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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
52/133

第9話:ライバルってなんだろう02

屋良さんの家へ行き、チーム入りを相談してから一日が経った。

火曜日の最後の授業中、僕は放課後の事に思いをはせていた。


はぁ、ちゃんとできるかな?

僕の期待と不安は2:8くらいになっていた。


昨日の夜。

屋良さんと箕内さんが一緒に行ってくれる格ゲーのイベントとはいえ、知らない人達の中へ"行きたい"と思うようになった自分に、「変わったものだな」なんて独り言を言って、わくわくしながら頭の中で当日のシミュレーションをした。

最初は上々、先輩二人の手伝いもあり、上手に挨拶ができてみんなの輪の中へ入っていく。

しかし、いざオフ会が始まった後のことをなんにも想像できなかった。

それはもう思考停止したかのように真っ白になる。


冷静に考えてみれば、チーム活動とは違い自動的に人と話す機会が無かった。

向こうから話しかけてくれることがあるかもしれないが、そこから話を繋げられないと途切れてしまう。

もちろん、僕から話しかけるのはまだちょっとハードルが高い。

僕が一人になっちゃって屋良さんや箕内さんに心配されるのもつらい、っていうか恥ずかしい。可能な限り二人の邪魔はしたくない。


家に帰った僕は、せめてゴウコンの事だけでもしゃべれるようになろうとゲームをしたり動画を見たりして復習と予習に燃えた。


そして今日、当然寝不足になった僕は午前中の授業になんとか耐え、昼休みに仮眠をとってなんとか持ち直している。

そこから不安を抱えつつも、こうなったらこう、そうなったらそう、と念入りにイメージトレーニングにいそしんで今に至っている。


もうすぐ授業が終わる。そしたら本番だ。

僕の心臓は、感じるプレッシャーを跳ね除けようと一生懸命働いていてくれている。


まずは、屋良さんと箕内さんと一緒に学校を出て…。

学校を出て?

あれ?


オフ会の事ばかりに気を取られて、屋良さん達と合流する事を忘れていたことに気が付いた。

二人の連絡先を知らない。故にどこに集合するのか確認できない。


部活の先輩の連絡先って、普通聞いておくもの?

あー!こういうところの常識も無いのに、何がオフ会へ行きたいだ。おこがましい。

ちょっと人に慣れただけで、結局僕はまだまだなのかもしれない。

自分の不甲斐なさにしょんぼりしていると、チャイムが鳴って放課後になった。


どうする?僕にできることがあるとすれば…。

クラスメイト達は席を立って少しずつ教室からいなくなっていく。

僕は席に座ったまま、迎えが来るのを願った。


あぁ、この世界に来た初日とまったく同じだ。

やっぱり成長してない。僕は思わずため息をついてしまった。


「現内くーん!お迎えに来たよー!」


机の模様を眺めていると、聞き馴染みのある元気な声が聞こえてきた。


期待通り来てくれたことがうれしくて顔を上げる。

入口で手を振っている箕内さんと、クラスメイトの不思議そうな視線がそこにはあった。


あ、この微妙な雰囲気も初日と同じだ。

冷や汗をかくような思いをした僕は小さく会釈をして、急いで帰る支度を始める。

が、その甲斐空しく箕内さんは僕の席までやってきて、みんなの注目を集めていた。


「来るの早すぎた?いやー楽しみすぎてついね。というわけで早く行こうよ」


異性の先輩が教室に迎えに来てくれて一緒に下校するなんて夢のようなシチュエーションなんだけど、いざそうなってみると全然そんなことはなかった。

とにかく照れる。みんながどう思って見ているのかが気になってしょうがない。

しかし、ちょっと優越感があったのも事実。そこは前回と違うところ。


「あ、蓮子ちゃん。そういえば現内くんと同じクラスだったっけ。また借りていくね」


そう言って教室を出ていく箕内さんにつれられて僕は、心の中で頭を抱えた。

何人かのクラスメイトとも普通に話ができるようになっているが、こと女子関連でいじられるとなると対応しきれないと言わざるおえない。

そんな僕に気付くことなく箕内さんはどんどん先へ歩いて行く。


「あの、箕内さん」


明日の事を考えてもしょうがないとも思えたので、これからの事に切り替える。


「ん?どうしたの?」


「屋良さんとはどこで合流するん…」


「屋良は今日はいないよ」


狙いすましたかのように僕の質問に答えを被せてきた。階段の踊り場に下りて、ちらっと僕を見て箕内さんは笑う。

色っぽい目つきと軽く翻ったスカートがちょっぴり幻想的で、一瞬見惚れてしまう。


「え?体調が悪化したとかですか?」


「えーと、そういうことにした。現内くんが考えていた通り元々屋良と行く予定だったんだけどね、あいつゴウコンのことはそんなに知らないから、そんだったら現内くんの方が適任かなって」


「そういうことにしたって、三人で行けばいいじゃないですか?」


「人数は決まっているからそうはいかないのよ」


相変わらず僕の三歩前を歩き、表情は見えないが、やれやらといったポーズを箕内さんはとった。


「でも大丈夫、ちゃんと現内くんを構ってくれる人がいるからさ」


まぁ、そういってもらえるのは素直に頼もしい。

それに、ゲーセンまで箕内さんと二人っきりというのもちょっとドキドキする。

昨日とは違い、カジュアルに放課後の寄り道だ。ま…まるでデートみたいじゃないか?

学校から歩いて行ける所にゲーセンは無いので、バスか電車に乗ることになる。ということは、席の空き状況次第では隣に座ることもありえる。


屋良さんにはなんと言ってこうなったのかは知らないが、なんとなく屋良さんに感謝の気持ちを送りたくなった。

ついさっきまで押し潰されていた心は、今は軽やかに弾んでいる。

僕ってこんなに単純な男だっただろうか?

アホ臭くもあったが、少し笑えた。




それから僕らは電車に30分程乗り、少し遠くのゲーセンにやって来た。

その間、箕内さんのレトロゲー愛をたっぷり聞かされたわけなのだが、こちらもゲームの事なら大好物なので最高に楽しい車内になりました。もうちょっと乗っていたかったくらいです。

残念ながら隣に座る事はなかったが、混んでいて比較的距離が近かったので思い出としてしまっておく。


ゲーセンは降りた駅のほぼ目の前にあり、外観を眺めながら改札を出た。

すると、箕内さんが誰かに声をかけた。


「あっ!志弥(しや)ちゃん、ちょうどじゃーん」


手を振ってこちらの存在をアピールする箕内さんの視線の先を見てみると、なんと見覚えのある姿がそこにあった。


「…現内(げんない)巴伊都(はいと)


一か月ぶりに会う僕に対して笑顔ではなく何やら厳しい顔を向けてきたのは、亀里高校の河船(かせん)志弥(しや)さんだった。

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