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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
20/133

第4話:住めば都かスクールライフ01

休日が明け、月曜日がやって来た。

僕はいつも通り、動画を観ながらバスに揺られていた。

いつもと違う点は、動画にまったく集中できていない点だった。


昨日、さっそくゲームを起動して、ネット対戦しようとしたところ、まさかの入場制限をくらった。

ネット回線か、はてまたサーバー管理か、理由はわからないけれど、すべての人を受け入れられないほど、休日にプレイしたい人がいるということだろう。


それだけ、この世界では多くの人が格ゲーをやっていることになる。

僕としては大変喜ばしいことだが、こうなってくると少し話が変わってくる。


結局、4時間待って2時間対戦を2回が限界であった。

おかげで、いつになく寝不足である。


そして、さらに僕を驚愕させたことがある。

それは、ランクアップへの道のりの長さ。

プレイヤー人口が多いのだから、それだけ強い弱いの棲み分けが必要であるのは当然。


当然なんだけど。

1ランク上げるのに、元の世界の10倍はかかりそうである。


それに加えて休日の入場制限、いつになったら、僕がやっていたランクへ戻ってこれるか検討もつかない。


感じの悪い言い方をするが、それまで初心者狩りを続けなければならないのが苦行である。


「はぁ…」


昨日はあんなにやる気だったのに、すっかりテンションを抜かれてしまった。


バスを降りて、校門を通る。


気が滅入ってくる。

やりたい事ができたけど、僕にとって学校はまだまだ憂鬱な場所だ。


しかも、これからはどんどん人と関わっていくことになる。

今までの様に、隅っこで黙っているわけにはいかない。


自分に本当にできるのか?

それを毎日続けられるのか?


不安に押しつぶされそうだ。

まるで、高校に入学したばかりの時のようだった。


下駄箱で靴を履きかえる。


「…あ」


僕の近くに来た女子の小声が聞こえた。


僕に話かけてくる女子はそういないので、顔を見ることなく教室へ向かおうとする。

が、横目に見覚えのある長い髪が見えた。


何気なく顔を向けると、そこに立っていたのは花尾間さんだった。


「あ…」


僕は花尾間さんとまったく同じリアクションをとってしまった。


こ、これって?あれだよな。

「おはよう」って挨拶した方がいいやつだよな?


ぼ…僕が?女子に?


いけ!今日から頑張るんだろ!

心の中で前向きな僕がそう励ますが、後ろ向きな僕自身が、どもるのが怖くて声が出ない。


「なに二人で口開けて見つめ合っているの?」


関泉さんが廊下側から現れた。

僕ら二人は一緒に関泉さんに助けを求める視線を送る。


「クスッ、これはさすがに笑っちゃう」


関泉はすべてを察して、意地悪気に笑った。


「ほら、言いたい事があるなら、言っちゃいなさいよ」


と背中を押す真似をしながら、まるで告白を後押しするように関泉さんは言った。


「りょ、涼奈ー…」


花尾間さんが耐えられなくなって、関泉さんへしがみつく。

それをよしよしと、赤子をなだめるように関泉さんは迎え入れる。


「おはよう、現内くん」


その後、関泉さんはスマートに僕へ挨拶した。


「あ、お…おはよう」


僕からも、ギリギリ赤点の挨拶を返す。


するとなんとなく、花尾間さんの方へ向いてしまう。

無意識に、この流れなら挨拶してくれると思ってしまった。


「…おはよぉ、ございます」


目を合わせてはくれなかったが、なんと期待してしまった通り、僕なんかに挨拶をしてくれた。


きっと普通の高校生には、普通に当たり前の事なんでしょうけど、僕にとってはすごくありがたい事だったのです。

さっきまでの暗い気持ちなんて、忘却の彼方へ行ってしまうくらい。


僕に挨拶してくれる時点で、二人とも最高にいい子なんだけど、同じ人見知りという勝手な仲間意識があるせいで、花尾間さんがちょっとだけ特別に思えた。


「今日は、部活に来るの?」


「うん、先週の返事をしないといけないから」


「おー、その感じは」


「入るよ」と言わんばかりの態度が出てしまい、照れる。


「よかったじゃん、蓮子」


「う、うん」


関泉さんの問いに、かなり間を置いて花尾間さんは肯定してくれた。

一瞬ヒヤッとしたが、そんなことないよね花尾間さん?


一挙動事に敏感に反応してしまうクセを直さないといけないな。

どうすればいいかはわからないけれど。

僕は心の中で一人反省をする。


「ここにいても邪魔になるし、教室へいきましょう」


三人で階段を登り始めた。


人通りも多くて、会話をしにくいというのもあり、会話はなかった。


さすがにこんな状態じゃね。と思いながらも、頭の中で出せそうな話題を必死に検索したが、ついに出てくることはなかった。

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