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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
40/133

第7話:高みを目指す者達03

意気揚々と席に座り、コインを投入する。

そして、スタートボタンを押すと、画面に乱入の演出が入った。


この世界に来て一ヶ月ちょい、そこまで長い時間が経ったわけではないけれど、なんだか懐かしく感じる。

ゲームによってはコインが入った事を知らせてくれないから、乱入された時にビックリすることがあるんだよね。


さーて、何を使おうかな?

ここはやっぱり長年の相棒であるシハラかな?


と思ったところで、あの話を思い出す。


ゲーセンや学校のフリー対戦で強すぎると、場が白けてしまうので、強い人は来ない。


僕は、強い人に入るのだろうか?

いくら僕でも、部活でコーチまがいの事をしたり、交流戦で優勝すれば、少しは強いという自覚を持つ。

が、ゲーセンの場合はどうなんだろうか?


最初の一回は、様子見ということで…。

僕はこの世界に来るちょっと前に練習を始めたキャラを選択した。


トリッキーなキャラだから、ぜんぜん練習不足だけど、どうなることやら。

相手は、僕の第二の持ちキャラのテンカー。相性は五分五分といったところ。


いざっ。

僕は一気に集中力を高めた。


…。

……。

………・


最初の一戦から一時間くらいは経っただろうか。

対戦の合間に、どよめきが聞こえてくるようになった。


僕はちらりと画面左上を見る。

そこには、13連勝と表示されていた。


うぅ…、どうしよう。

ここのゲーセンの人達はうまい方だった。いい勝負だった人も何人かいる。

だから、僕が一人強すぎるわけではないと思うんだけど、あの話が頭を過ぎる。

7連勝を超えたあたりから、僕は素直に喜べなくなっていた。


ここはいったん負けといた方がいいかな?

次の対戦相手はけっこう強かったし、不自然にはならないかも…。


そんなことを考えながら、相手の乱入を待つ。

しかし、何があったのか、なかなか乱入して来ない。


なに?なに?

やっぱり勝ちすぎたの?


僕はどんどん不安になってきた。

通っているゲーセンではないとはいえ、大好きなゲーセンから追い出されるのはつらすぎる。


怖い気持ちを抑えながら、反対側の様子をゆっくり確認しようとした。


すると、乱入するはずだった人が席を立ち上がり、筺体の横になった。

下を見ると、違う足が見える。別の人が座っているようだ。


なんだ?知り合いに対戦を譲ったってこと?


困った。

実力が未知数の相手に手を抜きたくない。

もし強かったら、ちゃんと対戦できなかったことを後悔する。

でも、もしこれも勝ってしまったら…。


そうこう悩んでいる内に、相手がキャラクターを選択して、対戦が始まろうとしている。


えーい、こうなれば。

勝ってもよし、負けてもよし。

結局僕は真面目に対戦することにした。


相手が選んだキャラは「ジョウセイキクウ」。

ランブルギアで一番扱いづらいキャラとされている。

地上ダッシュが無い代わりに、超姿勢が低いスライディングをもっている。

空中ダッシュが無い代わりに、空中で停止できる。

ゲージが溜まるのが早い代わりに、普通の必殺技でゲージを消費する。

開発者自身も実験キャラと公言したとかしてないとか。


13連勝している相手に使ってくるとは、自信ありということだろうか?


対戦が始まると、お互い慎重な立ち回りから入った。

僕は無理をせずに、チャンスを伺う。

伺って…。


ん…?おっ?…これは?


「強いぞ、この人」


思わずつぶやいてしまった。


扱いづらく使用人口が少ないキャラだけど、僕は何十回と相手をしてきた。

だけど、使い方がその内のどれにも当てはまらない。

僕はてっきり、そのピーキーな性能から荒らし戦法だと思い込んでいた。


だけど。


「しまった!」


見慣れない動きに戸惑い、つい勝負を焦ってしまった僕を躱し、相手は見事に僕から初弾を取った。


うまい。

特に空中停止のタイミングが絶妙だ。相当研究している。


などと息つく暇もなく、連続でガードくずしをしかけてくる。

僕はヤマ勘をはった根性ガードでなんとか距離を離す。


空中で自由にさせたらダメだ。

そう思った僕は、ジャンプ攻撃での牽制を強める。


それにいち早く気が付いた相手は、僕のジャンプに合わせてスライディングを出して裏に回ってくる。


「っやる!」


僕はとっさに空中技を出して、遠くへ飛んでいく。

他のキャラだったら追いつかれるが、このキャラに限っては攻撃が届かない。


そうやって隙をついてくるなら、これならどうだ?

僕はかなり離れた距離から真っ直ぐダッシュする。

相手の一番長い攻撃が届く間合いに入ってもノーガードでダッシュを続ける。

相手の空中ダッシュ読みを読んでの攻め。

読みがはずれてもあまりダメージにはならないので、思い切ってやってみる。実はこの戦法けっこう好きだったりする。


不意に距離を詰められた相手は、ジャンプして逃げようとした。

僕はそれを追いかけて空中投げを決める。


そして、そこから完全二択の起き攻め。


しかし、それをガードされ再びふりだしに戻る。


一瞬も気を緩められない。

無意識にボタンを強く叩く。

だけど自分が今のってきているのがわかる。

13連戦したかいがあって操作に迷いがなくなっている。

というか、操作ミスを気にしている暇がない。

相手をどうさばくかに思考を使い果たしている。


ここは無理できない。


それは迂闊だ。


ここはチャンス。


これならどうだ。


あの手この手と知っている限り、思い付く限りの攻めを展開する。

相手も、少し慎重すぎる気がするが、その分固い守りで均衡を崩させない。


一本目は、お互い体力を三割以上残した状態でタイムアウトを迎えた。

勝ったのは、ギリギリの差で僕だった。

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