第9話:ライバルってなんだろう04
箕内さんが席に座ると、河船さんが箕内さんの斜め後ろに移動したので、僕もそれについていった。
オフ会が始まり、僕はしばらく対戦を観戦する。
プレイしている人達も対戦内容も穏やかで、ここぞとばかりにゴウコンを謳歌しているようであった。
このゲーム。キャラクター達の姿はとても奇抜だが、持っている技はみんなオーソドックス。ほとんどのキャラがオールラウンダーと言っても過言ではなく、強キャラがいるというより、何人かが弱キャラといった印象である。
なので、どのキャラを選んでも対戦方針は同じになるので、単純な三すくみになりやすい。
そんな中で、好きなキャラを選んで、そのキャラのわずかな個性を光らせる事に比重を置くのがこのゲームを楽しむコツだったりする。
実際、派手なハメやガード崩しが無く、ジリジリとした読み合いを楽しんでいる。
見てると早く対戦したくなってくるな。
ランブルギアのように複雑でスピーディーな格ゲーもいいけど、シンプルにじっくり対戦する格ゲーもまた面白い。
「お互いガーキャン狙いでお見合いするなよ」
「不良なんだから、うんこ座りしているのが正解だろ?」
このオフ会は数回目なのか、みんなはすでに友達のように盛り上がっている。
まだその中に溶け込めているわけではないが、今はここにいられるだけでも楽しかった。
ふと隣の河船を見ている。
無表情というわけではないが、笑っているわけでもなく直立してゲーム画面を見ている。
それでも普通に受け入れられているっぽかったので、そういうキャラとしてここでは成立しているのかもしれない。
よくわからないけれど、僕はちょっとすごい事だなと思った。
「だー!ダメだったか」
対戦が終わり、箕内さんは負けてしまったようだ。
「絶対今日のためだけに練習してきてやがる。せこい男だよ」
悪態をつきながらも、まわりを盛り上げている。
「よし、じゃあ現内くん。私の仇を取っておくれ」
「えっ?いいんですか?」
そう箕内さんに聞くと、まわりから「おう、やったれ」などと僕が乱入することを勧めてくれる。
「では、よろしくお願いします」
対戦相手に挨拶して、今度は僕が席に着いた。椅子がほのかに暖かいのを感じてちょっと照れる。
そして、僕は長身の女性キャラを選んだ。
「おっ?なんだい現内くん。こういうのが好みかい?」
箕内さんはからかったつもりだろうが、本当にただの好みだったりする。
「そんなところです」とか「そんなんじゃないですよ」とかリアクションを考えたが、実行できずに「あ、いや…」としか言えなかった。
対戦が始まると、相手はいったん距離を取って飛び道具を多用してきた。
たぶん、僕を相当強い人間として箕内さんは語ったに違いない。
このゲームは技と技の相殺が無いので、先に出した者勝ちな要素があるのだが、それすら凌駕してくると思っているのだろうか?
僕は飛び道具をギリギリの所まで引き付けてから回避して間合いを詰めていく。
そして、相手の真ん前まで接近できた。
僕の小攻撃が届く距離だが、一瞬相手の出の方が早いと判断した僕は、念のため連続で回避行動を取る。
すると、相手は小攻撃を出していて、ヒットを確信していたのか、ボタンを連弾していて「空キャンセル」で連続攻撃の締めまで出し切ってしまった。
最後の攻撃は一番ダメージが大きく、もちろん隙も大きい。
ちなみに「空キャンセル」とは、攻撃が相手にヒットしていないのに、その攻撃をキャンセルして次の攻撃を出すこと。
普通は相手にヒットしていないとキャンセルはできないのだが、ゲームのシステムや、特定の技の特徴として存在する。
相手の無防備な背後を取った僕は、さきほど相手がはすした連続攻撃を決めて体力を奪う。
吹き飛んでダウンした相手を追いかけ、相手の起き上がり下段攻撃を小ジャンプで躱して今度は空中コンボを叩き込む。
この流れにちょっと歓声がわいた。
「現内くん攻めるねー」
「画面ちゃんと見ないとパーフェクトくらっちゃうよ」
飛び入りの僕がいきなりガン攻めしているのも笑いに変え、僕の反対側では次の行動をどうするかで盛り上がっていた。
僕が勝っているのに、あっちの方が楽しそうである。
「せっかくだからMAX超必で終わらせてよ」
箕内さんにリクエストされて、微妙に相手の体力を調節しながら機会を伺う。
そんなことをしていると、相手の投げからのぶっぱなしをくらい、「狙っているのわかっているぞ」と笑い声と共にヤジが飛んでくる。
「あはは」
真剣勝負もいいけど、こういう気軽な対戦もいい。
どうしたって格ゲーは楽しいな。
僕の口元が緩んでくるのを感じる。本当は僕も何か言ってみたいけど、そこまではまだ至れない。
最後は相手が豪快に対空技をはずし、僕のMAX超必をくらって勝負がついた。
「いやー強いわ。箕内さんの言っていた通り」
「でしょー」
「よっしゃ、次は俺にやらせろ」
すぐに向こうから乱入が入ってくる。
「あの、僕ってどうしたらいいですか?」
仮に勝ち続けたとして、このまま居座り続けていいのか箕内さんに確認する。
「んー、そうねぇ。とりあえず全員と対戦するまでは座っていてもいいんじゃない?」
こうして、次は誰が僕を倒せるかで盛り上がり、一人ずつ乱入してくる。
それを僕が一人ずつ倒していく。
あまり面白いプレイができているわけではないので、僕がずっとやっていることに気が引けてきたが。向こうは向こうで白熱しているので中断もしにくかった。
「これで全員現内くんに負けちゃった?」
「いやいや、我々のエースがまだ残っていますよ」
そんな話が聞こえてくると、さきほどまで後ろで対戦を見ていた河船が動き出した。




