第11話:登竜門06
チーム活動が終わり、僕は駅近くのファストフード店にいた。
高校生がいるにはちょっと時間が遅いが、まだ遅めの晩御飯と見てもらえると思う。
僕はポテトを食べながら、栄樹さんが来るのを待っている。
ゲーセンから僕が先に帰ったフリをして、後からお兄さんと別れた栄樹さんが来る予定。
二人で会うことをお兄さんにバレたくないからだそうだが、簡単な用事だとお兄さんはついて来ると言いそうだな。シスコンならなおさら。
はたして、栄樹さんはうまくお兄さんをまけるだろうか?
僕はジュースを飲んで一息つく。
正直、少し心の準備をする時間があるのはありがたい。
栄樹さんとお店に入るのはあの日以来になる。
話題は分かり切っているし、ゲーセンで二人で会うこともあったが、やっぱりちょっと特別に感じてしまう。
だって、同性同士でもある程度仲良くないと行かないでしょ?たぶん…。
そうこう考えていると、栄樹さんがジュースだけ持ってやって来た。
栄樹さんの後ろに目をやっても誰もいない。ちゃんと一人で来れたようだ。
「お…おまたせしました」
「う、うん」
栄樹さんが向かい側に座る。
「お兄さん達とはどうやって別れたの?」
「バスが発車する直前に忘れ物って言って出てきました」
おぉ、物理的な手段できたか。
ふりきれない可能性があったが、あのお兄さん相手ならヘタな言い訳をするよりはよかったかもしれない。
「なるほどね」
僕がそう言うと、会話が終わってしまった。
沈黙したまま、二人でジュースを一口飲む。
どうしよう?
すぐに本題に入っていいのか、それとも、適当な話をして栄樹さんのタイミングを待つべきなのか。
「部活はどうだった?僕一人いないくらいじゃ変わらないだろうけど」
「そ、そうですね。特に問題なかったです」
固い。
僕を前にして照れてしまっていると妄想するのは楽しいが、やっぱりいつもの栄樹さんでないと寂しさを感じてしまった。
「あ、あのですね!」
「…はい」
「その、お話というのはですね…」
栄樹さんの決心がついたようで、ついに本題に入る。
といっても、部活のみんなとの関係性なんてどう答えたらいいのだろう?
すでに僕をよく思っていない人もいるみたいだし、なるようにしかならないというか、でも屋良さんが応援してくれているという事実は安心材料かもしれない。
僕は心の中で回答の方向性を決めた。
「なんでしょう?」
「えーと、あの…ですね。水曜日の部活終わりに聞いたこと…なんですけど」
「うん」
「………その、現内さんは本当のところ箕内さんとどうなっているんですか?」
「えっとね…。ん?」
えっ?そっち?
それってあの時のノリみたいなものじゃなかったの?
その件は、僕の中で決着がついていただけに驚かされた。
「どうなっているって、どういう意味?」
そう聞き返すと、栄樹さんの顔が少し赤くなった。
「わかっているのに、言わせないで下さいよ」
「そ…そういわれても」
たしかにわかっているつもりだが、もし違っていたらとんだ赤っ恥なので言い出せない。
「あぁもう、つつ…付き合っているのかってことです!」
黙ってしまった僕にしびれを切らして、栄樹さんがかわいく唸っている。
「そんなわけないじゃないか、屋良さんみたいな人が近くにいるのに、なんでわざわざ僕なんだよ」
「だって、格ゲー強いじゃないですか」
「…そうだとしても、僕ってそれだけじゃん?面白がってもらえているだけだと思うけど」
「本当ですか?」
「本当だと思うけど…」
「………」
「………」
「どうして、そんなに気になっているの?」
「それは…」
栄樹さんは俯いてしまった。
気まずくするくらいなら、何も聞かなかった方が紳士だったかもしれない。
しばらくすると、栄樹さんが小さな声で話し始める。
「だって、チームに入ったことで部活に来ない日ができちゃったのに、箕内さんと二人で仲良くしていたら………」
あぁ、そういうことか。僕の中で腑に落ちた。
部活動で不満を持たれたかもしれないのに、部活内外で人気のある箕内さんを一人占めしたら、それこそ攻撃対象になりかねない。
チームに入った事による弊害はもうしょうがないとして、それ以外のフォローを栄樹さんがしてくれようとしているのだろう。
「大丈夫だよ。ほら、月曜日に屋良さん部活を休んでいたじゃん。だから代わりに箕内さんに話を聞いてもらっていただけだよ。それにさ、やっぱり箕内さんってみんな平等にフレンドリーじゃん?だから心配無用だって」
鈴木さんに事前に言われていたので、僕はなるべく明るく問題無いことを伝えた。
「そう…だったんですか」
突然元気よく話し出す僕に面食らって栄樹さんは少し呆けたが、僕が言っていることが伝わったようで笑顔になった。
「なーんだ、そうだったんですか。そうですよね、いくら現内さんでも、ねぇ?」
どうやら、いつもの調子に戻ったようだ。
この人懐っこさが素直にかわいい、しおらしい一面も見れたのでなおさらそう思う。
「まぁね」
「うふふ」
「その、なんだ。鈴木さんから聞いたよ、僕のこと心配してくれていたんだって?えーと、あの、ありがとう…」
ちょっといい雰囲気に、柄でもないセリフを頑張ってみたりした。
「へっ!?」
すると、栄樹さんがあんぐりとした顔で驚いた。
「ん?どうしたの?」
「き…聞いたって何をですか?」
「だから、僕がチームに入ったことで、部活に行きにくくなるんじゃないかって」
それを聞いて、栄樹さんが恥ずかしいそうに今度はしぽんでいった。
そのせいか、耳が赤くなっている。
「な、なんだ。そういうことですか…」
「どうしたの?」
「いいえ、別になんでもないですよ」
栄樹さんは拗ねたようにそっぽを向いた。
最後の反応がよくわからなかったが、栄樹さんを安心させたれたようで、僕もほっとした。
第11話 -完-
次回から部活パートがラストスパートに入ります。少し長くなりますがお付き合いの程をよろしくお願い致します。




