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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
62/133

第10話:期待するは春の風06

「あぁ…なんか今日は疲れたわ」


階段を下りながら、関泉さんは肩を落としてそう言った。

まぁ、最初は僕を一方的に問い詰めるだけだったはずなので、栄樹さんの乱入で自分まで矢面に立たされるとは思ってもみなかったのだろう。


関泉さんは、この手の話題を人に聞くわりには、自分が聞かれることに慣れていないところがある。

僕も何回か「じゃあ関泉さんは?」みたいに返したことがあるが、少し言葉を濁した後に「私は無いわ別に…」と冷たく答えるだけだった。


その言葉に嘘は無いのだろう。

僕が知っているのは今日までの一か月と昔話だけだけど、関泉さんが花尾間さん以外と仲良さそうにしているところを見たことがない。

そして、僕が言うのもなんだけど、男っ気があるようにも見えない。


もちろん、僕ら以外にコミュニティがあって、そっちにはそっちの顔があるかもしれない。

でもそれならそれで、もうちょっと自分の話を僕にしてくれてもいい気がする。

だって、隠すってのはあるものだけとは限らない。ないことを隠すことだってある。僕がそうだったから。


だからといって、関泉さんを嫌になることはありえない。

こうして三人で部活終わりに普通の高校生っぽい話ができるのは、関泉さんが僕を二人の中に引き入れてくれたからなのだから。


「そうだね。なんか驚かされる事が多かったよ」


関泉さんの横を歩く花尾間さんが、ゆっくりと同意する。


「栄樹さんがあんなトリッキーな子だとは思わなかったわ。…部室でするような話じゃなかったかも」


そう言うと、関泉さんは足を止めた。

僕らもそれに合わせて立ち止まり、関泉さんの方を見る。


「えーと…その、現内くん」


「ん?」


「ごめんなさいね。あんまり軽はずみに聞くことじゃなかった」


関泉さんは小さくだけど頭を下げて、さきほどの騒動を僕に謝罪した。


「えっ?いや、なんでもないって。結果的に面白かったし」


こんな風に謝られたのは初めてだった。

僕ら三人以外に介入されたのが、思いのほかこたえているのかもしれない。


「私としたことが…せめて部室でなけれ…」


そこまで言って、関泉さんは「あっ」と何かを思い出して顔を上げた。


「ごめん蓮子、部室に忘れ物したわ。ちょっと待っていてくれる?」


「あー…うん、わかった」


関泉さんがふらふらと階段を戻っていく。

なんだか心配になるので三人で戻った方がいいんじゃないかと思ったが、花尾間さんは動こうとしなかった。


「いいの?一緒に行かなくて?」


「う、うん。大丈夫だよ」


そう言って、花尾間さんは僕の方に向きなおってきた。


「げげ…現内くん。あの、涼奈が戻ってくる前に、ちょっと聞いてほしい事があるんだけど」


なにか意を決したものがあるのか、花尾間さんの話し方少し固い。

今までの流れでちょっと恋愛脳になっていた僕は、告白されるんじゃないかと一瞬血迷ってドキリとしてしまった。


「な、なに?」


告白でないにしても、こうまっすぐ目を見つめられると戸惑ってしまう。

だって、僕らは人見知りなところがあるから、意識しないと異性と視線が合うことがなかなか無い。

いったい何を言われるのだろうか?


「えと、まだ先の話なんだけど、いま涼奈の誕生日プレゼントを考えていて…」


「誕生日…」


「うん、小学校の時からお互い送り合っているんだけど、今年はちょっと思いついちゃったことがあって」


「それが一人だと難しいってこと?」


「そうなの。だから現内くんにも手伝ってもらえたらと思って」


おぉ、間接的にとはいえ、まさか女子にプレゼントを渡す日がこようとは。

まったくの未知の領域なのでビビってしまうところがあるが、花尾間さんと用意するっていう点が僕に一歩前へ踏み出す勇気をくれる。

それに、関泉さんに喜んでもらえるのも本望だ。


「いいよ。僕にできることであれば」


「本当?ありがとう」


お礼を言いながら花尾間さんはニコッと僕に笑ってくれた。

その笑顔だけで十分報酬に値している。


「それで、具体的には何を考えているの?」


「うん、実は涼奈をロケテに連れて行ってあげたいなって思っているの」


「ロケテってなんの?」


「理想はランブルギアのアップデートのロケテなんだけど、涼奈が興味ありそうなゲームならとりあえずなんでも」


「なるほど、二人で片っ端から応募して、抽選が当たったヤツをプレゼントするってわけか」


「そう。なんか涼奈、最近ゲームを頑張っているから、なにか力になれないかなって」


「でも時期を合わせるのはかなり難しいんじゃないかな?」


「そうなんだけど、そうなったら別にただのなんでもないプレゼントでいいかなって」


花尾間さんは少し照れているが、そうやって友達を応援することに誇りを持っているように僕は見えた。


この二人はなんてかわいいんだ。

そんな二人の仲を手助けできる僕は、実は幸せなのかもしれない。


「わかった、やってみるよ。むしろ、そのくらいやらせてよ」


「へへ、ありがとう。あっ、涼奈には内緒だからね」


「心得ています」


すると、丁度よく関泉さんが戻ってきた。


「お待たせ…って、二人で何をこそこそ話しているの?」


「ううん、なんでもないよ」


「いこう」と花尾間さんは言って階段を降り始めた。


「…そう」


関泉さんはそう呟いて、花尾間さんの後を追う。


「あっ、そうだ」


花尾間さんは僕に振り返った。


「現内くんの誕生日って、そういえばいつなの?」


「8月22日だけど」


「夏休み中なんだ」


「ふーん、あまり祝ってもらえなさそうね」


そうして、僕の誕生日の話をしながら校舎を出て、僕らは別れた。


一人校庭横の道を歩く僕。

あれ?もしかして、これって、花尾間さん、僕にも何かくれるの?

あんな話の後に誕生日を聞かれたら、僕でなくても期待してしまうのではないか?


今日は、色々と考えさせられる…いや、妄想させられる日になった。


僕の扱いが他の男子と違うかもしれない箕内さん。

いつもと違う様子だった栄樹さん。

僕を頼り、誕生日を聞いてくれた花尾間さん。


ひょっとしたらこの先に、そういう青春も待っているのかもしれない。

僕は今、高校生活を楽しめている気がする。


第10話 -完-

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