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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
44/133

第8話:ダブルアクティビティ01

五時になり、ゲーセンには栄樹さんのお兄さんのチームメイトが集合した。

ほぼ社会人で構成されているチームだけあって、落ち着いた雰囲気と強者の風格が感じられた。


ちなみに、栄樹さんとお兄さんは五歳違いで、お兄さんは高校を卒業して契約社員をやっているらしい。

チームで活動している事を考えるに、プロを目指しているのかもしれない。


僕はチーム全員を目の前に、あの噂の現内と嫌味たっぷりに紹介され、いっちょ社会勉強をさせてやれという名目で参加することになった。

その間、不敵な笑いをいくつも感じ、まるで世間知らずの学生が迷い込んで来てしまったような感じだった。


しかし、それはただの気のせいだった。

僕の紹介が終わると、半分以上の人に取り囲まれて、歓迎ムードになった。


「おー、君が現内くんか、よろしくね」


「対戦するの楽しみにしているよ」


と次々に声をかけてくれる。

この気さくな感じはうれしかったのだが、僕はいったいどう思われているのか?という疑問がどんどん膨れ上がっていく。

睨まれたり、探られたり、もてはやされたり、ちょっと居た堪れない。


けれど、その気持ちも対戦が始まってしまえばすぐになくなった。

明るい雰囲気はそのままだったけれど、みんな真剣な顔つきで画面に集中している。


やり方はシンプルだった。

同じ人と数回対戦して、その人と結果を振り返り、次が来るまで他の人の対戦を観る。この繰り返し。


「最初は僕とやろうか」


そう鈴木さんが誘ってくれて、僕はすぐに対戦をすることになった。

隣にいた栄樹さんが「頑張ってください」とエールを送ってくれている。


ここはきっと、本気で強くなろうとしている人達の集まりだ。

僕も最初から全力でいく。

そう決めていた僕は、考えることなくシハラを選択した。


チームで活動している大人の実力はいかに?


鈴木さんが選択したのは、「ミカガ」というスタンダードキャラ。

飛び道具・対空技・突進技と一通り使いやすい技を持っているキャラで、初心者から上級者まで使っている人が多いキャラだ。

その分、相手をする機会が多くなるため、大抵の人が対戦に慣れている。使い手の実力が試される。


いざ、対戦が始まる。

お互い距離を取ると、ミカガの飛び道具がさっそく飛んできた。

遠くから攻撃を仕掛けて相手の出方を伺えるのが、飛び道具持ちの利点である。


僕のシハラは遠距離が苦手な方なので、先行を許す覚悟で前で出る。


すると、ここまで定石と言わんばかりにミカガが距離を詰め、シハラが攻められ始める。

小攻撃連打からのデュレイ下段攻撃、突進技の先端を当てての優位取り。

まだシハラのガードを崩せてはいないが、隙がなく緩急が付いた攻めが続く。


ここで慌てると、うっかり攻撃をくらってしまう。

そう思った時には一手遅く、「当て投げ」をくらってしまう。


当て投げとは、相手にガードをさせて、ガード硬直が消えたところを投げるテクニック。

見切られると手痛い反撃を受けるものの、相手もリスクを負った行動を強いられる。

どこかで投げを回避しないと、そのまま負けてしまう。


これは一発勝負ではないので、僕は相手のやり方を探る意味も込めて、暴れることなく相手の攻めにつき合った。

そして、攻める時も単調にならないように工夫を凝らす。


そして、5回対戦した結果、4勝1敗で僕が勝ち越した。


対戦台を次の人に譲り、僕は鈴木さんと対面する。


「いやー、本当に強いね。まだ余力もあったようだし」


鈴木さんは頭を掻きながらそう評価してくれた。


「ありがとうございます」


「どうだった俺のミカガは?勝った上で年上に意見するのは難しいかもしれないけど、ちゃんと頼むよ」


「は、はい」


僕は少し間を置いて唾を飲んだ。

それから、言葉を慎重に選びながら、ゆっくり話し始める。


「シハラの特徴や弱点をちゃんとわかっていて、すごく戦いにくかったです」


「ほうほう」


「ですが、ちょっと投げが多かった印象です。それが投げ読みを誘っているならよかったのですが、ダメージソースで終わっていたのが弱かったかなと思います。投げられ続けるとそれなりにプレシャーになりますがダメージが低いですし、起き攻めができますが間が空いてしまうので冷静になれる時間もあります」


「なるほどね」


「固めがかなりうまかったので、もう少し大ダメージを狙ってもいいと思います。安定してじりじり削るのも作戦の内ですが、一発があるキャラ相手には流れを持っていかれやすい気がします」


「そうかもな。俺の方が攻めている気がしたけど、最終的に負けているし」


「僕の反省店としては、投げや中段の出し所が良くなかったかなと思います。気をつけてはいるのですが、どうしてもわかりやすいテンポができてしまいます」


「はは、俺が言うまでもなかったね。最後に僕が勝てたのは、崩しが通らなかったからって感じだったな」


「はい」


鈴木さんはうんうんと頷いている。


「いいね現内くん。本当に今まで一人でやってきていたの?よくここまで研究してきたね」


「そうでしたか?ありがとうございます」


大人に、それもゲームで褒められる時が来るなんて思ってもみなかった。

こそばゆく、ちょっと気持ちが良い。


観戦していてくれていた人達も、強かったと褒めてくれた。


「となれば、次はあの人とだな」


鈴木さんは腕を組んだまま、視線だけで次の相手を指す。

その先にいたのは、栄樹さんのお兄さんだった。


「たしかに、さっきとは全然違っていたな。よし、次は俺が相手になってやる」


「はい、よろしくお願いします」


早くも僕の本気を見てもらう時が来た。

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