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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
39/133

第7話:高みを目指す者達02

「へっ?」


栄樹さんから変な声が出た。

そんなに突飛なことを言ったつもりはなかったけれど、この際気にしないことにする。


「はえー、交流戦で優勝しただけじゃ飽き足らないってことですかー?」


「そんなんじゃないけど」


「ちょっと前まで一人孤独にやっていたのに、どうしたんですか急に?」


おそらく無自覚に放たれたであろうトゲが、僕の胸に刺さった。

僕の引きこもり印象は、まだ消えていなかったようだ。

他の人からしたら、突然外と交流を持とうとしているのだから意外だったかもしれない。


「…今まで一人でやってきたからだよ」


照れ隠しで手短に説明したつもりが、かえってキザったらしくなってしまった。


「ほぉー」


僕の心中を察したのか、栄樹さんは勝ち誇ったように二ヤリと笑い、こちらの表情をじっくり見てくる。

人に小馬鹿にされるのは慣れているつもりだったが、これには少し腹が立った。


でも、それだけ対等な信頼関係を築けているとも言える。

僕は彼女にとってからかっても大丈夫な先輩、彼女は僕にとってたまに怒っても大丈夫な後輩。

彼女は、基本的には部活の先輩として僕を立ててくれている。

だから僕も、可能な限りちゃんと先輩でありたいと思うようになった。

まだ何もできていないけれど、こうやって後輩に慕われているのは素直にうれしかったりする。


とまぁ、そんな考えは少し前に通り過ぎているので、ここは無言無表情で回答して、イラっときたぞアピールをする。


「現内さんって、やっぱり面白いですねー」


優位に立てたことに満足したようで、その後は「そうだなー」と僕の質問に答えようとしてくれている。


僕はそれを黙って待つのだが、視線だけが落ち着かなかった。

栄樹さん、今日もそこそこ大胆な格好をしている。

薄いブラウスにショートパンツ。暖かそうな大きめの上着を着ているが、それが華奢な感じや肌の露出を際立たせていて、二度見三度見と目が回る。


「ちょっとややこしくなるかもしれないけど、悪くないかも…」


僕が良心と下心を戦わせている間に、栄樹は小さくそうつぶやいた。

そして、一瞬下を向いた後、僕に真っ直ぐ向き直った。


「どうなるかわかりませんけど、あの人達と対戦するための入口になら、連れて行ってあげられるかもしれませんよ?」


「栄樹さんが?」


ちょっと驚いた。まさか僕のぼやきを解決する道を知っているとは考えもしなかった。


「はい」


栄樹さんは元気に答えた。

さっきまでのじゃれてくる感じではなく、頼ってくれといった感じだった。


「それはいったいどういうことか、聞いてもいい?」


「あ、期待させておいて悪いんですけど、一応確認させてください」


そう言って栄樹さんは静かな階段の方へ消えていった。

電話でもしにいったのか、僕は何もできずただ帰りを待った。


二分くらいでパタパタと栄樹さんが戻ってきた。


「現内さんって、五時にミツルギっていうゲーセンに来れますか?」


「たしか、ここから三駅離れた所のゲーセンだっけ?」


「そうです。そこで…、あっ、それは後のお楽しみってことで、どうですか?」


何やらサプライズ要素があるみたいだ。

でもまぁ、ゲーセンに集合というあたり、ゲーム関連であることは確実だろう。


「大丈夫だけど、そのゲーセンで五時まで時間潰しててもいい?」


このゲーセンにいても対戦できないし、一回家に帰ってもそんなにゆっくりできないので、それならば普段行かないゲーセンに居座った方が面白いかもしれないと思った。


「あ、えーと、大丈夫だと思いますけどー」


なんだか栄樹さんの歯切れが悪い。

まるで何か準備が必要な感じだ。お楽しみと関係があるのだろうか?


「不都合なら、ちゃんと五時にいくよ?」


「うーん…」


栄樹さんは腕を組んで考える。


「現内さんを暇にさせるのも悪いですし、大丈夫です。そのままミツルギに行きましょう」


「そう?」


「ただ、ミツルギに着いたら私は一回家に帰りますね」


話は決まり、僕らはミツルギというゲーセンへ向かった。




ミツルギは、僕の最寄駅から三駅離れていて、さらに10分以上歩いた所にある。

大通りに面していて車で来やすそうだった。


中は少し薄暗い雰囲気で大人びている。

そのせいか、学生の姿は少なく、大人が多い印象だった。


「じゃあ、私は帰りますね」


「うん、また」


栄樹さんはゲーセンを一眺めすると、ゲーセンを出て行った。


さて、どうしようかな?


「とりあえず、ランブルギアの所へ行ってみるか」


僕は案内を見て、二階のビデオゲームコーナーへ向かう。

このゲーセンも、最寄のゲーセンに負けないくらい盛り上がっていた。


すごい人だなここも。

そう思いながら、なんて名前のチームがやっているのか見に行ってみる。


えーと、どこに書いてあるんだろ?…あ、あった。えーと。


「あっ」


ここのゲーセン、今日は五時までフリー対戦だ。

やった。これなら遊んでいられる。

僕は小さなガッツポーズを思わずとってしまった。


五時までってことは、栄樹さんとの約束の時間。

もしかして、その時間から貸し切っているチームと関係があるのかな?


チーム名は、ターコイズ。

宝石の名前だっけ?おしゃれだな。


そんなことよりも。

僕はさっそくランブルギアの列に並び、胸を高鳴らせていた。

ひさしぶりのゲーセン。少し緊張すらしていて、早くやりたくてうずうずする。


ちなみに、元の世界では対戦台のどちらかに並ぶので、列が二つできる。

自分の前の人が強かったりするとなかなか対戦できなかったりした。

でも、こちらの世界では列が一つで、長くなってしまうけれど、待ち時間は平等になっている。

そのシステムのおかげで、僕と対戦するのはどっちだ?

という目線で対戦を見るのが面白かった。


いよいよ僕の番が回ってきた。


「さーて」


ネット対戦は、家で気軽に色んな人と対戦できる。

部活などで知り合いと対戦するのも、和気あいあいとして楽しい。

でもね。


お互いそこにいるのに、視線も合わせず対戦が始まるゲーセンの独特な感じが、人見知りな僕を無条件で受け入れてくれているみたいで好きだった。

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