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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
61/133

第10話:期待するは春の風05

「「えっ?」」


思ってもみなかった質問に、僕と栄樹さんは声をハモらせた。


「息もぴったりね」


関泉さんが嫌味のように言う。


「なな、なんで私がそんなことを聞かれているんですか?」


攻めに回れたと思った矢先に別の方向から急襲を受けて、栄樹さんは動揺している。


「なんでもなにも、あなた達っていつの間にそんなに仲良くなっていたの?」


「あ…」


ゲーセンで会う時とは違い、僕は人目を気にして部活の時は栄樹さんへの態度を少しだけ変えていた。

それは栄樹さんも同じで、僕を慕ってくれている後輩ではあったが、たまに小馬鹿にしてくる年下女子の一面は出していなかった。

お互い示し合わせてそうしたわけではなかったので、自然とその切り替えができていた。

しかし、今この状況を打破するためにお互い引っ張り出した引き出しは、奇しくもゲーセンにいる時のノリになってしまっていたのだ。


関泉さんからしたら、急に馴れ馴れしくなった二人に違和感を持つのは当然の話。


軽く眉間にしわを寄せ、腕を組み、関泉さんは尋問する気まんまんのご様子だった。

普段はこんな積極的に話を掘り下げてくるタイプではないのだが、どうもこの件は何か引っかかっているみたいだった。


一方、花尾間さんは「そんなに踏み入らなくても…」といった一歩引いたスタンスを取っているつもりのようだが、興味があることを隠し切れていなかった。

ハラハラしつつも気持ち前のめりになっているが、ちょっといつもと違いチャーミングだ。

ただ、関泉さんと並んで質問攻めをしていたら、そうは思っていなかっただろう。


「で?どうなの?」


「いや、そんな、私はいつもと変わっていないと思いますけどー?」


「うん、栄樹さんが現内くんに懐いている節は前からあったけど、今のはちょっと違う。どっちかというと飼いならしている感じ」


「懐い…、飼いなら…」


関泉さんに言われたことを呟きながら、栄樹さんの顔がみるみる赤くなっていく。

僕と目が合うと、サッとそらされてしまった。


「え、え、私…たち…別に…」


まるでその後の言葉を押し戻すように、栄樹さんは両手で口を覆った。

そしてそのまま、何か思いつめたように黙ってしまった。


「えっ?えっ?なに…その反応?」


栄樹さんのそのしおらしい姿に、関泉さんは困惑していた。

僕も同じく困惑ぎみであった。

今日の栄樹さんは少しおかしい。僕への接し方がほんの少しだけいつもと違う。


「はっ」


栄樹さんの意識が現実に戻ってきたようで、僕ら三人の様子を伺い始める。


「…っていいますか、先輩達だって同学年とはいえ仲良すぎませんか?」


「な…え?」


「ま、まさか、現内さんって…どど、どちらかともう付き合っているんですか?」


よほど追い詰められてしまったのか、栄樹さんがとんでもないものを放り込んできた。


「い、いや…そんなこと…」


僕は反射的に否定しようとしたが、考えるよりも先に二人の反応を目で追ってしまう。


びっくりしている花尾間さんと、それ以上に驚いている関泉さん。

もしこのまま黙っていたら、二人が僕のことをどう思っているのか少し計れた気がしたが、僕には恐くてそんなことはできなかった。


「格ゲーしか能が無い僕じゃ、二人に釣り合わないよ」


言ってみて悲しくなったが、これでいいと思うことにする。


「そ、そんなこと…」


それを聞いて、栄樹さんは僕を少し心配するような目をした。

が、またすぐに我に返ると、さらに顔を赤くして「うー」と小さく唸った。


「わ、私、もう帰ります」


栄樹さんは部室から廊下に小走りで出た。


「箕内さんのことは、後で絶対聞きますからね」


最後にそう言い残し、階段を下りる音と共に遠ざかっていった。


あまりの事に、残された僕ら三人はぽかんとしたまま、栄樹さんの足音が消えるまで呆けてしまった。


「どうしちゃったの?あの子?」


廊下を眺めながら、関泉さんがそう言った。


「さぁ…」


「もしかして、現内くんに彼女がいるか聞きたかったんじゃない?」


僕が気が無い返事をすると、花尾間さんが自信なさげにそう言った。


「なんで?」


「なんでって、あるとすればー…」


花尾間さんと関泉さんが顔を見合わせる。


「えっ?」


「ええっ!?」


そして二人は同じ事を考えたのか、同じようなリアクションを取り、同時に僕の方を向いた。


「ど、どうしたの?」


「ううん、なんでもない」


僕の問いに、花尾間さんがすぐに答えた。


「もう、帰りましょうか」


関泉さんがそう言って廊下に出たので、僕と花尾間さんもそれに続いて部室を出る。

僕らが出たのを関泉さんは確認すると、鍵を回し、ドアが開かないことをチェックした。


僕はその様子をぼーと眺めていながら、ある事を考えていた。

花尾間さんにはとぼけた反応をしたけれど、思ってしまった事がある。


僕と箕内さんの関係を聞きに入ってきて、逆に僕と栄樹さんのことを聞かれて顔を赤く染めて、ムキになったように花尾間さんと関泉さんにも同じ事を聞き返して。


ひょっとして栄樹さんは僕のことを…。

ちょっと突然の事なので、僕の自意識過剰である可能性が高そうだが、そう思わずにはいられなかった。

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