第6話:ゲーマーの休日05
「情報っていうのは、どういうゲームかってこと?」
「うん、可動したばかりだとじっくり一人で遊ぶことってなかなかできないし、それに僕はロケテストって行かないから…」
「現内くんって、ロケテスト行ったことないの?」
意外だったのか、花尾間さんが少し驚いていた。
「ランブルギアの時とか、行きたい気持ちはあったんだけど、人気タイトルほど人数がすごいことになるじゃん?1プレイするのに2時間弱かかったとか聞いたことあるし」
「えっ?プレイする?」
関泉さんが眉をひそめた。
もしかして、こっちの世界だと観戦することしかできませんでした?
「あー、抽選に当たったとしてもそのくらい待たされるかもね」
「現内くん、それを前提で考えていたの?」
「あはは…」
やはりズレたことを言ったようで、僕はまたも苦笑いで誤魔化した。
こっちの世界のプレイ人口を考えれば、新しく作られた大型テーマパークのデモンストレーションに参加するくらい難しい事だったのかもしれない。
「まぁともあれ、初回プレイなんて高確率で格上が相手になるから、わからん殺しをされてもわからないままにしないようにしたいと」
「対戦後に考察できるできるようにしておきたいってことか」
「そう、公式のホームページや雑誌でゲームシステムやキャラ紹介を読んで、公開されている動画と照らし合わせながらイメージを膨らませる」
「ふんふん」
ためになる話と思ってくれているのか、花尾間さんが熱心な相槌を打ってくれている。
「格闘ゲームって、他の作品と大きく異なるシステムになることはあまりないから、スピード感はあのゲーム、操作感はあっちのゲームに近いかな?なんて想像もできるじゃん?」
「たしかに、遊んだ感想って既存のゲームに例えることあるかも」
「あとは、待っている間に別の人の対戦から学べることも増えるかな。ボタン配置を知っておくだけでも、なんとなく想像できるし」
「はー…、対戦前から戦いは始まっているって感じね」
「そ、そんなに大層なことはしていないよ。好きだからついつい調べちゃうってだけだし」
「現内くんって、本当に格闘ゲーム好きなんだね」
まったくもってその通りなのだが、人にそう言われると恥ずかしい。
「じゃあ、いざ対戦ってなった時は?」
「まずはわかっていることだけで動かすかな。ちょっと余裕が出てきたら、まだ使ってない動きも少しずつ混ぜてみたりする」
「わかっていることって、例えば?」
「とりあえず、自分が使うキャラについて、動画や待ち時間によく見た動きだけに集中するってことかな。よく見る動きってことはそのキャラの基本中の基本であることが多いから、まずはそこに慣れたい。
あとは、オフェンスの思考を抑えめにすることで、ディフェンスに集中するってことにもなるかな?格ゲーって相手の攻撃を切り返せないと勝てないところがあるから、自分のキャラの性能とか、大ダメージのコンボとかって二の次で、相手の動きを把握することに注力している…気がする」
こうやって、過去に自分がやっていたことにそれっぽく理屈をつけてみると、なんか考えてプレイしてきたように感じる。
なんか、その気になれば初心者向けの入門書くらいなら作れそうな錯覚を覚える。
「うはー、なんか、プレイできればいいやって思っていた私とは全然違った」
「そうね。初プレイの時点で勝とうとしているあたりが、意識高いわ」
辛辣な言い方をしているが、関泉さんの口元は笑っていて、冗談混じりの褒め言葉だとわかった。
我に返ってみると、それなりに恥ずかしい語りをしていたんじゃないかと不安になるところだったが、この二人はちゃんと聞いてくれていたようだ。
元の世界だったら、絶対にこんな話を女子にできないし、そもそもする機会もなかった。
それ以前に、自分の思いや考えを誰かに話して、それを聞いてもらえる事が楽しかった。
こうして、僕ら三人はしばらく格ゲー話を続けた後、また少し対戦をして、花尾間さんの家を後にした。
マンションの敷地外まで花尾間さんは送ってくれて、僕と関泉さんは駅に向かって歩いた。
「小学生からの友達ってことは、関泉さんもここらへんに住んでいるの?」
「それを聞いて、どうするつもり?」
「ただの世間話だよ。友達の家に呼んでおいて変人扱いする?」
「いやー、まだ油断するわけにはいかなかったかなーと思い直して」
関泉さんは、表情も言動もわかりにくいけど、こうやって積極的に僕と話してくれるおかげで、いつの間にか男子と話している時に近い状態でいられるようになった。
言葉使いや声のトーンがちょっとくだけているのも、僕が親しみやすい理由かもしれない。
他愛もない話をしながら少し歩いていると、すぐに別れることになり、一人駅を目指した。
関泉さんとはこうやって普通に話せるようになった。
人見知りの花尾間さんともだいぶ打ち解けられたような気がする。
格ゲーをやっていてよかった。
僕は、友達と遊んだ帰り道をひさしぶりに歩いた。




