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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
109/133

第20話:約束は力となる05

話は大いに盛り上がったが、答えが出ることはなかった。

結局、何かに固執する方がよくないのではないか?という傾向でさえある。

しかし、じゃあプロは何もしていないのかとなると、きっとそんなことはない。


メンタルについて勉強したことがない高校生がいくら話し合っても、それは個人的な経験か憶測にしかならなかった。

けれど、大会前に緊張したり不安に思う気持ちはみんな同じであることを知れたのは、僕にとって大きい。


緊張でガチガチになり、不安で手が震える思いをするは、僕だけの弱さではない。

みんな同じところから始まっている。自分だけじゃない。

それは小さいけれど、希望になった。

不必要に相手を大きくしない。経験値の差はあれど、相手は"同じ人間"だ。

しかも、老若男女が同じ土俵で戦えるのがゲームだ。かならず、勝ち筋はある。…かもしれない。


「河船はそこら辺どう思う?」


討論が落ちついてきて、僕と同様に聞いているだけだった河船さんに、亀里の部長が聞いた。


「どう…と聞かれても」


河船さんは自分の話をしたがっていないようだった。

無口で気の強そうなイメージを持っていたが、よく見ると居ずらそうに小さくなっている。

もしかして、格ゲーになると性格が変わるタイプなのかな?


「メンタルの事以外でも、大会前にやっていることとかないの?」


「やっていること…」


「そーそー、瞑想するとかさ」


返答に困っている河船さんを、箕内さんが適当でいいんだよと和ませる。


「そうですねー…」


顎に指を置いて、河船さんは言葉を選ぶ。


「あるプロゲーマーが書いた本で、一つ真似していることがあります」


「おっ、なになに」


「自分が調子のよかった対戦、納得のいった対戦を寝る前に数戦思い返しています。大会前とか関係なく毎日です」


「なんか、前向きになれそうな話だね」


「はい、たぶんそういうことだと思います。勝てるイメージを持ちやすくするためにやっているそうです」


「あー、それなら俺もやってるよ」


何もやっていないと言っていた屋良さんがそう言った。


「アレで決めたら盛り上がるなーとか、コウなったら勝てるなーとか、そういうことだよね?」


「…えっと」


屋良さんの呑気な同意に、河船さんはうまく対応できず困っている。


「あれ?違った?俺のはただの妄想?」


「絶対そうだ」


渡辺さんのツッコミで締め、ちょっとした笑いになる。


「他にはなにかないの?」


ちゃんと勉強した上で実践していた河船さんの話はだいぶ興味深かったので、箕内さんがさらに聞いてみる。

それに一瞬答えようとするが、ふっと動きが止まった。

僕の方を見て、それから虎森の面々を見渡す。


「すみませんが、これ以上は答えません」


「えー、なんでー?」


残念そうにする箕内さんに、河船さんは申し訳なさそうにするが、こう答えた。


「虎森のみなさんとは切磋琢磨する仲だと思っています。でも、大会では対戦相手です。負けられない相手です。これ以上…その…なんていうか…」


なるべく角が立たないように言おうとしているが、うまく言葉が出てこないようだった。


「敵に塩を送れないって感じか」


屋良さんがそう言ってニヒッと笑った。


「まぁたしかにそうだな。河船さんが言うなら単にいじわるで言っているわけじゃなさそうだし」


「まったく、硬いなお前は」


納得する屋良さんと、ちょっと呆れる亀里の部長。


「しかたないですよ。交流戦以降、ずっと現内くんへのリベンジに燃えていますから」


亀里の部員が笑いながら言った。


僕はそれを聞いて、ズキリと胸が痛んだ気がした。

河船さんに目を向けると、あちらも僕の方を向いた。


二人の様子を見て、箕内さんが「あっ」と声を出す。


「あー…」


うっかり反応してしまったという感じで、箕内さんは困り顔になる。

それを河船さんが不思議そうに見る。


「どうしたんですか?」


「…いや、えとね…その」


こうなってしまってはもう言うしかないのだが、河船さんの気持ちを考えてか、箕内さんは言葉に詰まる。


「現内くんは、夏の大会に出ないよ」


そんな箕内さんを助けるためか、屋良さんが変わらぬトーンでそう告げた。


「………えっ?」


僕も出場すると疑わなかったのだろう。

河船さんは驚いていた。

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