第19話:熱帯夜03
今後の方針が決まらないまま、二本目が始まってしまった。
今度は、定石通りにキワージュは後ろに下がり、シハラの動きを伺いながらシューティングを開始する。
僕はとりあえず前ジャンプをして、地上射撃を避けつつ、少しだけ前へ進む。
シハラが着地すると、キワージュの攻撃硬直も解けている。
もう一度地上射撃か?もしくは対空射撃か?
また動きが読まれているのではないか?という不安をどうしても拭えず、地上射撃に備えてガードする。
それを読んでいたかのように、キワージュが接近してきた。
今度はかなり距離がある。
また接近戦と見せかけて、急停止からの地上射撃の可能性もある。
弱い動きだが、ヘタに動けない。
その予想は合っていて、キワージュはすぐさま地上射撃を打ってきた。
そこから、シハラのガードを確認して、ジャンプキャンセルをして空中射撃へと繋げる。
ダメージは無いが、再び距離が開いて、ゲージもきっちり回収している。
キワージュが後ろに下がっている間に、シハラも前進する。
そして、キワージュが射撃してきそうなタイミングで前ジャンプ。
すると、また地上射撃を避けての前進になった。
キワージュはステージの端、シハラは画面の端といった状況になる。
ここでハイジャンプして、上から攻めるのが安全なのだが、キワージュに逃げるスキを与えてしまう。
序盤とはいえ、ここまでほぼノーダメージ。まだじっくりいっても大丈夫なはず。
さらに前ジャンプ。そこへ地上射撃。
もう三連続になる。
その瞬間、僕はふと思った。これは我慢比べになっていないか?
僕は早くキワージュを捕まえたいが、もし読まれたらすべてが水の泡。
逆に西蔵さんが読み負けると、接近されるだけでなく、画面端コンボを食らってしまう。
一見大胆な行動をしているように見えるが、その実は地味な耐久戦になっているのかもしれない。
おそらく西蔵も同じことを思っている。
このままいけば、シハラは画面端に辿り着けるが、キワージュはダメージを受けずに済むといった結果が待っている。
この我慢比べは、次で攻守が逆転する。
シハラが再度着地して、お互いが自分の読みを信じて次の手にでる。
両者がハイジャンプした。
頂点に達したあたりでシハラの牽制攻撃がキワージュに当たる。
ハイジャンプは想定外だったのだろう。最速で空中ダッシュを入力していたからのヒット。
そしてシハラとキワージュは揃って地上に落ちていく。
少しだけ歓声が上がった。
今までの流れでキワージュが逃げを選択するとは誰も予想していなかったのかもしれない。
僕も、相手が西蔵さんだから我慢比べが続くかもしれないと思った。
けれど、そんな考えよりも今までの経験が僕にハイジャンプを選択させた。
あの状況では、キワージュ側のリスクとリターンが釣り合わない。
そこを踏み倒してこそ西蔵キワージュといったところだが、反射的にその読みで動けるほど、僕は西蔵さんを知らなかった。
お互い弱攻撃が届く距離。
キワージュは画面端を背負い、ゲージはまだ1/4に満たない。
相手はほぼ何もできない状況。
ここでようやくシハラのターンが回ってくる。
僕はここでガード崩しに全振りした攻めを展開する。
ちょっとでも暴れられたら、そこで修了してしまう危うい攻撃。
でも、読み負けたキワージュの精神的ダメージは大きいはず。
いくら西蔵さんといえど、ここは被害を最小限に抑えたい。
のらりくらりとした固めからの投げ。
固めと見せかけた投げ。
投げと見せかけた弱攻撃。
次から次へと攻撃がヒットして、あっという間にキワージュの体力を奪っていく。
さすがにキワージュのゲージが溜まり、ガードキャンセルを使って画面端から脱出する。
逃がすまいと追いかけるが、なんとそこからキワージュがダッシュで攻めてくる。
意表を突かれて攻撃をくらってしまい、ダウンをとられる。
さすがベテラン勢。一筋縄ではいかない。
ここでまたジャンプ攻撃かと思ったが、キワージュを後ろに下がりシューティング体制を取る。
遅い弾は出さなかった。
シハラにはゲージがあるので、高速移動攻撃でカウンターが取れるからである。
適格な射撃でシハラの足が止まってしまう。
もうすでに冷静さを取り戻しているようだった。
ダメージこそ最小限に抑えているが、右へ左へと動き回り、じわじわと体力を減らされていく。
そうこうしている内に、お互いゲージを50%以上抱えた状態になった。
攻めてきそうだ。と僕は思った。
その予感は当たり、キワージュはゲージを使って強化した遅い弾を発射した。
強化するとスキがなくなり、攻めを大幅に強化できる。
僕は後ろにハイジャンプして、その飛び道具をやり過ごそうと動く。
それを見て、キワージュは二発目の強化した遅い弾を出す。
まずい、これはガードせざるおえないか?
いや、この距離は…。
僕は着地寸前でキワージュ目掛けて空中ダッシュした。
そして、二発目の飛び道具を踏むように降下して、空中ガードする。
シハラは動けずに着地する。
そこへキワージュの下段攻撃がとびかかる。
その瞬間、カットインが入ってシハラの無敵超必殺技が刈り取った。
派手なエフェクトと、特殊演出でシハラの勝利が画面いっぱいに映し出される。
ぶっぱなしもいいところ。おそらく二度目は無い。
きっとこのカウンターを西蔵さんは予見していたはず、だが、それを恐れてガードしてしまっては消費したゲージと詰め寄った距離が無駄になってしまう。
攻めるか?守るか?
最後の最後で発生したアグレッシブ同士の激突は、ゲージのあるシハラに軍配が上がった。
僕はなんとか西蔵さんから一本を取った。
次のラウンドで勝者が決まる。




