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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
42/133

第7話:高みを目指す者達05

栄樹さんに兄と紹介された男は、僕を不満気な顔で見つめる。


「それで?なんでわざわざ俺と来ようとしたんだ?まさか、こいつと関係あるのか?」


お兄さんは僕を睨んだまま、栄樹さんに話しかけた。


「…ま、まぁ、そうともいえるかな」


栄樹さんは、珍しく歯切れの悪い返事をした。


「なっ!?」


「あのさ、その前に俺も紹介してくれない?」


またいざこざを始めようとした瞬間、もう一人の男が割って入った。


「あぁ、ごめんなさい。この人は鈴木さん。お兄ちゃんの友達」


「あれ?俺だけ苗字だけ?…そっか、兄妹って苗字一緒だからか」


のほほんとした不思議な男だなと僕は思った。

でも、良い人そうで、そうなるとお兄さんも悪い人ではないのかもしれない。


「よろしく、それで君は?」


「はい、現内巴伊都と言います。虎森高校の格ゲー部です」


「あー、君が現内くんか。なるほどね」


鈴木さんはニヤッとお兄さんを見ると、お兄さんは嫌そうに見返した。


「それで、瑠歩ちゃんと現内くんは今日なんでここへ来たの?」


「そう、それだ」


栄樹さんはため息を一つついた。

そして、わかったわかったと両手を広げると、自分の目的を話し始めた。


「今日ここに現内さんに来てもらったのは、お兄ちゃんのチームに現内さんを紹介するためだったの」


「えっ?チーム?」


「はっ!?こいつを?」


「へぇ」


三者三様のリアクションがそこにはあった。


「おい、こいつはお前と同じ格ゲー部だろ?そんなの許されるのか?」


「わかんないけど、ダメなんて聞いたことないよ」


「…っ、で?お前はなんでうちに入りたいんだよ?」


「ぼ、僕?」


あまりに突然な話に、僕はついていけてなかった。


「待って、現内さんにも今初めて話したの」


「じゃあ、お前自らってこと?」


「えっ!?ま、まぁそういうことになるかな」


「どうしてだ?」


「ど、どうしてって…」


栄樹さんは僕をチラッとだけみた。

なんとなくだけど、照れくさそうにしていた気がする。


「その、現内さん、強い人と対戦したがっていたから、ここならいいかなって…」


「強い人と対戦がしたいだ?」


お兄さんは鼻で笑った。


「まぁたしかに少しは強かったが、さっき俺が圧勝したばかりだよ。後輩の女にそんなこと言って調子に乗っているようじゃ、ぬるいんじゃないか?」


そんなつもりはなかったが、少し胸がズキリとした。

僕はさっき、虎森高校が強いということを一瞬でも否定しかけた。

強いのは、あくまで僕だけという自覚があったんだ。

事実かもしれないけど、あの時僕が取るべき行動はなんだったのだろうか?

わからないけれど、たしかに僕は少し調子を崩していたのかもしれない。


「えっ!?お兄ちゃん現内さんに勝てたの!?」


「勝てたのってなんだよ。お前は俺が勝てないと思っていたのか?」


そのやりとりでようやく気が付いた。

さっき対戦した人は、お兄さんだったんだ。

ということは、あれがチームに所属する人の実力。


「そんなことはないけど…」


「正直に言えば一本目をとられてしまったが、あの程度のミバコゴだったらうじゃうじゃいるぞ」


ミバコゴとは、僕がさっきまで使っていたキャラのこと。


「ん?ミバコゴ?」


栄樹さんはきょとんとした後、僕の方を向いた。

僕はなんとなく、合っているという意味で頷いた。


「じゃあお兄ちゃん。まだわからないわよ」


少し得意げに栄樹さんは言った。


「なんだよ?」


「現内さんの持ちキャラはシハラだから、上があるってこと」


「なに!?それは本当か?」


お兄さんは僕にすごんでくる。


「は、はい。上かどうかはわかりませんが、一応持ちキャラはシハラでやっています」


僕はそう答えると、お兄さんは信じられんといった様子だった。


「だから、そのシハラと対戦してから、現内さんをチームに入れるか考えてみてよ」


栄樹さんの提案に、お兄さんは黙った。

そして、僕にこう質問した。


「そもそも、お前は何を考えているんだ?今初めて聞いたんだろこの話?」


そうだ。今のところ僕の意思がまだ登場していない。

しかも、まだ何も考えれていない。


「現内さん、急な話になってしまってごめんなさい。でも、悪い話じゃないと思うんですけど…」


ここまですべて予定外の流れだったのだろう。栄樹さんは申し訳なさそうにしている。


「ぼ、僕は…」


栄樹さん、お兄さん、鈴木さんが、僕の言葉を待っている。


僕はどうすればいい?何が最善か?

仮にここでチームに入れてもらえたとしよう。じゃあ部活はどうなる?辞めるのか?両立するのか?

仮にチームに入れなかったとして、じゃあどうすればさっきみたいな対戦ができる?

一体、どうしたらいいんだ?


ただ、こうやって自分の意思を問われている中、自分は今、チームの世界に興味を持ったことに気が付いた。

今まで自分には関係の無い世界だったが、今はこうして自分の目の前に存在している。

そこへ、栄樹さんが僕の手を引いてくれている。


あぁ、僕はいつだって他人から手助けしてもらえないと何もできない人間なんだな。

だからこそ、それを自覚しているからこそ、その助けを無駄にするわけにはいかない。


「チームに興味があります」


僕がそう言うと、栄樹さんはほっと胸を撫でおろしていた。

一方で、お兄さんは「だから?」といった強固な姿勢を崩さない。


「でも、部活にも入っているので、正直なところどうしたらいいのかわからないです。だから」


この世界でやり直すと心に決めたことを思い出す。

やり直すとは、今までの失敗を反省して修正すること。

その失敗とは、何も考えずに妥協し続けたこと。


本来なら、部活かチームのどちらかを選ばなければいけないのだろう。

しかし、もしかしたら両方取れる可能性があるかもしれない。

それは、みんなの好意に甘える形になるかもしれない。

今回は、それを良しとしようと思う。だって、まだ僕は人の助けがないと何もできないのだから。


"恩を返せないからもらわない"を止めて、"恩をもらってから返すことを考える"ことにしよう。


まずは、後先考えずに目の前のチャンスにしがみつく。

それが僕のやり直し方だ。


「僕がチームに入れる人間かだけでも試してくれませんか?」


僕はそう答えた。

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