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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
6/133

第1話:ゲーマーがステータス05

加藤が使っているブルーテがいくら強キャラでも、プレイヤーが使いこなせていなければ無意味である。


開幕の奇襲成功以降、のらりくらりと立ち回る僕のシハラに苛立った加藤は、高性能な突進技を駆使して強引に攻めて来た。

これが僕の狙いだったにも関わらず。


ブルーテの突進技は、低空を高速で飛行しながら突っ込んでくる技である。

シハラの頭より低い高さではあるが、実はこの技は空中攻撃なのだ。


そして、このゲームは全キャラが対空攻撃を持っている。


突進が高速なため、対空攻撃を先読みで出す必要があるが、成功すればカウンターヒットが取れる。


通常ヒットと異なるエフェクトと共に、「カウンター」とアナウンスがされる。

ブルーテは真上に舞い上がり、受け身不能状態で落ちてくる。

そう、狙い通りカウンターが成功したのだ。


リスクはあったが、きっちり大ダメージを与えて、今度はこちらが起き攻めをする。


シハラは二択を持っていないが、多彩な攻撃連携を持っている。

あの手この手と、ガードこそ崩せていないものの、終わりの見えない攻めが続く。


けれど、そこであわててはいけない。

逃れたい一心で無理にジャンプしようとすると、一瞬だけあるジャンプ移行モーションに、シハラの自慢の下段攻撃が突き刺さる。


その下段攻撃がヒットしたことを確認して、コンボを叩き込み、再び起き攻めへ入る。

今度は画面端で。


ブルーテが起き上がった瞬間、画面が暗転して、派手な演出が入った。

加藤が「リバサ」でゲージを50%消費する超必殺技を放ったのだ。


リバサとは、リバーサルの略で、主に起き上がった瞬間に、コマンド入力が成立した瞬間から無敵状態が付加される技を出して、相手の起き攻めを切り返すことを指す。


相手は無敵状態なわけだから、攻撃がかち合った場合、こちらが一方的に負ける。


だから、このリバサはきっちり読んで、躱させてもらった。


ブルーテのゲージが50%以上あることは、さっきのコンボ中に確認した。

加藤の今までの動きから、シハラの連携をさばける腕は無いとみた。

そして何より、僕なんかに攻められ続けているのに我慢ができないはずだと思った。


かすかに「おぉ」と歓声が聞こえたが、この回避の内容はたいしたことはない。


格ゲーは、自分のキャラを動かせるだけではまだまだ。相手キャラの対策を知っていても足りない。

相手プレイヤーの実力・クセ・心理まで攻略しようとして、ようやく本番だ。

その攻略こそ、格ゲーの醍醐味だ。


僕が初心者だと勝手に勘違いをして、ただ自分がやりたいことだけをやっているようでは、せっかくの対戦ゲームが泣いている。


リバサを避けられて無防備になっているブルーテに、全ゲージを使ったフルコンボを決めて、一本目を制す。


ダンッ!!


台を叩く音が響く。典型的なマナー違反。

人と対戦しているのに、相手がまったく見えていない証拠である。


二本目はもう雑なプレイすらさせない。

開幕から全力で攻める。


僕を認められない加藤のガードは、勝手に崩れていく。


何をやっても裏目が出る加藤からの反撃はついに無く、終わってみればパーフェクトで二本目を制し、僕はこの勝負に勝利した。


勝利画面が映し出されると、まばらに拍手が起こった。

僕はそれに照れくさくなり、少し体を丸める。


「ふ、ふざけんな!」


加藤が反対側から大股で現れて、僕に掴みかかってきた。


「なんだよこれ!お前なんかインチキしただろ!」


加藤は目を赤くして、ものすごい怒りをぶつけてくる。


胸倉を掴まれて少し苦しい。

周りからの視線が痛い。

と、冷静に僕は考えていた。


いつもとは違う。

僕は、正々堂々とゲームで勝ったのだ。

これだけは譲れない。


別に何かやり返せるわけではないけれど、僕はただ黙って加藤と視線を合わせ続けた。


「このやろぉ…」


萎縮しない僕に、加藤は焦りと恥じを感じ始めたのだろう。

顔を震わせて、今にも泣くんじゃないかと思うくらい目が潤んでいる。


加藤はそれに気づいたが、目をこするわけにはいかず、天井を仰ぐ。


再び僕の方を向いたが、歯を食いしばって、涙を抑えるので精一杯の様子であった。


僕の胸倉を掴んでいる加藤の手に力が入る。


やばい、殴られる。


そう思った時。


「おい、そこまでだ!」


一人の男子生徒が僕と加藤の間に割って入ってきた。

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