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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
60/133

第10話:期待するは春の風04

部活の先輩の手前であるためか、手を前で組んでつつましく立っている栄樹さん。

表情も、面白そうな事に首を突っ込んだというよりは、聞き捨てられないといった感じだった。

ちょっと違う雰囲気に、不思議と僕が悪い事してしまった気にさえなってくる。

いつの間にか部室には僕らだけになっていて、事情聴取を受けている気分だった。

けれど、そんなものは数秒で、僕は事なき終えようと口を動かす。


「え、栄樹さんも気になるの?」


「はい」


最初に受けた印象とは異なり、今度はいつも通り元気な栄樹さんの返事だった。


「なんで?」


そのいつも通りに少し安心したのか、僕はゲーセンで一緒にいる時のように、フランクな感じで返した。


「えっ!?なんでって…」


すると、なぜか栄樹さんが面食らったように言葉を詰まらせた。

あんなに堂々と聞きに来ておいて、理由が言えないってどういうことだろうか?

僕の色恋沙汰を楽しみに来たなら、素直にそう言うはずなのだが。


「なんでそんなこと聞くんですか?」


「いや、普通聞くでしょ」


様子のおかしい栄樹さんをまじまじと観察してみる。

小柄ながら色気のある外見はそのままで、リアクションもいつも通り。

となると何が違う?


そういえば、僕と花尾間さんと関泉さんの三人でいる時に、割って入って来たことは初めてような。

事務的な用事なら何回かあるけど、ただの雑談に入ってきたことは無い気がする。

僕とはゲーセンでよく話すようになっているし、同じ女子部員として花尾間さんや関泉さんとも普通に話している。

となると、チームの事を黙っている一貫なのか、僕に気を使ってなのかはわからないが、意図的にそうしていたことになりそうだ。

なのに、今回入ってきたのは…?


「あの…、なんでそんなにじろじろ見るんですか?」


栄樹さんは少し身を寄せ、いささか嫌そうな顔でそう言った。


「あ、いや、そんなつもりは…」


考え事を始めてしまって途中から見れていなかったのだが、向こうからしたらまばたきもせずに様子見しているように見えていたのかもしれない。


「そ、それにいいじゃないですか別に、たまには先輩達の話に混ざったって」


「それはたしかにそうだけど、そんなに気になる事?箕内さんって誰にでもあんな感じじゃない?」


たしかにここ最近僕は箕内さんにちょっとだけ構ってもらえている自覚はあった。

しかし、箕内さんは女子男子関係なく同じように接している。それが本当だから、色目を使っていると陰口を叩かれるとか、男子が勘違いするとかがないんだと思う。

少なくとも、僕はそう思っていたのだが。


「あー!現内さんそんなこと言うんですかー!そうやって何にも気が付いていないふりして誤魔化そうとしているんですかー?関泉さんどう思います?」


まるで決定的な証拠でも見つけたかのように栄樹さんは騒ぎ始めた。

僕としてはなんの悪気もなかったので、思わずたじろいでしまう。


「そ、そうね…」


急に話を振られて関泉さんも回答に困っていた。

が、軽く咳払いをして冷静に話し始める。


「たしかに、箕内さんって誰にでもフレンドリーに話しかける人だけどー…」


言葉を選んでいるのか、妙に語尾が長い。


「…あぁ、なんていったらいいんだろ?どう思う?」


結局言葉が見つからなかったようで、関泉さんは花尾間さんに話を振った。


「えぇ…、どう思うって、私は特に…」


三人の視線を集め、花尾間さんはおどおどし始めた。


「あー、でもちょっと思ったことはあるよ」


「えっ?なに?」


回答を期待していなかったのか、関泉さんは花尾間さんが心当たりがあることに驚いていた。


「箕内さんって男子ともよく遊んでいるけど、そこに屋良さんも絶対いるよね。でも、現内くんには一人で話しかけに行っているような…気がする」


花尾間さんが話終わると、時間が止まったかのように静寂が訪れた。


「た、たしかに…」


関泉さんも、そう言われて心当たりがあったのか、花尾間さんの意見に賛同した。


「言われてみれば…」


栄樹さんも、入部して短いながらも思い当たる節があるらしい。


そうなって来ると、次に視線を集めるのは必然的に僕になる。


「え、あ、そ…そういわれても…」


えっ?そうなの?マジで?

というのが僕の本音だ。


三人の攻めるような視線を浴びながら狼狽えているが、内心その事実に驚いている。

箕内さんにとって、僕は他の男子と違うの?

あの目もくらむような眩しい笑顔は、みんなに向いているものだと何度も自分に言い聞かせてきたが、もしかして、もしかしたら、そうじゃないってこと?


「ちょっと、何にやけているんですか?」


無意識に上がってしまった口角を、栄樹さんは見逃してくれなかった。


「こうなったら、ちゃんと全部話してくださいね」


こうってなんだ?

なんか、このまま言わなくていい事まで言わされそうな流れを感じる。


そんな恐れを抱いていると、意外な展開が待っていた。


「それも聞くけど、その前に…」


関泉さんが突然、箕内さんの件を保留にする。


「現内くんと栄樹さんについて聞いてもいい?」

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