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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
2/133

第1話:ゲーマーがステータス01

スマホのアラームで目を覚ました。

体勢を変えることなく、いつもの場所に手を伸ばしてアラームを止める。


おかしな夢をみた。

こんなに夢をはっきりと覚えているのはひさしぶりだ。


そして、目覚めがとてもいい。

眠気は微塵も無く、意識がクリアだ。


軽やかにベットから下り、洗面台に向かう。

なんだ今日は?えらく体調がいい。


洗面台の前に立ち、寝癖がないか鏡でチェックする。

そこには、知らない男が映っていた。


自分が映るものだと疑いもしなかったから、あまりの恐怖に体が跳ね、後ろの壁に頭をぶつけた。


「ひぃぃ!」


情けない声を上げて、壁に張り付いたまま体が硬直する。


鏡の中の男もまた、壁に張り付いたまま動かない。

くまの無い目、つやのある肌、整えられた髪、胸元からはうっすらと胸筋が見える。

そして、見覚えのある顔立ち。


「ぼ…僕?」


ゆっくりと鏡に手を伸ばす。

向こうも、まったく同じように手を伸ばす。


鏡に手が触れ、お互いに手を合わせる形になったが、感触は鏡だった。


自分の顔、頭、体を確かめるように触っていく。

鏡に映っているのは、たしかに僕だった。


僕はたった一晩で変わり果てていた。いい方面に。


しかし、まったく喜べない。戸惑いしかない。

いったい、何が起こった?


鏡の前で固まっていると、母がやってきた。


「ちょ、ちょっと、何をやっているの?」


「お母さん…、ぼく…」


「…あんまり、大きい音を立てないでね」


母はいつにも増して遠慮がちにそう言って、すぐにキッチンへ去って行った。


え?それだけ?

僕ら親子の関係は、僕がゲームにハマってから良好とは言えないが、息子のこの姿に何もないのか?


正直、そっちの方がつらくなった。

なんか、見た目が変わった事が少しどうでもよくなった。


そこから僕は、顔を洗い、濡れた手で髪を整え、黙って朝ごはんを食べ、黙って家を出た。


高校へはバスで一時間弱かかるが、住んでいる団地からバス停がすぐ近くにあるのは楽だった。


いつものようにバス停に並ぶと、スマホにイヤフォンを差して、動画を選択する。

世界一有名と言われているゲーセンの格闘ゲームの対戦動画を、高校に着くまで見るのが僕の通学だ。


昨日は誰が対戦していたのかな?

動画を再生する前に、動画コメントを見てみる。


「ん?」


なんだ?再生数がすごいぞ?

いつもより、2ケタも多い…。

すごい記録でも出たのか?


視聴者コメントを確認しようとすると、バスがやってきた。

まぁ、いいか。動画を見ればわかる。


僕は再生ボタンを押して、バスに乗り込んだ。

今日は運よく席が空いていて、そこに座る。


「あれ?」


いつもと外の景色が違う。

僕はバス停まで俯いて歩き、すぐにスマホを取り出したから、今まで気が付かなかった。


あわててどこ行きのバスか確認する。

いつものバスで間違いない。

よく乗り合わせているおじいさんもいる。


でも、言葉にできない恐怖に襲われる。

頭がクラクラする。


やっぱり変だ。おかしい。

昨日までと、何かが違う。


ここって、こんなに団地が多かったか?

ありえない数の団地を目の前に呆けていると、バスは動き始めた。

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