第11話:登竜門01
金曜日。
今日僕は、部活ではなくチームの方へ行く。
相変わらず連絡先交換などしていないので、部から許可をもらって今日から参加できることを、ミツルギに行って直接伝える必要がある。
それも相まって、僕は今日ずっと緊張しっぱなしだった。
初めて正式に顔を出すというのもあるが、一番の原因は僕のマイナス思考にある。
もし、やっぱり無しみたいな事になったらどうしよう。そうなったら、部長やみんなになんて説明すればいいんだ?等と余計な心配を重ねている。
こういうのって、本当に改善策はあるのだろうか?
「あの、現内くん」
もうチャイムが鳴ってしばらく経つというのに、モタモタしている僕に花尾間さんが声をかけてくれた。
「あ、なに」
「今日からチームの方に参加するんだよね?」
「うん、正直かなり緊張しているよ」
「そうだよね。でもすごいよ、プロを目指している人達の中へ入っていけるなんて」
「そ、そうかな」
花尾間さんにすごいと言われると、うれしいと同時に少し恥ずかしくなる。
おっとりした性格のせいなのか、花尾間さんが人を褒める時、子供をあやすお母さんを連想させる。
人に甘えたい欲求がなくもないので、ついうっとりしてしまうが、すぐに自分の理性にひっぱたかれて目を覚ます。
「うん、次の部活で話を聞かせてね」
どうせなら今日の夜でも構わないのだが、そんな提案をできる勇気は無い。
「わかった。…あ、そうだ。昨日さっそく少しみてみたよ」
その代わり、例の件について少し触れた。
「本当に?」
僕がすぐに実行してくれた事を、花尾間さんは喜んでくれた。
「たぶん、もう花尾間さんが見ているサイトだと思うけど、結構頻繁にやっているんだね」
「そうだね。全ジャンルで行ったらほぼ毎日やっているんじゃないかな?」
「すでに九月頃の予定もチラホラあって、いくつか応募開始をメモしておいたよ」
「ありがとう。ちょっと早いけど、その時期なら誕生日プレゼントになるかな」
「そうかな?関泉さんは誕生日プレゼントとは見なさいかもしれないよ?」
「えー、そしたらお菓子でも作るしかないかな」
関泉さんネタで少し笑っていると、誰かが僕らに近づいて来るのを感じた。
「なんか楽しそうね」
「涼奈、来てくれたの?」
「そうよ。教室に誰もいなくなっちゃったから、寂しくてね」
全然寂しそうじゃない表情で関泉さんはそう言った。
「じゃあ、私達は部活に行くね」
「うん、がんばって」
「そっか、現内くんはチームの方か」
「まぁね」
僕が返事をすると、関泉さんは目を閉じてうんうんと小さく頷いく。
「つらくなったら帰って来てもいいのよ」
「だ、大丈夫だよ」
自信を持ってそう言えないのが悲しい。
「僕ももう行くよ」
僕は席を立ち、鞄を持ち上げる。
「………」
…?
なんか、関泉さんに見られてる気がする。
「どうかした?」
「ううん、別に」
関泉さんは花尾間さんに向き直った。
「そうそう、さっき二人は何を話していたの?」
「え、えーと…現内くんのチームのことだよ。来週お話し聞かせてほしいなって」
「……ふーん」
「別に関泉さんの悪口なんて言ってないよ」
「あれ?私はそんな発想なかっけど、現内くん、わざわざそう弁解すってことは?」
「いやいや、本当だって」
若干微妙だったが笑って誤魔化し、僕は学校を出た。
そして数十分後、僕はミツルギの前まで来ていた。
放課後すぐに真っ直ぐ来ると、五時までだいぶ時間がある。
かと言って、部活に参加できるのもちょっとだけなので止めた。
なので、初日というのもあり、僕はゲーセンで待つことにしたのだ。
でもゲームはしない、これからチームでも活動する身としては、チームに迷惑がかかりそうな事は控える。
たしか、休んでいられる椅子があったような。
その椅子の場所を思い出そうとしながら歩いていると、前の方に知った顔があった。
「あ、現内くん」
「こんにちは」
ターコイズの鈴木さんも今来たようだった。
「もしかして、今日から参加?瑠歩ちゃんから許可もらったって聞いたよ」
「はい、挨拶もしておこうと思いまして、早く来てみました」
「いいね。でもちょっと早すぎるかな、まだしばらく誰も来ないよ」
そう言うと、鈴木さんは少しキョロキョロした。
「そうだ、ちょっとあそこでお話ししない?」
鈴木さんは近くの自動販売機を指差すと、「おごるからさ」と言って僕を誘導した。
「何がいい?」
「じゃあ、このコーヒーをお願いします」
こういう時、気を使うべきだったのかどうかわからなかった僕は、とりあえず安売りをしていた物を選んだ。
「なに、これが好きなの?大人だね」
少し茶化してコーヒーを買うと、鈴木さんは僕に渡してくれた。
「ありがとうございます」
鈴木さんは僕のとは違うコーヒーを買うと、すぐに開けて一口飲んだ。
それを見て、僕もコーヒーを一口飲む。
顔見知りとはいえ、大人と二人っきりということを意識してしまい、一人どぎまぎしてくる。
「あのさ、変な事をを聞くようなんだけどー…」
「なんですか?」
「瑠歩ちゃんから何か聞かれたりしなかった?」




