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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
119/133

第22話:これが僕の03

開会式が終わると、選手は再び控室に戻ってきた。

10分後に、個人戦トーナメントが始まる。


賞金のかかった大会とかだと、1つの決着をつけるのに数試合やることが多い。

一試合だけだとすぐに対戦が終わってしまうし、運要素がどうしても気になってしまう。

数試合になると、時間はかかるがそれらの不満が解消される。

そして、お互いの手の内を見せ合ってからの読み合いというもっとも熱い後半戦が生まれる。

前半と後半のプレイの違いを見つけるのが楽しくて、僕は何度も同じ対戦を観ることがあったりする。


しかし今回のルールは、三本先取一試合で決着を着ける。

人数もアマチュアの割合も多いので回転率を上げているのだと思う。

あっという間に負けて終わってしまうことがあるが、最初の勢いでそのまま勝てる可能性もある。

プロへ行くためには、どんなルールでも勝てる勝負強さが求められているのかもしれない。


4ブロック同時進行だが、一回戦がすべて終わるのは一時間後くらいだろう。

ようするに、僕の出番まで一時間弱ある。

すぐに対戦があるのもきついが、時間がありすぎるのも困る。


ブロック毎に対戦はネット配信されているので、自分のスマホで出場するブロックを視聴する。


「どっちもうめぇな」


栄樹さんのお兄さんがおにぎりを食べながら、僕のスマホを覗きこむ。


「栄樹くん、よく食べるね」


北森さんが大きいおにぎりを見ながら言った。


「俺の出番までの時間を考えて、今食っておくのが一番いいんですよ」


「へぇ、消化時間とか考慮してってこと?」


「それもあるかもしれませんが、あくまで俺個人の経験上でってだけです」


北森さんの方が年上なので、栄樹さんのお兄さんは敬語で話している。

なんとなく聞いてはいたが、僕は動画に集中していた。


もう数試合観ているが、正直に言って荒い印象を持った。

要所要所でうまいプレイが飛び出すが、それと同じくらいミスも目立つ。

それが、まだライジングという登竜門にいる選手たちの実力なのかもしれない。

それと同時に、いつものようにプレイはできないということをありありと表している。


ミスさえしなければチャンスがある。ミスさえしなければ…。

それが僕の感想だった。


「おい」


おにぎりを食べ終わったお兄さんに、急に声をかけられた。


「なんでしょうか?」


「対戦中は、自分のプレイに思考を割くなよ」


僕の心を読んだかのような言葉だった。

思わずギクリとする。


「ん?なんだその反応?…あっ、さてはコンボミスとかを考えていーたーなー」


僕を指さし、してやったりと笑う。


僕は図星をつかれてしまい、言葉に詰まる。

その間、お兄さんは二個目のおにぎりを取り出し、一口食べた。

そして、口に含んだまま話を続ける。


「チームのために、しかたなくお前にアドバイスをくれてやる」


「は、はい…」


いつもの意地悪な態度のままだが、たしかにお兄さんはそう言った。

不思議なことに、ちゃんと聞いておこうという気持ちになったので、スマホの画面を切る。

他のベテラン勢にとっても以外だったのか、みんな揃ってお兄さんに耳を傾ける。


「正直、諸刃の剣ではあるが、お前の一番の武器は"観察からの読み"だ」


「…観察、ですか?」


「お前って、普段おどおどしているくせに、格ゲーになると大胆な攻めをすることが多い。それはお前なりに根拠をもっているからだろ」


根拠か。

そう言えるのかもしれないが、自信が無い。

たしかに、相手はこう考えているだろうという読みの基で動くことがある。けれど、それは相手の囮である事も多い。

それなのに、根拠のある読みと言っていいのだろうか?


「自信無しって顔だな」


「まぁ、そうですね」


黙ったままでは失礼かもしれないので、せめて正直な心境を答える。


「今までの実績だけで考えればその通りだ。だがな、お前はけっこう鋭い方だ。それだけは俺が保障してやる」


突然褒めてもらえて、目を見開いてしまった。

あからさまに顔に出してしまったので、やばいっと思ったが、お兄さんは特に反応してこなかった。

いつの間にか、格ゲーをしている時のやさしい雰囲気になっていた。


「お前と話すのが楽なのがその証拠だ。お前って、先回りした会話をしてくることがあるんだけど、自分で気が付いているか?」


先回りをした会話…。

あまり自覚が無かった。

「はい」と「いいえ」だけじゃ変だと思って、せめて質問をするように心がけではいたが、まさかそれのことなのだろうか?


「相手の様子や言葉から何を言おうとしているのかを即座に考えて言葉を返す。どっちが先かは知らないが、それが格ゲーにも表れている。はずすリスクはあるが、信じてやる価値はあると思うぜ」


お兄さんはそう締めくくって、僕を勇気づけてくれる。


「そうそう、現内くんって一点読みから逆襲してくることが多いから、気を抜けないんだよね」


「なるほどな、なんか話しやすいなーって思っていたけど、そういうことだったのか」


他の人達も、僕を励ましてくれる。


「ありがとう…ございます」


仲間が背中を押してくれる。

こんな頼もしいものがあったとは、知らなかった。

僕は、僕のままのプレイをすればいい。そう言ってもらえているのが、こんなに嬉しいなんて…。


「最終組の方、ステージ前で待機をお願いしまーす!」


スタッフから移動を促される。


「よっしゃ、いってこい!」


「はい!」


僕はステージへと向かった。

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