第19話:熱帯夜02
西蔵さんのキワージュにきっちりダウンまでとられて、起き攻めをくらうシハラ。
幸い、キワージュは大した起き攻めを持っていないので、警戒すべきはせいぜい投げくらいである。
なので、普通ならここで下がって安全圏内に入るのが普通のキワージュなのだが。
シハラの起き上がりにジャンプ攻撃を重ねてきた。
ここはきっちり立ちガードをして、相手の着地と同時にしゃがみガードへ移行。
投げにくることも考えて、遅れ気味に投げ返しのボタンを押しておく。
が、キワージュは普通に連続攻撃をしてきて、ガードのノックバックでみるみる下がっていく。
キワージュの連続攻撃が終わり、シハラが有利な距離になった。
通常ならバックステップしてさらに距離を開けるのがキワージュ。
しかし、今日の西倉キワージュは接近戦に積極的なようだ。
バックステップは無いかもしれない。けれど、刺し合いでシハラに勝てる距離ではない。となれば…。
キワージュはシハラの牽制をジャンプで超えて、再度連続攻撃に持ち込もうとすると読んだ。
優秀な対空攻撃を素早く入力する。
すると、また画面にカウンターの文字が現れる。
それはまたしてもキワージュが勝ち取ったカウンターヒット。
なんとキワージュはあの不利な距離で飛び道具を出していたのだ。
そこから派生技へ繋ぎ、ダメージを取ってダウンを奪う。
二連続で裏をかかれている。いや、読まれている?
こんな大事な対戦で普通では考えられない行動をしてくる。
西蔵さんはいったい何が見えているのか?
僕は混乱してしまい、嫌なイメージが脳を支配し始める。
またしても、ジャンプ攻撃から地上連携に繋げる起き攻め。
これもしっかりガードして、さきほどと同じ距離になる。
どうくる?
今度こそジャンプ?それともさすがにバックステップ?それとも…。
1フレームを競うこのゲームで、この迷いは危険。
最初の予想通りキワージュはジャンプで攻めてきた。
ほぼ棒立ちしていたシハラだったが、キワージュが下降を始めたあたりでようやく対空の二文字が頭を過る。
けれど、何か嫌な予感がして、レバー入力だけしてボタンが押せなかった。
その予感は正しかった。
キワージュは絶妙なタイミングで二段ジャンプをして、真下に向かって飛び道具を放った。
あのまま対空攻撃を出していたら、そのまま押し切られて負けていたかもしれない。
シハラのガードを見て、キワージュが初めて下がった。
これを下から追うか、上へ追うかが重要になってくる。
下から追う場合、相手が攻撃をしにくい代わりに、こちらも相手を追いにくい。
上へ追う場合、こちらの攻撃がヒットもしくはガードさせられれば捕まえられる。しかし、相手も攻撃がしやすくなるので、またダウンを取られる恐れがある。
僕は迷わず上へ追った。
案の定、西蔵さんの想定通りの行動をとってしまい、攻撃をくらって地面に戻される。
そして、シハラが離れた所でダウンしているのをいいことに、例の遅い飛び道具を出してきた。
弾が届く前にシハラが立ち上がる。
少し遅れてキワージュの硬直も解けて、遅い弾を追い越すような勢いでこちらに向かって来る。
僕は相打ち覚悟で牽制攻撃を出した。
結果は予想通り、相打ち。
シハラの体力は半分になっているので少しでもダメージを抑えたいところだが、これ以上キワージュに好き勝手やれるわけにもいかない。
お互いのくらい硬直が解ける。
僕は、西倉さんは対空攻撃を出すと読んで真っ直ぐシハラを前進させる。
しかしキワージュは、シハラの空中ダッシュからの強攻撃が届く距離で、また地上攻撃を出していた。
さっきから読まれているのか、裏目に出ているのかわからない展開が続き、思わず歯を食いしばる。
キワージュはゲージをフルに使い、現状で出せる最大ダメージをシハラにあたえる。
そして、さらにまたあの遅い弾。
今度は相打ちしている余裕が無い。シハラはしかたなく上へ飛ぶが、当然のように走ってきたキワージュの空中投げがきまる。
そこから、起き攻めをガードさせられ、適度なところで当て投げをくらい、僕は一本目をとられてしまった。
き、きびしい…。
西蔵さんのムラっ気は、どうやらいい方に向いている。
仮に僕の方が実力が上だったとしても、あれだけ的確に動かれては為す術が無い。
というか、なんでこの大事な一戦であれだけ自分の読みに忠実になれるんだ?
攻撃力の高いシハラが相手なのだから、一つでもミスしていたら、そのまま負けていたリスクがあったはず。
僕に対するプレイヤー対策が完了している?
いやいや、だとしてもあれはもう対策を超えている。対策とは、相手の武器や行動を封じる事だ。
…封じる。
お互い、良くも悪くも強引な攻めが持ち味になっている。
ならば、より強引な方が勝つ?より強引な方が相手を圧倒できる?
いやいや、そんなわけない。そんなのは初心者同士が好き勝手やって運ゲーにしているようなもの。
では、なぜ西蔵さんはそんな流れに持っていこうとしているのか?
それはたぶん。
読み勝てる自信があった上で、僕から積極性をなくそうとしているからかもしれない。
現に、読み切られて一本目を取られている。だから二本目は慎重にならざる負えない。
じゃあ、どうするか?
西蔵さんの予想を超えるために、さらに積極的に攻めるか?
僕に、それができるのか?
100超えるとは思っていませんでした…。
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