第6話:ゲーマーの休日03
ふと棚の一番下に目がいくと、古いゲームソフトがずらりと並んでいた。
「うぉ、すごい。なにこのラインナップ?」
ぱっと見た感じ、僕が生まれる前から中学校に上がるまでの間に有名になったタイトルが多く並んでいる。
「気づいたか」
なぜか関泉さんが誇らしげにそう言った。
「蓮子のお父さんはゲームクリエイターであり、ゲームマニアでもあるんだ」
「へー、マジか」
そう言って花尾間さんの方を見ると、「まぁね」と苦笑いをしていた。
「花尾間さんは、これを全部クリアしているの?」
「う、うん、私が気に入ったものをここに並べさせてもらっているんだ」
なるほどと思い、ゆっくりとタイトルを見ていく。
「あ、幻想パレード!」
その中に、僕にとって特に思い出深い作品があった。
「これももちろんクリアしているんだよね?」
「うん」
「これ、超好きなんだけど、まわりに誰も遊んだ人がいなかったんだよね」
「そう、かもね。話題になったのって、かなり遅れてからだったから」
「花尾間さんって、最初の一週目どうだったか覚えている?王都防衛線一回目でクリアできた?」
「えーと」
忘れてしまったのか、花尾間さんは思い出そうとする素振りをみせた。
その様子に、やべ、ちょっとテンションを上げ過ぎたと反省した。
「あー!あれね」
と思った矢先、思い出したと同時に花尾間さんにしては大きな声を上げた。
「よく覚えているよ。私、なんかの拍子で指揮官になったから戦闘しなくなったんだけど、なんか急に全滅したからアセったよ」
「わかる。僕もどうしても指揮官で倒したくなって、何十時間もやったもん」
「あはは、それで、倒せたの?」
「あれね。当時はネットで調べるなんて知らなかったから相当苦労したよ。隠密部隊をMAXまで鍛えて、あとは4回連続で気づかれずに攻撃できるのを待った」
「うわー、やり込んだね。私もどうしても全員を生還させたかったから、リセマラしたなー」
「いいね。最低でも十週は遊べるよね」
そこからがすごかった。
ほぼノンストップで花尾間さんと幻想パレード談義をしていたと思う。
しかし、すごいのは女子に免疫のなかった僕でも、人見知りだった花尾間さんでもない、一度遊んだら語りたくなる自由度と完成度を持ったゲームなのだ。
名作であることを共有したくて、そんなことを言っていられない。
「おーい」
「それで、あのショップには裏ワザがあって…」
「おーい」
「それ私も途中で気付いて…」
「…そこの幻想パレードカップル」
「「えっ!?」」
目を向けると、関泉さんが遠くへ呼びかけるポーズを取っていた。
「インストール終わったよー」
その通りで、いつの間にかゲームのインストール完了していた。
完了音を聞き逃すほど、僕らは熱中してしまっていたのか?
同じ事を考えたのだろう。花尾間さんとほぼ同時に振り向いて目が合った。
花尾間さんはスッとゲーム画面に顔を戻したが、顔が赤くなっていることに気が付いてしまった。
僕もそれにつられて顔が熱くなってくる。
普段おとなしいクセに、関泉さんにいったいなんて思われたことだろう。
帰りは覚悟した方がいいかもしれない。
「すっかり打ち解けたことですし、新作ゲームでも盛り上がりましょうか」
「おほほ」と上から目線な関泉さんは、コントローラーをとってゲームを起動した。
僕ら二人は形無しといった状態で、為す術無し。
やられるなら帰り際と思った僕が甘かった。
語り出したら止まらないのが、オタク気質の悪い所。
「そうだ。うちってアケコン一つしかないけど、涼奈持って来てないよね?」
「うん。ていうか、ブレイブブラスターズなら必要ないかなと思って」
「僕もコントローラーで大丈夫だよ」
ちなみに僕はアケコンのことなど考えていなかっただけである。
「二人はどのくらいやったことあるの?」
「3回くらいゲーセンでやったくらい?学校は仕入れてくれなかったし、部活もランブルギアの大会が近い時期だったから、結局話題だけ出て終わっちゃったよね」
「そうだね。私としては、こっちを頑張ってみたかったと思っていたから残念」
「部活って、ランブルギア以外にもやっているの?」
「やっているよ。交流戦があったり、大会が多いから全員でランブルギアをやる時期が多いけど、希望者が多ければ違うゲームもやる」
「期末テスト前の大会が終われば、次にやるタイトルを2年生が中心になって決めるんだよ」
今の部活は、屋良さんの意向が強くてランブルギア一色になっているのかな?
なんとなくそう思った。
僕としても、ランブルギアがメインだからそれでいいんだけど。
「現内くんは、ブレイブブラスターズはどのくらいやったことがあるの?」
花尾間さんにそう聞かれて、回答にまた悩んだ。
今回は初の家庭用なので、やるとしたらゲーセンしかない。
しかし、かなりの回数の対戦をするならば、チームに所属している必要がある。
僕は元の世界でそれなりにやり込んだが、チームに所属していないので、その説明ができない。
「ぼ、僕も3回くらい、ゲーセンに足を運んだくらいかな?でも、対戦動画はかなり観て勉強したよ」
「おー、早くも勝てそうにない雰囲気が…」
苦しい説明になったが、なんとかなったかな?
これで一度観た動きはできるなんて思われたら困るが。
「じゃあ、悪いけど最初は私と蓮子で対戦してていい?現内くんに勝てないにしても、せめてちゃんと動かせるようになりたいから」
「わかった。それでいいよ」
僕はしばらく観戦モードに入る。
そういえば、この二人が対戦しているところって、見たことなかったような。




