って、人が集まってきて、褒めてもらえるのは当然うれしい。

けれど、ただ偶然与えられた都合のいい状況に甘んじているのはフェアじゃないと思ってしまった。

なにより、僕が格ゲーをやっているのは、勝てるからじゃない。


「渡辺さんにはむしろ感謝します」


今話した事はすべて即興だけれど、これが最善だと思っている。

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