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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
125/133

最終話:To be continued 01

ライジングから時は流れ、3月中旬。

学校で卒業式が行われ、僕ら在校生は卒業生をお祝いした。


卒業式が終わると、格ゲー部の先輩達にお祝いを言うため部室に部員全員が集まった。

格ゲーで対戦したり、他のゲームで遊んだり、談笑していたり、もう学校で会うことがなくなる先輩達との最後の時間を過ごす。


僕は、最後に一本くらい勝ちたいという人達と連戦していた。

花を持たせたい気持ちがあるが、当然手を抜く様なことはしない。

せめてものハンデは、キャラをランダムで決めていることくらい。


連勝している僕だけでなく、一回も勝てない先輩達も、それをみている皆も楽しそうにしている。

改めて、ゲームって最高の発明だと思った。


「現内くん、ちょっとジュース買いに行こうぜ。少し休んだ方がいいんじゃないか?」


屋良さんにそう言われて、僕は一階の自販機までついていった。


イケメンで、さわやかで、社交性があって、でもどこかズレているところがある屋良さん。

この人気者の模範みたいな人が、僕の人生に一つ転機をくれた。

素直に憧れられる人が近くにいると、自然と影響を受ける。あの人はあんな風にやっていたなと思うと、自分もそうしてみたいと考える。

無意識にそうしていたら、いつの間にかちょっとだけましな自分になっていた気がする。

屋良さんは何もしていないと言いそうだけど、僕は本当にこの人にお世話になったと思っている。


卒業してしまうということもあり、ちょっと歩けば誰かに声をかけられている。

そんな屋良さんと、もう会える機会が限られると思うと寂しかった。


「あはは、そんな特別扱いするなよ」


つい感傷深くなってしまい、受け答えがいつもと違う僕を屋良さんは笑った。


「はは、すみません」


「ほんと、現内くんはなんか違うよなー」


屋良さんは自販機からコーヒーを取り出すと、僕に渡した。


「はい、おごり」


「えっ?」


「だいたいこれを飲んでいたろ?いいからいいから」


「ありがとうございます」


屋良さんは僕にくれたコーヒーと同じものを選んだ。

そして、部室とは違う方へ歩き始める。


「ちょいちょい」


僕は誘われるまま屋良さんについていく。

比較的人気の少ない所に来ると、屋良さんはコーヒーを開けて一口飲んだ。


「いやー、さっきはあぁ言ったけどさ、俺も現内くんと会えなくなるのはさびしいよ」


全然そんな感じではなかったが、こうして二人で話そうとしてくれているので、きっと本心なのだろう。

照れくさいが、気に入ってもらえているというのはうれしい。


「そうですね」


僕もコーヒーに口をつける。


「物言いはクールだね」


「しんみりしたくはないですから」


「やせ我慢ってこと?」


「たぶん」


二人で笑った。


「現内くんって変わったよね。いや、今の方が本当だったのかな?」


「そうですか?」


「うん、出会った時はすごいおどおどしていたけど、今はどもることもほとんど無いし、それにー…」


「それに?」


「なんて言うのかな、格ゲーに没頭しなくなった?あれ?今の方が真剣に取り組んでいるんだから、それだと表現がおかしいな」


屋良さんは首をかしげた。


「いえ、だぶんそれで合っています」


僕はゲームが好きで、特に格ゲーがお気に入りだった。

いつしか自分にはそれしかなくなり、自分の存在を肯定するためにすがりつく物になっていた。

でも、この世界に来て、格ゲーが純粋に楽しめるモノになった。

そして今は、自分がなりたい者になるための大切な要素になっている。


格ゲーが僕の生きる理由になっているのは変わらない。

けれどこの一年間で、生きる理由がそれだけじゃなくなった。

だから、屋良さんの言っている事は合っている。


「そう?まぁ現内くん自身が言うならそうなんでしょう」


屋良さんはまた笑った。


「変わったと言えば部活もそうだよな。現内くんが来てからかなり強くなったよね」


「そうですか?」


「ぷっ、またその反応かよ」


「しょうがないじゃないですか」


「はは、それもそうか。

冬の大会で決勝戦までいけたのは我が部…格ゲー部では初なんだ。

大会に出場したメンバーも、初めから突出して強かったわけじゃない。

ということは、単純に部全体のレベルが上がったってこと。

それに、引退してブランクがあるとはいえ、今日は現内くん以外にもほとんど勝てなかった」


「そういわれると…そうですね。部活の制限を除けば、僕も手加減なんてしていないですし」


「それだけ皆、ちゃんと練習しているってことだね。

でも楽しい雰囲気はそのまま。むしろ、今の方がいきいきしているかもしれない。

やっぱり僕が思った通り、うまいとか強いとかって楽しいんだよ。

だから練習にも身が入るってもんだ」


「なんか、先輩ってよりは指導者ですね」


「あれ、言わなかったっけ?俺、学校の先生目指しているんだぞ」


「えっ!?そうだったんですか」


初耳だったので驚いたが、屋良さんが教壇に立ち、生徒と笑いながら授業している光景が目に浮かんだ。

屋良さんが先生なら、僕みたいな奴を一人でも多く救えるかもしれない。


「似合わない?」


「いいえ、むしろ天職だと思います」


「やっぱり?あはは」


ちびちび飲んでいたコーヒーがなくなっていた。

屋良のも空になっていたようで、そろそろ戻るか?という雰囲気になる。


「部室に戻る前に、実は現内くんにプレゼントがある」


屋良さんはそう言って、ズボンの後ろポケットに手を入れた。

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