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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
120/133

第22話:これが僕の04

それぞれのブロックで、一回戦の最後を対戦する人がステージ前の扉に集まった。

この中の誰かが、僕の対戦者となる。

一人一人顔を見てみる。みんな真剣な表情をしていた。


緊張しているが、怖いという感情はなくなっていた。


やるぞ…。やるぞ…。


気持ちが前を向くように、余計なことを考えないように、心の中で何度もつぶやく。


ポケットの中のスマホが震えた。

はっとした。

すぐに本番だというのに、控室に置いてくるか、電源を切っておけばよかった。


こんな所でスマホを取り出す自分が、大会初出場丸出しになっているように思えて少し恥ずかしくなる。

けれど、スマホの画面を見て、そんな気持ちは一瞬でなくなった。


通知は、関泉さんからの画像付きメッセージだった。

映し出された画面には、関泉さん、花尾間さん、屋良さん、箕内さん、栄樹さん、なぜか亀里の部長と河船さんもいる。

みんなのすぐ後ろに壁があるあたり、ギリギリで観戦できたといったところだろうか。

カメラ越しに、僕を見ながら笑顔を向けてくれている。


自然と笑みがこぼれた。

僕はその画像を表示したまま、スマホの電源を切る。


おそらく普通は、応援メッセージであっても対戦直前には送らない。

にもかかわらず送ってくれたのは、僕の事を考えてのことに違いない。

僕のことだからガチガチになっている。だから、このくらいの緩さがちょうどいい。

そんなところだろう。


人が僕に対して何を考えているか?想像したことは何度もある。

でもそれは、いつだってネガティブなものだった。

ちゃんと受け答えできたか?今僕を見て馬鹿にしたんじゃないか?とか。


信頼できる人達がいる。信頼してくれる人達がいる。

これが僕の…今の僕だ。


ステージで行われていた対戦がすべて終わり、ついに僕はステージに立った。

開会式と違い、ステージはいい感じに明るくなっていて、ブロック数分の筐体が並んでいる。


僕が対戦するのは、一番奥。

僕の前を、深緑のパーカーを着た人が歩いている。この人が一回戦の対戦相手だ。


筐体の前まで来ると、お互い目があった。

表情を一切変えることなく、軽くお辞儀をすると、どちらが1P側に座るかジャンケンで決める。

僕はどちらでもよかったのだが、ジャンケンに勝ったので1P側に座った。


司会者からの開始の合図を待つ。

観客席の奥の方を見てみる。

まったく見えなかったが、あそこら辺のどこかに部活のみんながいる。

きっとチームの人達もネットで僕の対戦を見ている。


「さぁ、これで一回戦が終わります」


全員の着席を確認して、司会者が話し始める。


「それでは!始めてください!」


一斉にスタートボタンが押される。

キャラクターセレクト画面が表示され、僕は迷わずシハラにカーソルを合わせる。

相手はしばらくカーソルを適当に動かしている。

僕はボタンを押さずに、相手のカーソルが止まるのを待った。

対戦動画とかでたまに見かけるけれど、この行為になんの意味があるのだろうか?

僕はそんなことを考えながら眺めていた。


はっきりと自覚がある。

もう手元と画面しか見えていない。

まだ多少緊張しているが、初めて来たゲーセンで乱入する時程度だった。

僕は今、いい状態にある。


相手のカーソルが止まった。

キャラクターは「トンフー」。「クラマ」という狼を連れている。

クラマもスティックとボタンを使って操作する必要があるため、非常に扱うのが難しい。

その代わり、クラマと連携した固めと起き攻めが非常に強力で、ワンチャンスからの起き攻めループでどこからでも勝ちが拾える。

ただし、トンフー自体は弱く、クラマを一定時間行動不能にすることもできるので、勝ちへのアプローチはしっかりある。


僕がシハラを選択すると、相手もトンフーを選択した。

画面が切り替わり、ついに対戦が始まる。


トンフーの立ち回りとしては、まずはクラマを前に立たせて相手の行動を制限させること。

そこからトンフーが攻め込み、クラマと連携した攻撃を加えていく。

ちなみに、クラマにはスタミナゲージがあり、連続で使い続けると疲れて一定時間行動不能になってしまう。

相手のガードを崩せなかったら、一旦クラマを休ませるため、相手との距離をとる。


トンフーはバックジャンプでシハラとの距離をとる。

開始位置ではトンフーの攻撃は届かず、クラマも間に合わない。


それがわかっていたので、僕は様子見を兼ねて垂直ジャンプをして、相手が下がるのを確認してからすぐに空中ダッシュで攻め込む。


トンフーはあまり強くないが対空技を持っているので、それが届かない距離で攻撃をガードさせる。


ここまではよくある展開。

シハラが若干有利な状況だが、相手も慣れているはず。


さぁ、どうしようか?

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