第22話:これが僕の05
たとえ相手が大会に慣れている人だとしても、最初くらいは堅実で慎重になっているだろう。
ならば、いきなりリスク全開で攻めるのもありかもしれない。
と考えたが、僕は正当法で攻撃を展開していた。
逃がさないように、カウンターを食らわないように、ゲージを貯めつつ相手を画面端へと追い詰めていく。
しかし、相手に連携の切れ目を見切られ、ハイジャンプからの空中ダッシュで画面中央に逃げられてしまう。
僕は逃がすまいとすぐに低空ダッシュで追いかける。
相手が着地と同時にクラマの操作に入っていたら攻撃が入ったかもしれないが、そこは冷静に僕の攻撃に備えていた。
一歩前に出て、対空攻撃が届く距離まで詰めている。
僕はそれに気がついてすぐにガードを入力して、初撃を回避する。
相手はそこまで計算済みで、空中連携にはいかず、クラマをトンフーの前へ走らせる。
シハラとトンフーの間にクラマが入る形になった。
クラマの弱攻撃。
トンフーのしゃがみ中攻撃。
クラマの大攻撃。
シハラがガード硬直している間に、トンフーは低空ダッシュでシハラの裏へ回る。
シハラが挟み撃ちになる最悪の状況。
両方からの弱攻撃に耐えながら、いつくるかわからない中段や投げに備える。
トンフーとクラマの攻撃が3ループくらいした後、クラマはスタミナを回復させるため一度引っ込んだ。
時間稼ぎのために、トンフーは弱攻撃連打でシハラを攻撃する。
攻撃が届かなくなる距離まで離れると、トンフーはハイジャンプしてさらに時間を稼ぐ。
僕は下でトンフーが下りてくるのを待つ。
シハラが待った状態ではトンフーが不利。相手は無理せずにガードで降りてくる。
そこに、攻撃と見せかけて投げにいき、空中コンボまで繋いでダウンを奪う。
落ち着いて起き攻めを行い、チャンスを待つ。
すると、さきほどの投げが相手の尾を引いていたのか、シハラの投げ無敵攻撃に対して投げ返しを合わせてきた。
絶好のカウンターヒット。
まさか当たるとは思っていなかったので、一瞬焦りが生じたが、手が覚えているのでミス無く最大限のコンボで大ダメージを取る。
このパターンは結構あるのだが、いつまでも慣れない…。
これを好機と見た僕は、一気に勝負を仕掛ける。
溜まっていたゲージを使い、一回、また一回とガードを崩してコンボを決める。
残り1割といったところまで削ったところで、トンフーはガードキャンセルでシハラを突き放し、すぐにクラマを前へ立たせる。
倒しきるつもりでいたので、シハラにゲージが無い。
ここで万が一画面端まで追い詰められたら、そのまま負けてしまうかもしれない。
相手もクラマを行動不能にされないように、あまり積極的に前へは出してこなかった。
こまめにスタミナを回復させながら、少しずつお互いの距離を詰めていく。
そこで、僕はおもむろに大攻撃を出す。
狙い通り、相手がクラマを前進させたタイミングと合い、クラマは斬撃をくらって行動不能になった。
相手はすぐに反応して後ろに下がったが、クラマ無しのトンフーはあまり怖くない。
おまけに、相手も同じくゲージが無い。
かなり強引だが、見え見えの投げを狙う。
たぶん一瞬でも相手に迷いがあったのだろう。その投げは決まり、一本目を先取した。
「ふぅー」
無事一本取れた喜びが、吐く息となって現れる。
まさかの好調なすべり出し、気分が高揚してきて「勝ち」という文字が頭にちらつく。
勝てる。そう思ったら心音が加速してきた。
二本目。
相手は前回と同様にハイジャンプから入る。
けれど、今度は僕の動きを警戒して、なかなかダッシュしない。
僕も相手の動きを見ていたため、わずかに相手のバックダッシュへの反応が遅れてしまう。
同じように追いかけるが、攻撃が届かず、クラマが臨戦態勢に入っていた。
そこからクラマの多段ヒットする突進攻撃が来る。
シハラはガードを余儀なくされる。
そこへさらに、トンフーの攻撃が加わり、さらにクラマの連携が続く。
2回目のトンフーの攻撃が初っ端から中段攻撃で、シハラはそれを食らってしまう。
ガードが崩れるのが早すぎてクラマが間に合わないので、トンフーはシハラをダウンさせ、再びクラマとの挟み撃ちに打って出る。
僕は暴れたい気持ちを抑え、しゃがみガードで確実にダメージを回避する。
トンフーの中段は見てから反応できそうな早さなのだが、このいつ終わるかわからない連携の中で出されると反応しきれない。
スタミナゲージ半分くらいのところで中段攻撃を出され、やはり反応が遅れてダメージを受けてしまう。
ダウンも取られ、再度起き攻めを受ける。
幸い、クラマのスタミナが少ないので、ここをやり過ごせれば攻める側に回れる。
それは相手もわかっていること。
それを踏まえたらやってくることは二つ。相手のガードを固めて確実にスタミナを回復させるか、相手を投げてスタミナを全回復にするか。
僕は、ここを投げと読み、クラマの攻撃が終わったと同時にバックステップをした。
読みは的中。トンフーは投げ失敗のもモーションに入り、隙を晒した。




