第6話:ゲーマーの休日01
突然ですが、僕はとあるマンションの一室に招かれている。
「ちらかっているけど…」と案内された先は、シンプルではあったが紛うことなき女子の部屋であった。
そう僕は今、花尾間さんの部屋にいる。
ちなみに関泉さんも一緒にいる。
「適当にくつろいでいて」
そう言って花尾間さんはリビングの方へ行った。
関泉さんは慣れたようにベッドに腰掛ける。
ぼ、僕はいったいどうすれば?
立っているのも変なので、とりあえずテレビと向かい合うようにカーペットの上に座った。
「座布団使ったら」
「そ、そう」
僕は部屋の隅に置いてあった場布団を取って、下に敷いた。
「…」
「…」
あぁ、ついに女子の部屋にお邪魔する日が来たが、緊張感がやばい。
何が失礼に当たるかわかったものではない。
どうしようもない僕は、こうなった経緯をなんとなく思い返すことにした。
あれはたしか、交流戦の片付けが終わったあたりで…。
河船さんに勝利した僕は、トーナメント優勝を賞してもらい、これまた全勝という結果で交流戦は幕を下ろした。
全員の前でコメントを求められたが、河船さんの事が頭から離れなかった僕は、人前で話す事に慣れていないことも相まって、ふわふわしたことしか言えなかった。
それでも温かい拍手をくれるのだから、しっかりやればよかったと後悔した。
閉会式も終わり、しばらく他校と交流する時間があった。
優勝したということもあり、色々な人が僕に声をかけてくれた。
中には僕に敗れた人もいるのに、笑って称賛してくれたのがすごくうれしかった。
みんな気持ちのいい人たちで、交流戦に参加できて本当によかったと思った。
最後の方で河船さんに、「次は負けない」とにらまれた時は驚いたけど、これってライバルってやつかな?と思ったら悪い気はしなかった。
そして、他の格ゲー部が帰った後、僕らは片付けに入った。
僕は朝と同じく部室の担当になり、関泉さんの指示のもと、せっせと働く。
ほとんど終わったかな、と思って部室を眺めている時に、関泉が話しかけてきた。
「そういえば昨日、ブレイブブラスターズの発売日だったわね」
ブレイブブラスターズとは、ランブルギアとは別の会社が出している格ゲーである。
ランブルギアと比べると、システムがシンプルで遊びやすいゲームになっている。
大きな大会の開催は聞いたことがないが、人気タイトルの一つではある。
もしかしたら、こっちの世界ではバンバン大会をやっているかもしれない。
「そういえば、そうだったね」
僕は、こっちの世界のことで手一杯だったので、すっかり忘れていた。
というか、元の世界と発売日が一緒なことに少し驚いた。
「あれ?もしかして買ってないの?」
「うん、ちょっとお金がなくてね。すぐにでも遊びたいんだけど」
「たはは」と笑っていると、また関泉さんが少し考える素振りをみせる。
「涼奈、こっちは終わったよ」
すると、体育館の片付けが終わり、花尾間さん達が部室へやってきた。
「あ、いいところにきた」
「なに?」
「明日、私と現内くんで遊びに行ってもいい?」
「へっ!?」
割と大きな声で花尾間さんは驚いた。
普段おとなしいイメージがあるけど、もしかしたらこっちのボリュームの方が素なんじゃないか?
もう何回かこの大きさで聞いている気がする。
「だめ?予定あった?」
「あ、えと、あー」
一瞬僕のことをチラっと見て、花尾間さんは言葉に困っている。
「あの、関泉さん、話がみえないんだけど」
リアクションは取らなかったが、内心僕も驚いていた。
僕も花尾間さん家へ行く?どういうこと?
「蓮子、ブレイブブラスターズを限定版で持っているのよ。せっかくだから、三人で遊びたいなって」
それはうれしいお誘いだが、そのとぼけた言い方の裏には何もないのか?
同じ部員とはいえ、そんなに親しくない男子が家に上がり込むなんて…。
というか、僕が暇なのは確定だったんですか?
ここは僕から断った方がいいのかな?なんて思いつつも、ブレイブブラスターズやりたいって気持ちと、女子の部屋へ行ってみたいという気持ちで、花尾間さんの返答をただただ待った。
うー、小さく唸りながら悩む花尾間さん。
大丈夫、わかっているよ。と心の中でフォローする僕。
おねだり視線を送る関泉さん。
「じゃ、じゃあ…」
そしてついに花尾間さんの口が開いた。
「お昼過ぎからだったらいいよ」
「やったー」
と、関泉さんがなんだかわざとらしく喜ぶ。
「えと、その、本当にいいの?」
「えっ?う、うん、平気だよ」
心配になり過ぎた僕はつい確認してしまった。
その代償として、ちょっと本音を聞いてしまうことになった。
いや、平気って言い方でも問題無いんだけどさ、僕の思い過ごしかもしれないけどさ。
こうして僕は、花尾間さんの部屋に座っている。
勉強机があって、ゲームする環境があって、ベッドがあって、普通の部屋だとは思うんだけど、ちょっとした所にさりげなく小物とか写真とかあるのが、いかにも女子の部屋といった感じだ。
あんまり眺めちゃいかんと思いつつも、つい目が泳いでしまう。
「ひょっとして緊張している?」
「ま、まぁね」
「ふーん」
関泉さんのからかいに、いまいちな返事しかできない。
「よかったらどうぞ」
花尾間さんが、ジュースを3つ持って来てくれた。
「どうぞ」
「ど、どうも」
「どうぞ」
「ありがとう」
二人がジュースを受け取ると、花尾間さんもテレビの前に座った。




