第22話:これが僕の02
ぞろぞろとスタッフに連れられて歩いていくと、大きな扉の前で止まった。
会場手前のせいか、通路はさらにごちゃごちゃとしていて薄暗い。
「ここで少々お待ちください。合図がありましたらステージに上がっていただきます。ステージで別のスタッフが案内しますので、そこでチーム毎に一列に並んでください」
スタッフが振り返り、ここから先の段取りが説明された。
前から順番に進んでいき、チームで整列する。
小学校、中学校、高校とやってきたことがここでも行われている。
やってきたことなのだが、なぜかやり方がわからなくなる。
緊張しているせいなのか、今まで真面目に取り組んでこなかったからなのか。
まさか、学校外でも必要になるとは思ってもみなかった。
人前で恥をかきたくないと気持ちが膨れ上がってくる。
「現内くん」
「は、はい」
「こういうのはもっと気楽に構えていてもいいんだよ」
東錠さんが僕をやさしくフォローしてくれる。
「そんなものでしょうか?」
「この大会のメインはなんだい?」
「メイン?えーと、対戦ですか?」
「そう。だから、それ以外は肩の力を抜いて。それが行事をうまくこなすコツ」
密かに大人の見本として見ている東錠さんのアドバイスにしては、意外な内容だった。
てっきり僕は、すべてにおいて真面目に取り組んでいると思っていた。
でも、案外そんなものなのかな?とも僕は思った。
要領良くと言うと少し印象がよくないが、心の中でそういう折り合いを付けておくのは大事なのだろう。
そう思うと、少し気が楽になった。
良く考えれば、僕はチームの一番後ろ、ただ皆についていけばいいんだ。
扉の向こうでは司会者が会場を盛り上げているのが聞こえる。
そして、「選手入場です!」と大きな声が聞こえ、音楽が流れ始めた。
「それでは、ゆっくり入場をお願いします!」
音楽に負けない大きな声と共に、扉が開かれる。
薄暗かった場所がスポットライトに照らされ、目の前が真っ白になった。
爆音の音楽にも耳を支配される。
こ…怖い。やっぱり怖い。
僕は、本当にあの先へ行くのか?
一人ぼっちで格ゲーに引きこもっていた僕が?
なんて恐れをなしても、前にいた東錠さんが歩き始めると、置いてかれる方が怖いのでついて歩く。
扉を抜け、ステージを数歩行き、スポットライトからはずれると、今まで見たこともないすごい光景が広がっていた。
数えきれない程の人が、僕らを見上げている。
奥の方へ目をやっても人が途切れることなく詰まっている。
上の方を見てみると、いくつかのスポットライトがステージを照らしているのが見えた。
反対にステージ側を見てみると、映画館のような大きなスクリーンがあり、その横に司会者席があって、アシスタントと共に僕らを迎えてくれている。
すごい。
なんて煌びやかな世界なんだ。
これが…表舞台…。
恐れとか緊張とか、そんなものはむしろ吹き飛ぶような衝撃だった。
うるさかった音楽は気にならなくなっていて、頭が少しボーとする。
ここへ観光にでも来たような気分だった。ただただ、目の前のすべてが新鮮だった。
気が付くと足は止まっていて、他のチームの入場を待っている状態だった。
僕は観客席を眺め続ける。
ここの何処かに、関泉さん達が来てくれているのだろうか?
探してみたが、顔がわかるのはせいぜい五列目くらいまで。あとはさっぱり。
「すべてのチームが出そろいましたー!」
司会者が進行を再開して、大会の流れやルールを楽しく説明している。
僕は話を聞きながら、周りの様子を伺ってみた。
皆前を向いて、どうどうと立っている。
僕もつられて背筋を伸ばした。
「では続きまして、個人戦のトーナメントを発表します!」
後ろにあったスクリーンに表示されたので、選手全員が振り返った。
大きなトーナメント表が映し出されている。
ここに、僕の名前が…。
こんなところまで来ておいて、本当に僕の名前があるのか不安になる。
………。
ない、ないぞ?
一回戦から順々に見ていって、なかなか出てこない。
「あ、最後じゃん」
南宝さんが少し身を乗り出して、僕に聞こえるように言ってくれた。
一回戦の最後を見ると、たしかに"現内巴伊都"と書かれていた。
よかったぁ。
僕は混乱しているのだろう。自分の名前を見て安心した。
えーと、じゃあ対戦相手は…?
僕の隣の名前を確認する。
天抜奏
チーム:ブルーオパール モノレ□○駅前店
「あっ…」
これはなにかの偶然だろうか?
モノレは、僕の家から一番近いゲーセンで、
ブルーオパールは、栄樹さんと一緒によく観戦していたチーム。
"どうしたら、あの人達と対戦できるかな?"
あの一言が、ここへきてついに繋がった。




