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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
103/133

第19話:熱帯夜05

熱戦続いた夜も終わりを迎えようとしている。

僕の最後の一戦で、ターコイズのレギュラーメンバーが決まった。


栄樹さんのお兄さん・東錠さん・南宝さん・北森さん、そして僕。


個人戦と団体戦に誰が出るかは、後日レギュラーと数名で話し合うことになった。


時間ぴったりにチーム活動は終わり、みんなはそれぞれの帰路についた。

別れ際、僕に祝福の言葉をくれる。

入ったばかりでレギュラーになった。自分で言うのもなんだが、かなり生意気な存在なはず。

みんなプロを目指しているのならなおさら。

本当は思う所があるのかもしれないけれど、それを表に出さないところが、大人っぽくてかっこいい。


「まさか、レギュラーになるとはな」


みんなと話していて、なんとなく帰るのが遅くなった僕に、栄樹兄妹がやってきた。


「はい、自分でも驚いています」


「ほぉ」


「勝率は悪くなかったんですけど、栄樹さんにはもちろん、他のベテランの方々にもほとんど勝てていなかったので」


「勝てる奴には勝てるけど負ける奴には負ける者、誰にでも勝てるけど誰にでも負ける者、今回軍配が上がったのが前者、お前ってだけのことだ」


「ありがとございます。でも、つい考えてしまいます。それなら僕よりも西蔵さんの方が可能性があるんじゃないかって」


頭を掻きながら冗談っぽく言ったものの、ほとんど本心だったと思う。


「まぁ言いたいことはわかるが、ターコイズが出る大会はこのライジングだけじゃない。これからも色んな大会に出て、実績を積んでいく。だから、お前の言っている可能性なんて目先のちっぽけなモノだ。そんなものにすがっているようじゃどのみち先は無い」


目が覚めるような思いだった。

栄樹さん達はもっと先を見ている。ライジングの出場はスタートラインに立っただけと思いながらも、浮かれていたのは僕だけだったようだ。


「そんなこと言って、出場しても勝てなきゃ意味ないでしょ」


僕に対して偉そうにしているお兄さんに、栄樹さんが割って入った。


「もちろんその通りだ。俺は勝つ、だからもう一人勝つやつがいれば、団体戦は優勝だ」


その満ち溢れた自信に、僕と栄樹さんは呆気にとられる。

やれやれと小さなため息をついた栄樹さんが、何かに気がついて顔を上げる。


「あっ、そういうこと?」


「なんだよ?」


「お兄ちゃんは、現内さんに"負ける奴"を無くす事を期待している?」


「はぁ!?なんだそれ」


「西蔵さんのプレイって見ていて楽しいから魅プレイで注目されそうだけど、正直実績で注目されるタイプじゃないよね。現内さんもそのタイプなんだろうけど、お兄ちゃん、実績面にも伸びしろを感じているんじゃない」


「…俺が?…こいつに?」


お兄さんは、何か苦い物を飲んだような顔をした。

そのままの顔で、僕の方に目を向ける。


「………」


「へっ、どちらも中途半端の間違いだろ?」


ドンッ!


栄樹さんがお兄さんを小突いた。


「いったー…」


「もー、実力は認めているくせになんでそうやってつっかかるの?」


こうやっていつもの兄妹の言い争いが始まる。

そういえば、最終戦を無事戦えたのはこの二人のおかげだったな。

二人は僕のためにやったわけではないけれど、あれは本当に助かった。

一人じゃ、絶対に持ち直せなかった。

チーム…というか仲間ってこういうものなのかなと僕は思った。


しばらくして、言い争っていた二人がトーンダウンしていく。


「あぁ、もうなんでもいいや。帰るぞ」


「あっ、またそうやって勝手に決める」


栄樹さんを無視するようにお兄さんは歩き始めた。


「あー、しょうがないなぁ。じゃあ現内さん、また明日。ライジングまでしっかり腕を磨いてくださいね」


栄樹さんはお兄さんの後を追った。

応援しつつも日々の鍛錬に発破をかけるあたりが、小さい頃からチームという環境にいた栄樹さんらしい。


栄樹兄妹は離れてコーヒーを飲みながらスマホをいじっていた鈴木さんと合流すると、階段を下りて見えなくなった。


僕も帰らないと。

初めて最後の一人になったかもしれない。


ふと、ランブルギアの筐体を見る。

無音のままデモムービーが流れている。

時間も遅いせいで、ゲーセンの中なのに静かだった。


なんだか少し寂しくなる。あの時の熱が嘘のように冷めている。

今日の対戦は終わった。


お金がなくて眺めているだけの子供の気分になってくる。


くはっ。


あくびが出てきた。

気分が落ち着いてきて、どっと疲れも感じる。

対戦数はいつもより少ないのに、まるで緊張しっぱなしだった初日の時のようだ。


僕も家へと帰り始める。


僕が大会に出る。

実はその実感がまだないのだが、出場をかけた対戦に勝てた喜びは、今も胸の中にある。

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