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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
102/133

第19話:熱帯夜04

ついに最終ラウンド。

泣いても笑ってもこれで決まる。


ここへきて、シハラとキワージュの対戦はオーソドックスな展開となった。


逃げるキワージュを追うシハラ。

キワージュが後ろに下がって弾幕をはると、シハラが体力を削られながら進んでくる。

シハラの攻撃が届きそうになると、スキをついてキワージュが逃げる。

シハラがうまく前に立ちはだかっても、キワージュは丁寧に状況に合わせた対処を施す。


キワージュのゲージが貯まれば、あの遅い弾を盾に攻めてくる。

それをシハラがうまく受け流す。


今までのイレギュラーな立ち回りを両者は見せず、緊張感のある攻防が続く。


こうなったのはひとえに、目の前の一勝がただほしかったから。

悔いの残らないプレイにしたいから。


決して消極的になっているわけではない。

勝負所はかならずやってくる。

どちらに先に来るか?もしくは同時に来るか?それはわからない。

だから、それを逃さないために1フレームだって気を緩めない。


そして、ついにキワージュが動いた。

ゲージを使って強化した遅い弾を出した後、ハイジャンプをして上から攻めてきた。

ガードを崩す機会は失う代わりに、相手にジャンプさせないことで遅い弾をガードさせ、確実に攻め入る戦法である。

通常は、技強化をしてもゲージが残っている状態でやる攻めなのだが、西蔵さんはここを勝負所に選んだようだ。


キワージュは快調に立ち回り、ゲージも効率よく回収して攻撃できているが、思うようにシハラの体力を奪えていない。

シハラなら1コンボでひっくり返せてしまう。

タイムアップまで逃げ切れれば理想的だが、たぶん西蔵さんは"事故らない"よりも"倒し切る"ことを選んだんだ。

自他共に認める変則的スタイルに、タイムアップはそぐわないと判断したのだろう。


逃げ場を失ったシハラは、仕方なくガードで対処する。

遅い弾をガードすると、続けて上からキワージュが攻めて来る。

空中攻撃をガードして、すぐにしゃがみガードへ移す。

投げに来る可能性は高い。しかし、ここでダメージ補正がかからない中攻撃以上をくらってしまう方が危ない。

僕は投げられるのを覚悟でしっかりガードを固める。


しゃがみ弱攻撃、立ち弱攻撃と、投げを匂わせる固めが続く。


僕はガード中に投げ以外のキワージュの選択肢に思考を割いていたが、ふと変な間を感じた。

一瞬思考が停止して、まるで落とし穴にでも落とされたような感覚だった。

ただ、僕の指はしっかりと投げボタンを押していた。


はっと我に返ると、シハラがキワージュを掴んで投げている。

なんと、僕は無意識に投げ返していた。


自分でも信じられないくらいに絶妙なタイミングだった。

内心驚いてはいても、投げに続くコンボはミスらず最後まできめる。


起き攻めから、さらにゲージを使った中段攻撃でガードを崩し、あっと言う間に体力が逆転する。


連続でガードを崩せなかったが、下がるキワージュをゲージを使って追いかけ、攻めを継続する。

多少雑になっても構わない。

このチャンスを逃すな。相手にプレッシャーをかけろ。

ここが、僕の勝負所だ!


ゲージを使い果たした。

持てるテクニックをすべて駆使した。

強引な手段にも出た。


一歩間違っていたら負けていた。

一手でも読まれていたら負けていた。

とてもプロを目指している者達の中にいるプレイヤーのプレイではなかった。


だけど…。


「はぁ…はぁ…」


いつから息をするのを忘れていたのだろう?

キャラが操作できなくなり、キワージュが倒れ、シハラが立っているのを確認すると、肺に溜まっていた空気が一気に吐き出された。


「おめでとう!最後のレギュラーは現内くんで決まりだ!」


鈴木さんが大きな声で高らかに僕の勝利を告げると、惜しみない拍手がゲーセンを包んだ。


僕は…勝った…勝てたんだ。

画面に映し出されているのは、間違いなくシハラの勝利画面だ。


筺体の横から、のっそりと西蔵さんが現れた。

笑顔だったが、その中に寂しさが混じっているのを僕はわかった。


「見事な投げ返しだったよ」


そう言って、西蔵さんは手を差し出した。


「あの投げは、最後までキワージュのシューティングにつき合うつもりだったシハラに、気持ちで負けちゃった証拠かな…」


たははと笑う西蔵さんの手を取って、僕も席を立つ。

すると、西蔵さんは握った僕の手を高く上げる。

それに合わせて拍手が一段と大きなった。


この拍手は、僕に向けられたもの。

この掲げた腕は、僕が勝者である証。


僕はこのチームで、ライジングに出場できることになった。


うれしいとか、ありがたいとか、無いわけではないけれど、気持ちが穏やかだった。


もしかしたら、僕は今初めて感じているのかもしれない。

本当の達成感を。

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