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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
114/133

第21話:ライジング前日04

ファミレスに着くと何組か待っていたが、覚悟していたよりもあっさりテーブルへ案内された。

店内は家族が半分、学生が半分といったところか、騒がしいとまではいかないが色々な話声が飛び交っている。

理想は静かな喫茶店だったなと、僕はようやくわかった。

しかし、この駅周辺だとゲーセンしか知らない。これがどうしたって精一杯だ。


あっ…。

そうか、ゲームなんか眺めてないで歩いて探すなり、スマホで検索するなりできたじゃないか。

そういうところだぞ…自分。


「なんかこのファミレスひさしぶりだね涼奈」


「そうね。近くにあったお店が閉店しちゃう前に行ったきりかしら」


「どうする?あのパンケーキ食べる?」


「う、うーん…」


どうやらこのファミレスは二人の住んでいる街にもあったようで、盛り上がっている。

二人が楽しんでいるようなので、僕は反省するのをやめた。


「ここのパンケーキっておいしいの?」


「うん、おいしいよ」

「うん、おいしいんだけど」


肯定的な返事が返ってきたが、花尾間さんと関泉さんで微妙に反応が異なる。


「だけど?」


返事に続きがありそうな関泉さんに聞いてみる。


「子供向けなのよ」


そう言って、関泉さんはメニューを開いて見せてくれた。

大きいパンケーキにクマの顔が描かれていて、小さいパンケーキ2つで耳が表現されている。

目がチョコレートで、口のあたりはアイスのようだった。


「蓮子はこれが大好物なのよ」


「かわいいでしょ?」


関泉さんの説明の後に、花尾間さんから見た目について感想を求められてしまった。

かわいいと言われれば、かわいい。

子供だましとはいえ、案外侮れないクオリティがある…気がする。

同意してもいいのだが、そうすると注文する流れになるのか?


それはちょっと恥ずかしい。

パンケーキを売りにしているお店ならともかく、ファミレスのお子様メニューとなると抵抗があった。


「たしかに…そうだね」


悩んだが否定するわけにもいかないので、そう答える。


「デザートで食べれたらにしなさい」


「はーい」


まるで母娘のような感じだった。

学校にいる時よりも仲がいいように思える。

もしかしたら、今の二人がもっとも自然体なのかもしれない。


そうだとしたら、僕はこの二人に信頼されていることになるんじゃないだろうか。

うれしくてキュンとする思いがした。


それから各々食べたいモノとドリンクバーを注文し、ジュースを飲みながら料理が来るのを待った。


「現内くん、明日はいよいよライジングだね」


「そうだね」


「緊張している?」


「うん。でも、こういうのって初めてだから、まだ実感が持ててないってもあるかな」


「団体と個人のどっちで出るの?」


「個人」


「へー、どうやって決まるのそういうのって?」


「それが、僕の場合は特殊かもしれない」


「特殊?」


「理由は二つあって、一つは団体で結果を出してチームをアピールしたいから、トップ3で出たいんだってさ」


「もう一つは?」


「…僕が団体に向いてなさそうなんだって」


「…どういうこと?」


なんとなくしょげて言うと、関泉さんが少し心配そうに聞いてくれた。


「お前に余計な事を考える余裕は無い、自分の対戦に集中しろ。って言われた」


ちょっと栄樹さんのお兄さんの真似をする。


「あー、なるほどかも」


花尾間さんは思うところがあるようで、遠慮がちに笑いながら言った。


「現内くんって、人の対戦でもけっこう集中して観ているよね」


「たしかに」


関泉さんもうんうんと頷く。


「ようするに、僕は観戦に集中しちゃって、自分のことが手につかなくなると?」


「うん、そういうことじゃない?」


関泉さんにチクリと言われる。

でも、いつの間にか普段通りに話しができていて僕はうれしかった。


「そうかなー?」


「それに、現内くんって先鋒、中堅、大将とどこを任せてもプレッシャーを感じていそう」


「うっ…」


自分でも容易に想像できるのがつらい。


先鋒の勝利はチームに勢いを生む。逆に敗北は中堅にプレッシャーを与えてしまう。

中堅の勝利はそのままチームの勝利になるかもしれない。先鋒の敗北を挽回する役目もある。負けられない。

大将はいわばチームの顔。たとえチームの敗北が決まってしまったとしても、チームのために勝利する義務がある。


「その通りです…」


関泉さんの言う通り、僕の器で足りるポジションなんてなかった。


「あっ…」


あからさまにしょんぼりする僕に、さすがの関泉さんもちょっと申し訳なさそうにした。


「もー、落ち込ませてどうするの?」


花尾間さんが子供を言い聞かせるように怒る。


「…だって」


関泉さんは怒る親を誤魔化すように言う。


「………」


花尾間さんは、そのまま黙って目で何かを訴えていた。

関泉さんはそれを理解しているようであったが、どうも戸惑っているように見える。

が、少し姿勢を正して僕に向き直るとこう言ってくれた。


「で…でも、現内くん…なら、その…」


一生懸命言葉を探す関泉さん。


「…落ち着いてプレイできれば、勝てると思うよ。ライジングでも」


「あ…ありがとう」


言わされている感があったが、むしろその無理をしているところがかわいかった。

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