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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
56/133

第9話:ライバルってなんだろう06

二戦目は、前戦が投げ合いだったことをお互いふまえていて、攻撃合戦になった。

僕の攻撃がガードされると、今度は河船さんが攻撃してくるので、僕はそれをガードする。

高確率で攻撃だと思えても、さっきまで投げ合っていた事が頭を過ぎって回避を選択できない。

二往復くらい攻撃をやり合って、お互い距離を取り直して、また攻撃し合う。


この展開で、僕は初めて河船さんが使うキャラのアドバンテージを見た。

相手の前後移動が速いので、僕から相手を捕えることが難しく、相手の手出しに合わせる必要があった。

そのまま突っ込んでくれるなら問題はなかったが、寸前でストップされると動きに合わせて出した僕の攻撃が空振りする。

連続攻撃の一発目のヒット確認を僕はできないので、自動的に二発目が出る。

河船さんはそれに合わせて回避をして、僕に攻撃を当てる。


そうならないように一発目で止めてしまうと、せっかく攻撃がヒットしてもダメージが全然取れない。

相手の体力が少ないとはいえ、小攻撃一発ではダメージが足りないし、消極的な動きではスピードキャラに思うように動かれてしまう。


ネットで弱キャラと言われ、実際に使っている人も少ないキャラはどのゲームにもいる。

そのキャラは理論上本当に弱いわけなのだが、ゲーム外に優位性が存在したりする。

それは、そのキャラとの対戦経験が少ない事。

現に今、僕は相手キャラの動きを知らないのに、相手は僕のキャラの動きを知っている。


このままだと「わからん殺し」をされてしまう。

リスク覚悟で、この状況をなくさなければならない。

僕は小ジャンプ攻撃で無理やり距離を詰める。

これは反応する時間が十分あったので、河船さんにガードされてしまう。

しかし、至近距離の三すくみに持ち込んだ。

そして、ここで相打ち覚悟の小攻撃を選択する。

突然の小ジャンプ攻撃をガードすることに精一杯になっているはずだから、この一回限りは読み合いができていないはず。反射的に取れる行動は、一番無難な投げ。


この賭けに勝った僕は、連続攻撃からの超必殺技で一番高いダメージを取る。

それでも体力は五分になったところだが、河船さんも勝つにはリスクを取らないといけない状態になった。


ここからラストスパートと思った瞬間、今度は河船さんのキャラが小ジャンプで突っ込んできた。

それを僕は回避する。立ち回りの仕切り直しとリバサへのケアを兼ねて連続回避していたところへの小ジャンプだった。

河船さんらしくない動きで一瞬何をされたのかわからなかったが、咄嗟のボタン連打で相手の残り体力を奪い、僕はこの勝負に勝利した。


「あーおしい。回避狩りできてれば勝ってたのに」


誰かがそう言った。


回避狩り?僕は知らない単語を聞いた。

想像するに、タイミング次第で小ジャンプ攻撃は回避を潰せるってこと?

もしその推測が合っていて、河船さんが成功させていたら、僕は負けていたってこと?

そう考えたら少しゾッとした。

一本目も二本目も勝てたのは運がよかったからのようだった。


運も実力の内というが、相手が河船さんということを考えると、ちょっと喜びにくい。


「あの、だいぶ長いことやったので、そろそろ代わります」


僕はそう言って席を立ち、同じキャラを使っていた人に譲った。

そして、そっと河船さんのいた席に目をやると、河船さんも席を立ったところで、またしても目が合った。

泣いていかなったことに安心したが、軽く睨むような目に、少し赤くなっている顔、負けてむくれている表情に僕は何とも言えない気持ちになった。

真剣勝負の末に勝ったのに、なんでこんなことになったのか?


「いい勝負だったよ二人とも。現内くんをあそこまで追い詰めるとは、志弥ちゃんはやっぱりうまいね」


箕内さんの隣に戻ってきた二人を、箕内さんは明るく讃えてくれた。


「一本目のは見事だったよ。現内くんはなんでもやり込んでいるんだね」


「いえ、そんなことはないですよ」


「またまたー」


本当にそんなことないのだが、謙遜としか受け取ってもらえなかった。


「志弥ちゃんは二本目の動きかなりよかった。あのキャラってあんなに戦えたんだね」


「う、うん。勝てなかったけどね」


「そんなこと言わないでよ。次は勝てるかもよ、もう志弥ちゃんしか現内くんの相手にならないみたいだし」


そう励ましながら箕内さんは僕を指差す。その指に誘導されて僕に向いた河船さんの目は、まだ悔しさに満ちているような気がした。

僕も何か言った方が良い気がしたが、何を言ってもダメな気がしてできなかった。


「…現内くんって」


僕が一人でもごもごしていると、河船さんが小さい声で僕の名前を口にした。


「ん?」


箕内さんはよく聞き取れなかったみたいで、聞き返す。


「現内くんって、真和さんのなんなんですか?」


「えっ?なんなんってどういうこと?」


突然で意図もわからない質問に箕内さんも混乱している。

言葉だけ聞いたら「彼氏ですか?」と面白半分で聞いている感じだが、河船さんはいたって真面目に聞いている様子だった。


「部活の後輩…。まぁ、めちゃくちゃ強いからちょっと贔屓目になっているかもしれないけど…」


「それだけですか?」


「そう…だけど」


「………」


「………」


「そうですか」


それっきりこの会話は終わり、そのままオフ会も無事成功に終わった。

箕内さんは始め河船さんの事を気にしていたが、当の河船さんはいつも通りに戻っていたので、次第に箕内さんも気にしないことにしたようだった。

僕はどうも蚊帳の外なので何も言わなかったけれど、どうにも気になってしかたがなかった。


「たしかに、最近現内くんの話をすることが増えていたのは事実だけど、そんなに気になっていたのかなぁ?もしかして、志弥ちゃんって現内くんのこと…嫌い?」


なんてことを箕内さんが言っていたけれど、僕はそうじゃなくて、嫌いは嫌いでも嫉妬では?なんて妄想せずにはいられなかった。

恋愛感情じゃないにしたって、友情的にそういうのもあるっちゃあるんじゃないかと。


本人からは何も聞けていないが、僕と河船さんの関係は一言でライバルと言えない気がした日になった。


第9話 -完-

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