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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
38/133

第7話:高みを目指す者達01

交流戦から一ヶ月が経った。

この世界の生活にもすっかり慣れたというか、堂々と格ゲー漬けになれる充実した日々を過ごせていた。


家ではあの一件以来、親との関係は軟化してきている。

まだ報告のような会話しかできていないが、影ながら僕の活動を応援していてくれているようだった。


クラスではいじわるされる事も無く、友達と言えるかわからないけれど、普通に会話できるクラスメイトが何人かできた。


部活では今も無類の強さを誇っており、部員というよりはコーチのような立場になってきていて、部員一人一人と対戦してはアドバイスをして、全体のレベルアップに努めている。

あまり偉そうな事は言いたくなかったけれど、屋良さんのお願いでもあるので引き受けてみた。


部活動が無い放課後も、花尾間さん関泉さんペア、または、屋良さん箕内さんペアと遊ぶことがたびたびあった。


休日に外出がてらゲーセンに立ち寄ると、よく栄樹さんと顔を合わせていた。


一ヶ月ちょい前までは、誰とも話さない日なんて珍しくなかったのに、本当に刺激的な毎日を送れていると思っている。


こんな日常が、いつまでも続けばいいのに。

天気のいい昼下がりの休日に、僕は自転車を漕ぎながら、そう思った。


切実にそう思った。心の底からそう思った。そう思っている。


けれど、いつからか、僕の中に満たされないモノがあることに気が付いてしまった。


それは人間が良くも悪くも慣れる生き物だからだろうか。

それとも僕が格ゲーマーだからだろうか。


僕は今、ゲーセンへ向かっている。

行ったところで、どこかのチームが貸し切って対戦できるわけでもないのに。


ネット対戦の入場規制でしばらく遊べないからというのもある。

なんだったら、栄樹さんに会えるかもしれないっていうのもある。正直、彼女のあの人懐っこい感じはクセになりつつある。


でもおそらく一番の理由は、強い人との対戦を求めているからかもしれない。


僕は今学校生活を本当に楽しめている。

格闘ゲームも好きなだけやれている。


しかし、交流戦以来、僕は本気の対戦を一度もできていない。

それが不安となって大きくなってきている。

もしかしたら、僕は弱くっているのではないか?忘れてしまっていることはないか?と。


格闘ゲームの強者として、クラスや部活で頼りにされるのはうれしい。

が、それで100%と言えるほど、僕の実力は満足のいくものではないと思っている。


だから、何かきっかけを探すように、僕はゲーセンを訪れるようになっていた。


ゲーセンに着き、ランブルギアのエリアに行くと、今日も人だかりができていて盛況だった。

強そうな人たちが筺体の前に並び、レベルの高い対戦を繰り広げている。


僕は缶コーヒーを買うと、壁にもたれかかった。

一口飲んで、大画面に映し出されている対戦を観戦する。


どの対戦を観ても、ネット対戦や部活動とはレベルが違う。

僕では勝てないかもしれない。

けれど、簡単に負ける気もしなかった。

相手を強いと認めた上で、でも勝てるかもしれないと思ってしまうと、乱入せずにはいられない。


でも、僕にそれは許されていない。

まるで、覚悟の無い者はこれ以上来るなと言われているみたいだった。


格闘ゲームをやれていれば幸せだと思っていたが、実際は格闘ゲームを通して何かを得ていたことを、僕は最近気が付いた。

失ってから初めて気付くモノがあるとよく言われるが、僕はそのモノが何かもわかっていない。


「また来てますね現内さん」


ちびちび飲んでいた缶コーヒーがなくなったあたりで、栄樹さんがやって来た。


「もしかしてって思っていたんですけど、現内さんって私に会いにきてます?」


ニヒッと小悪魔っぽい笑みを浮かべながら、栄樹さんは僕との距離を詰めてくる。


「はは、それもあるかな」


僕が返答すると、栄樹さんは足を止め、口をとがらせる。


「なんか、すっかり私に慣れたって感じですね」


「いいことじゃん」


「そうですけどー…」


不満ありといった様子で、栄樹さんは僕の横に並んだ。


「今日も観戦に来たの?」


「そうですよ。あのチームはここらへんだと上位クラスですから」


「ふーん」と答えつつ、前も聞いたなと思った。


「なんで、そんなに熱心に観戦に来ているんだっけ?」


「真面目に格ゲーやっているからですよ」


それはもっと前に聞いた気がする。


「じゃあ、なんでそんなに真剣にやっているの?」


さっきまで顔を合わせずに話していたのに、栄樹さんがこちらを向いていた。


「今日はずいぶん聞いてきますね」


失礼のないように、を心がけて女子と接している僕は、あまり踏み込んだ質問はできずにいた。

けれど今日は、そんなことよりも他の人がどんな風に格闘ゲームに向き合っているのかが知りたくなった。


「まぁ、ちょっと考え事をしていて…」


「考え事ですか?」


「そんなたいした事じゃないんだけど」


「そうですか。じゃあ、それを先に教えてください。そしたら答えますよ」


したり顔で僕を見上げる栄樹さんと目が合った。


「栄樹さんも僕のことよく聞いてくる気がする」


「えっ?そうですかー?」


ちょっと図星をつかれたようなリアクションを栄樹さんはとった。


「自意識過剰じゃないです?」


「そうかな」


「それで、考え事ってなんですか?」


考えていたことは何か?

隠したいわけでも、恥ずかしいわけでもなく、ただなんて言っていいかわからない。


「うーん…」


小さく唸りながら、言葉を探す。

無意識にあたりを見渡すと、大勢の格ゲーマーや観戦者が目に入ってくる。

そしてその中心にあるのは…。


目標が分からないなら、それっぽい方に歩いてみるのも一つの手かもしれない。


「どうしたら、あの人達と対戦できるかな?」

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