第20話:約束は力となる04
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「8人です。もう半分はあと10分くらいで来ます」
亀里高校の人達も同じ4人であるという連絡がきていて、僕らは先に入って席と取ることになった。
四人掛けのテーブルが二つ繋がり、僕らは奥の方に一列に並ぶ。
左から屋良さん、箕内さん、ぼ…くじゃなくて渡辺さん、そして僕。
「なんかちょっとワクワクする。部活動抜きで会うなんて実は初めてなんじゃない?」
「あー、言われてみればそうかもな。一緒に飯食った事があっても部活後だったし」
三年生達はこれから来る亀里についての話を始めた。
僕は話を聞きつつ、店員さんが持って来てくれた水を飲む。
はぁ…、なんとか耐え抜いた。
結局、ここまでの道のりで数回、僕の恋愛事情について聞かれた。
これがまたうまいというか、せこいというか、僕が言葉を濁すと一旦引いて、別の話題に乗じてさりげなく聞いてくる。
しかも、"僕の話を聞かせてくれ"っていうスタンスで持ち上げてくるから困る。
聞かれて悪い気がしないし、うっかり話しそうになるし、断るのがちょっぴり申し訳なくなる。
でも、やっぱり迂闊にはしゃべれない。
真剣に話をしていた時の顔を思い出すと、僕の気分一つで扱っていいモノではないと知る。
しばらく三年生の思い出話に耳を傾けていると、亀里の人達がやって来た。
こちらと同様、部活終わりに直接来ているので、制服を着て鞄を持っている。
「待たせた」
「いやいや、よく来てくれました」
来てくれたのは、亀里の部長と、河船さん、それと見たことある三年生と…、見覚えのない人。
「やっほー志弥ちゃん、ゴーレムスレイヤーのオフ会ぶりだね」
手を振る箕内さんに、河船さんがちょっとだけ頭を下げる。
そして、僕に目を向けた。
そんなオフ会もしていたんだーと思ったことを察したのか、河船さんがわずかに笑った気がする。
その笑みは、まさか「自分は誘われたが?」という優越感か?
全員が席につき、ドリンクバーと軽食を注文する。
各々の飲み物と食べ物が揃ったところで、ぼちぼちと本題に入っていった。
「そもそも、こうなったきっかけから聞いてもいいか?」
亀里の部長が屋良さんに聞く。
「ん?あー…、そんな大した理由はないよ。最後の大会だからさすがに緊張するなって話をしていて、俺が余所の話も聞いてみたいと思っただけ」
それっぽい理由を話して、ライジングの事は伏せてくれた。
「…なるほど」
亀里の部長は解せない様子だが、それ以上は聞かなかった。
「なんで、お前の話を聞かせてくれよ」
「いやいや、提案してきたそっちから話すのが筋じゃないか?」
「まぁその通りかもしれないけど、俺は特に何もしていないから話せることがない…みたいな」
「…おい」
「だから、こういう場を設けたっていうのもあるかも」
「…はぁ、じゃあせめて虎森の誰かから始めてくれ」
怒り、というよりは「またか」という諦めが見て取れる。
それでもちゃんと来てくれるのは、なんだかんだ有意義なモノになるからなんだろうなと僕は思った。
ただ、部活以外で会うのが初めてという話であの反応、同時に僕は過去に何があったのか気になった。
「じゃあ、渡辺頼むわ」
「はっ?俺から?」
「渡辺って何かやっていることあったの?」
箕内さんの興味ありの視線に、渡辺さんはたじろぐ。
少しだけ考え、話始めた。
「俺は、早く起きて基本練習をしている」
手を洗わない件じゃない。もしかして即興だろうか?
「超必コマンド、リバサ、基本コンボ。ちゃんと手が動くっていうのを確認すると、落ち着く」
「それ以外は?」
亀里の一人が聞いた。
「あと?んー、願掛けで特殊状況の大ダメージコンボを一回だけ」
「念入りにはやらないんだね」
「うぐっ、もしダメだったら家から出れなくなるじゃん」
「渡辺って、あれで結構繊細だからな」
「うるせぇ」
「普段通りを意識するという点は、俺も同じだな。というか、全員そうなんじゃないか?」
亀里の部長が言う。
そこから、普段通りとは?という話になった。
そもそも、普段通り=MAXという定義が合っているのか?
何気なくプレイしている時と、集中している時だと何が違うのか?
「よく言われるのが、練習以上のことはそうそう出ないってことだよね」
「まぁ、急に実力以上のことをやろうとしてできるわけがないけど」
「でもさ、それって余計なことを考えるなってだけの話じゃないの?」
「残された勝ち筋ってなったら、やっちゃうんじゃない」
「たしかに、普段ならやる頻度が高いかも」
「大会だと臆して出来ないみたいな?」
「普段やっていることを、大会でもやるのがベストってこと?」
「それがその人の最大値っていうなら、そうじゃないかな」
「じゃあやっぱり普段通り=MAX?」
「そうなるの?今までの感じだとそうだけ、しっくりこないなー」
あいかわらず僕は話の流れに入っていけずに置いて行かれているが、白熱する討論が面白かった。




