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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
57/133

第10話:期待するは春の風01

オフ会から翌日。

いつも通り授業をスルーして、僕は部活へと向かった。

花尾間さんと教室を出て、関泉さんを迎えに行き、三人で部室へと入って行く。

鞄を下ろすと、僕は二人から離れて部活動の準備を始める。一ヶ月も経てば慣れたもので、一年生と手分けしてさっさと終わらせる。

その間に、他の二年生や三年生が部室にやってきて、時間ピッタリに部活動が開始される。


「では、とりあえず集合」


屋良さんの号令で、各々談笑していた部員が一か所に集まる。


「今日もいつも通り部活を始めますが、その前に一つお知らせがあります」


屋良さんに手招きされ、僕はみんなの前に立った。


「えー、今やエース兼コーチのような存在になった現内くんですが、この度、我が部だけでなくチームでも活躍することになりました」


屋良さんは拍手を促すような言い方をしていたが、起こったのはどよめきだけだった。

僕はなんとなく予想していたが、屋良さんはあれ?といった顔をしている。


「屋良、ちょっと意味がわからん。ちゃんと説明してくれ」


まわりの私語をかき消すように大きめの声でそう言ったのは、三年の渡辺さんだった。

短髪でちょっと強面のこの先輩は、屋良さんが僕を交流戦に出すと言った時に疑問を呈した人。

別にあれ以来、衝突するような事はなかったが、部活動以外の話をしたことも無い。


「えーとですね。現内くんが来てからみんなメキメキと上達しているけれど、まだまだ現内くんに及ばないのが現状。それじゃあ現内くんの練習にならないなと思って俺がチーム入りを勧めたところ、見事受け入れ先を見つけてきました」


本当は僕からチーム入りを打診したはずなのに、屋良さんから提案したかのように話された。

僕への風当たりを考えて、自ら壁になってくれたようだった。

進んでそんなことをしてくれる人に初めて出会った気がする。屋良さんは大人だ。


「それで?わざわざそれを公言する理由は?」


「部活とチームの活動日が重なってしまった日があってな、金曜日なんだけど、その日は現内くんは部活休みになります」


渡辺さんの表情が険しくなる。


「いや、待て待て、そんなのってありなのか?」


「少なくともなしじゃないでしょ?部活のかけ持ちじゃないし」


「そうかもしれねぇけど、金曜に出れないって支障がでているが?」


「それを部長権限で許可したってわけよ。別に現内くんがいないと部活ができないわけじゃないし、それに、チームの方で色々経験してくれれば我が部も恩恵にあやかれると思わない?」


話の中心人物である僕をそっちのけで、二人の先輩達が討論を続ける。


「はいはい、そこまで。続けたいなら部活を始めてからにしない」


どうすることもできずにただ聞いていた部員達を救うため、箕内さんが立ち上がった。


「そうだね、すまん」


「………」


屋良さんはみんなに一言謝ると、すぐさま部活動を開始した。

部員達は席を立つが、渡辺さんだけは動かなかった。


「………」


「不満そうだね」


箕内さんが渡辺さんを気遣うようにそう言った。

何人かは疑問を持つと覚悟してきていたが、やはり実際にそうなると怖い。

何もできずに見守るだけで情けないが、箕内さんがなんとかこの場を収めてくれるのを僕は願った。


「そりゃそうだろ」


「まぁたしかに、かなり異例な事だろうからね」


「………」


「………」


「…なぁ。お前はどう思っているんだ?」


「私?」


「そうだよ。屋良…いや、今回は現内の味方か?」


「私は…、とりあえずやってみればって感じかな」


どうとでも取れそうな箕内さんの回答に、渡辺さんは「そうか」とだけ言って席を立った。


「渡辺には後でまた話をしておくから、現内くんはあんまり気にしないように」


少し間を置いて、屋良さんが僕をフォローしてくれた。


「は、はい」


一時はどうなるかと思ったが、とりあえずは第一関門突破といったところだろうか。

みんなはまだ事態を飲み込めていないような雰囲気だったが、不満があるような感じではなかったと思う。

もう少し具体的な話ができれば、わかってもらえそうだなと僕は思った。

ただ、渡辺さんは時間がかかるだろう。


僕は深呼吸を一つして、部活動へと意識を高める。

今日からはより一層真剣に取り組んだ方がいいに違いない。チーム活動を始めてから手を抜き始めたと思われてはたまらない。

精神的負担が大きい。けれど、屋良さん箕内さんそれに栄樹さんは応援してくれているし、花尾間さんと関泉さんもちゃんと話せば理解してくれるはずと思うと力強く感じる。


一人でやっていた時よりも、ずっと格ゲーにのめり込めている。

僕はこうやって支えられていることを少し実感した。

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