第22話:これが僕の07
続く三本目。
変わらぬ開幕。
クラマで攻撃しようとするトンフーと、それを阻止するシハラ。
ダメージこそ与えられていないが画面端へ追い込み、ゲージもそれなりに貯まっている。
いい感じに攻められている。
ここでガードを崩し、二回戦に王手をかけたい。
投げが手っ取り早く確実だし、この対戦ではかなり機能している。このまま狙うのもありだが…。
いや、それだと単調になりすぎるかもしれない。
テンポよく攻撃できているのは僕の調子が上がってきているからでもあるが、相手が逃げずにずっとガードしているからというのもある。
その理由は、おそらく投げを誘っているから。
順調に攻めれているのにまだ一度も攻撃がヒットしていない。有利な立場なのにも関わらず。
この状況がけっこう精神的負担になる。チャンスを逃し続けているような錯覚を覚え、焦りが生まれる。
シハラのようなパワーキャラは少ないチャンスをものにしないと勝てない。だから、余計に自分の行動が読まれているような気がしてしまう。
勝ち急いで、この読み合いを放棄してはいけない。
ではどうするか?
このまま攻め続けるのもいいが、近い内に慣れられてしまうだろう。このまま押し切れるほど甘いとは考えられない。
そこで僕は、ゲージ無しで中段攻撃を出すことにした。
下方向に長い空中技を低空で出すことで、しゃがんでいる相手のガードを崩す手段がある。
そのままコンボにいける場合もあるが、大抵はゲージが必要で、ゲージが無い場合は少量のダメージとほぼ五分な状況にしかならない。
あまりうま味はないが、これで相手が少しでも動揺してくれればいい。
僕は攻撃をしながら距離を調整して、中段攻撃を出す。
えっ!?
その中段攻撃が、なんとピンポイントでガードされてしまった。
そして、シハラの着地と同時に大攻撃とダウンを奪われ、ここぞとばかりにクラマを動かす。
シハラの裏に回ったクラマが攻撃を仕掛けている間、トンフーはジャンプしてシハラを飛び越す。
画面端に追い込むつもりか、まずいな。
と思った瞬間、そのまま着地と見せかけて、寸前で空中ダッシュしてジャンプ攻撃をトンフーが繰り出す。
着地して連携攻撃だと思っていた僕は、見事にしゃがんでしまい、ガードを崩されてしまう。
トンフーは再び画面端に戻ったが、シハラに基本コンボをしている間にクラマを休ませ、ダウンをとると再びクラマをシハラの裏に配置する。
またトンフーがシハラを飛び越す。
トンフーはめくりに使える空中攻撃は持っていないので、二回連続は無いと僕は読んだ。
しかし、相手はまたも空中ダッシュをしてシハラのガードを崩す。
なんと、これがあと二回繰り返され、ひよってしまった僕はついに着地からの下段攻撃をガードをできず、そのまま押し切られてしまう。
僕は三本目を敗北した。
トンフーであんな極端な攻めをされたのは初めてだ。
でも、やぶれかぶれだとは思えない。何か根拠があったのか?
いやいや、今は忘れて切り替えるんだ。すぐに四本目が始まってしまう。
けれど僕はあまり冷静ではいられなかった。
四本目開始と同時に、相手は空中ダッシュで攻めてきた。
さきほどの勢いに乗り、開幕からいい流れを掴まれてしまう。
意表を突かれてガードを固めた僕をあざ笑うかのように、目の前で隙を晒しながらクラマを動かす。
やばいと思いあわてて弱ボタンをこするも、クラマの攻撃が早く、ガードをさせられてしまう。
そして、そこから投げをくらい、シハラはガード不能連携を受けてしまう。
一旦引いて体制を整えないと。
ついさっきまでいい感じに動けていたのに、突然ペースを乱されて、あれよあれよと敗色が濃くなっていく。
リスクを抑え、クラマを行動不能にしようと牽制攻撃を振る。
けれど、ギリギリの所でクラマは立ち止まり、空振りの隙をつかれ攻められてしまう。
なんで…こうなった?
あの中段から流れが変わってしまった。
もしかしたら、あの中段こそが相手の誘いだった?
一本目・二本目は運がよかっただけで、これが本来の実力差なのか?
あと…僕の出来る事は…どれだけ残っている?
怒涛の連続攻撃を受けながら、僕は必死に打開策を考える。
だが、目まぐるしく変わる状況に、僕の思考が追いつかない。
このままじゃ、負けてしまう!
顔に力が入り、歯を食いしばる。
嫌だ。ここまで来たのに、みんなが応援してくれているのに。
みんな…。
ふと、対戦前の情景が頭に浮かぶ。
"対戦中は、自分のプレイに思考を割くなよ"
お兄さんが、たしかそう言ってくれた。
"落ち着いてプレイできれば、勝てると思うよ"
今度は関泉さんの言葉を思い出す。
そうだね。あのままいっちゃったらだめだったね。
相手があの手この手と攻めて来るが、僕はそれをどっしりとガードする。
自分がどうしたいかで考えちゃだめだ。
相手がどうしようとしているか良く見て考えなくては。
それが、みんなが認めてくれた僕の強みだったはずだ。




