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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
115/133

第21話:ライジング前日05

あの告白からもう数日が経っている。

さすがの僕もこの状況に慣れつつあった。

と言いたいのだが、実際はそんなことない。


関泉さんはあれから、今みたいにストレートに思いを伝えてくるようになった。

それが毎回僕をどぎまぎさせる。

素直にときめく反面、どう反応したらいいのかわからなくなる。

誠意を込めて返すと重くなりすぎるし、日常会話として流すと軽くなりすぎる。


ラブコメ漫画とかだとヒロインに迫られても、困り顔で笑ってごまかして終わらせている。

複数の女子に囲まれて、どうしたものかと悩みつつも、楽しそうにしている。

こんな風にモテたいと思ったこともある。


でも現実は、目の前の女子一人の気持ちを踏みにじらないようにするにするにはどうしたらいいのか?それがいつも頭の片隅にある。

僕が箕内さんに言ったような事は、僕自身はできない。

かと言って、じゃあどうするのか?付き合うのか?となると、そっちにも舵をきれない。勇気が無い。


モテる男はつらいと聞くが、こういうことなのだろうか?


お互い照れてしまい微妙な雰囲気になったが、いいタイミングで料理が運ばれてきた。

それを受けとり、テーブルに三人分の料理が並ぶ。


「それじゃ、いただきます」


僕らを待たずに、花尾間さんは食べ始めた。

パンケーキの件といい、花尾間さんってもしかして食いしん坊キャラだったりする?


まぁ、場が一旦リセットされたので、ちょっぴり助かった思いだった。


「そういえば、団体戦はトップ3でって言っていたけど」


一口食べた後、関泉さんがライジングの話を再開した。


「それに現内くんが入っていないってことは、やっぱり現内くんより強いの?」


僕より強いか?

僕なんかよりもずっと真剣に格ゲーをやっていた人達だ。僕にとってはそれが当たり前のことを関泉さんは聞いてきた。


「もちろん。たまに勝てることがあるくらいだよ」


「へぇ、なんか想像できないな」


と花尾間さんが言う。


「うん、私達にとっては現内くんがすでに異次元なのに、まだ上があるなんて」


そう関泉さんが続く。


「…そうだね」


なんとなく、他人事のように僕は同意した。

上には上がいる。それはずっとわかっていた事だし、関泉さん達も知っている事。

でもそれって、自分とは関係無いことだったりする。

日本王者よりも地元のランカーに憧れたりする。


「チームに入って自信無くしたりしなかったの?」


「どうかな?強いのはわかっていたような、でもちょっとはイケると思っていたような」


「現内くんにチームの事を聞くと、だいたいみんな強いって言っていたもんね」


「そうだったっけ?まぁ、実際そうだし」


「その中からライジングに出場するってことは、チームに入ってからさらに強くなったってこと?」


「…っ」


関泉さんにそう聞かれて、僕は少し胸が高鳴った。

僕は…強くなれているのか。


僕はこの世界で猛威を振るった。

それは僕が強いからではなく、周りがそれ程でもなかったからだ。


栄樹さんのお兄さんと初めて対戦して負けた。

チームに入って負けることが圧倒的に増えた。

残念に思いつつも、納得できる現実だった。


でも僕は、明日ライジングに出場する。


何をするわけでもなく学校へ行き、寝るまで一人格ゲーをしていただけの僕が、いつの間にかアマとプロの境界線まで来ていた。

もちろん、元の世界ではもっと高いレベルを求められてくる。

それでも、僕は勝負の世界に足を踏み入れる権利を手に入れるまでに至った。


僕は今、自分の成長をたしかに実感した。


「…どうしたの?」


うっかり自分の世界に浸ってしまった僕に、関泉さんが声をかける。


「ご、ごめん」


「なんか、ちょっと笑っていたように見えたけど?」


「えっ!?そ、そうだった?」


考えていたことをそのまま顔に出していたのか。女子を前に何をやっているんだと恥ずかしくなる。


「ふふ、楽しそうだね現内くん」


「からかわないでくれよー」


「違うよ。やっぱり男子だなーと思ってさ」


にこっと笑って、花尾間さんはそのままスプーンに取ったごはんを口へ運んだ。


花尾間さんは何気なく言ったようだが、女子に"君は男子だね"という事を言われると照れる。

他意は無くても、花尾間さんが僕を異性と認識しているという事を意識してしまう。


「じー…」


関泉さんは僕を一瞬睨んだ後、声に出しながら花尾間さんをじっとりと凝視する。


「どうしたの?一口ほしい?」


花尾間さんは関泉さんの思いがわからず、口に運ぼうとしていたスプーンを関泉さんに向けた。


「………」


パクッ。


無言の訴えが伝わらず、諦めたように関泉さんはスプーンを口にした。

もぐもぐとしながら、再度僕に目を向ける。


えと、それって…嫉妬ってことなのでしょうか?


「あ、現内くんも食べる?」


「いや、僕はいいです」


つくづく思う。最初の印象なんて、その人のほんの一面に過ぎないのだということを。

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